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第137話 結婚は出来ないです

 久しぶりに会ったアレックス様は少し疲れていた。申し訳ないと思ったが、明日から一か月以上王都を離れると聞いたので、無理やり今日時間を取ってもらった。

 7日前に、学園で進路希望を提出するように用紙が配られた。用紙には2年生で卒業・3年生に進学希望の項目があり、進学希望をする場合、専攻の希望を記入する欄もあった。そして提出期限は明日だった。だから私も焦っていた。それでつい、結論から言ってしまったのだ。

「は?」

 アレックス様は短く言葉を発して固まった。私も言ってからしまったと思った。説明もなしに結婚出来ないと言えば、誤解されてしまっても仕方ない。

「あ、あの、結婚したくないわけではないです…時間が欲しいというか、あの…」

 アレックス様の顔がどんどん険しくなっていった。出来ない言い訳を繰り返しても、上手く言葉に出来ず、嘘っぽく聞こえるなと考えていると、いきなりアレックス様に腕を掴まれた。ビックリして顔をあげたら、性急に唇を塞がれた。突然の行動にアレックス様を初めて怖いと感じた。防衛本能というか、パニックになった私は魔王様たち直伝の防衛魔法を発動してしまった。そう、リリーと一緒に特訓したあれだ。

「なっ氷魔法??」

 氷魔法で防御壁を作り、驚いて油断したアレックス様から急いで距離と取った。兎に角離れなければと思って、そのまま走って逃げだした。ドキドキする胸を落ち着かせながら部屋へ逃げ込むと、そのまま氷の防御壁を部屋へ張り巡らせた。寒かったので毛布をかぶり、ずっと耳を塞いで一晩を過ごした。

 朝日が窓から入り、氷の防壁をキラキラ輝かせた。どうやらいつの間にか寝ていたようだ…

「あ、アレックス様は…」

 急いで氷魔法を解除して、一階へ降りると呆れ顔の母が待っていた。

「フィーネ、何があったか知らないけれど、アレックス様ずっとここで、あなたが部屋から出て来るのを待っていたのよ。早朝に出立するからってもう行ってしまったけど、よかったの?」

 アレックス様なら私の氷の防護壁なんてすぐに破壊できただろう。それをせずに待っていてくれた…それなのに、なんて子供っぽいことをしてしまったんだろうとすぐに後悔した。でも、アレックス様はすでに王都を出立してしまった。会えるのは早くて一か月先になるだろう。移動経路は安全を期して極秘事項だろう。手紙すら届ける手段がないのだ。


「チルチルがいない…こんな時になんでいないのよ……」

 エメリン夫人の癒しが終わった後、チルチルは少し出掛けると言い残して姿を消した。ずっと宝石で眠っていた、そして目覚めてからもずっと私と一緒にいてくれた。だからたまには自由に出かけてくれたらいいと思った。出かけて一か月以上音信不通だった。昨日のことだって、チルチルがいてくれたら…

「そっか、チルチルに少し依存しすぎていたのね、私…どうしたらいいのか分からないなんて情けないな…」

 私は進路希望用紙を取り出して、進学希望に印をつけた。専攻希望は薬草科にした。専攻に関しては3年生になるまで変更可能らしいので、今興味のある薬草科にしておいた。


「おはよう、フィーネ。今日進路提出よね。アレックス様とちゃんと話は出来た?」

 門を入ったところで、リリーにばったり会った。今年も同じクラスになったリリーには、進路のことでいろいろ相談していた。正直に気持ちを話せば納得してくれると背中を押してくれたのに、昨日の残念な結果を報告するのが辛い。仕方なく昨日あったことを手短に説明するとリリーはため息交じりにこう言った。

「それは、なんていうか…最悪ね…」


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