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第135話 それぞれの道へ

 一か月後、エメリン夫人は家族と王妃クリスティ様に看取られて、静かに天に昇った。

 その後、ブレス侯爵家は領地の半分を王家に没収され伯爵へ降格処分になった。当主であったアレン・ブレスは10年間辺境にある鉱山で強制労働を命じられ、当主の座は、息子であるオスカー・ブレスが引き継いだ。娘のミネルバは厳格な神殿で5年間籠り、奉仕活動をすることを命じられた。

 妻のエメリン夫人は病気で亡くなったと報じられた。王妃は姉を亡くし、心労から1か月ほど寝込んだ。心配した陛下から私に直接依頼があり、癒しと話し相手になるため、学園が終わるとほぼ毎日王宮に通っていた。


「オスカー伯爵」

 王宮をアレックス様と歩いていると、前方にオスカー様を見つけた。

「アレックス団長、フィーネ様お久しぶりです。今日も王妃様の所ですか?」

 ブレス侯爵家の没落は一時期の社交界を賑わせたが、最近は落ち着いてきたように思う。新しくブレス伯爵となったオスカー様は、王立図書館から、王家の図書係に任命され、そちらで勤め出したそうだ。

「はい、お加減も良くなってきたので、今日はお話をするために来たような感じですが…」

「そうですか、母が亡くなってからの王妃様は本当に見ていて辛かったので、お元気になられてよかったです。では、私はこちらに用事がありますので」

「はい、それではまた」

 挨拶をしてオスカー様の背中を見送った。あの後、オスカー様の希望を聞くと言ったアレックス様に、オスカー様は働きながら二人を待ちたいと言った。没落しようが、二人の帰ってくる所を守るのが家族だと思うので、そうさせて欲しいと…5年後にミネルバ様、10年後に父親のアレン様が戻ってくる予定だ。

「次は、何事もなく平穏に過ごせるといいですね」

 ミネルバ様は、普通の人間になったそうだ。元々あった魔力も無くなり、魔女でもなくなった。エメリン夫人にとって、呪縛だった魔女という宿命を娘に残すことなく、自分の命と引き換えに自由を残していった。

「そうだな、大変なことだと思うが、頑張ってもらうしかないな」

 アレックス様にとっても、大きな出来事となった事件であった。

「では、私は王妃様のところに行きます」

「ああ、気をつけて。帰りに騎士団本部に来てくれ。送るから」

「はい…」

 学園が始まって、私は2年生になった。一か月たったが、3年生に進学したいとまだアレックス様と話しあえていなかった。いろいろあって忙しかったと言えばそうだが、ようは言い出す勇気がないのだ。


「はあー」

「あら、フィーネはまたため息ね。私と話すのは退屈かしら?」

「あ、いえ、申し訳ございません、王妃様。少し考え事をしていました」

「まあ、恋の悩みかしら?私に言ってくれていいわよ。息子3人だとそういう話題が無くてね、つまらないのよ。さあ、遠慮なく言って」

 母親より年上の王妃様だが、40歳を過ぎているとは思えないほど美しく、少女の様な無邪気さも可愛らしく思える。姉であるエメリン夫人を亡くし、失意のあまり体調を崩されていたが、最近やっと笑顔が見られるようになった。最近は癒すより、話し相手となっていた。

「いえ、そんな恋の類ではないです。進路を迷っているというか…結婚をまだしたくなくて…」


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