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第134話 エメリン夫人の願い

「オスカー殿、あなたには辛いことだと思いますが、私は全ての真実が知りたい。昔、大切だった従妹を失いました。エメリン夫人がそれをしたというのなら、罪は償ってほしい。でもこのような形は望んではいなかった…とても残念です」

「母は何をしたのですか…?」

 アレックス様は、エメリン夫人がこれまでにしてきたことを詳細に説明した。フィオリーナ様が殺された時の術者がエメリン夫人だと聞いた時は、私自身衝撃を受けた。アレックス様は私を気遣うように、背中をさすってくれていた。きっと一番衝撃を受けたのはアレックス様なのに…

 オスカー様はじっと黙って聞いていたが、途中で床に崩れ落ちてしまった。顔色は青を通り過ぎて真っ白だった。

「大丈夫ですか?」

 あまりの顔色に心配になって声をかけた。

「はい…大丈夫です。真実を聞けて良かったです。それでも…実の母親を殺されたと聞いた後でも、やはり僕には、ここにいる母が唯一の母親なのだと思います…」

「そうですか、エメリン夫人はいい母親だったのですね」

 アレックス様は、気遣うようにオスカー様を見た。

「そうですね、血が繋がっていないと、小さい頃に僕の存在を良く思わない使用人に告げられた時も、決して母の愛情を疑っていませんでした。それほどに愛情深く育ててくれました。それは、ミランダが生まれてからも変わりませんでした。僕が父の後を継ぎたくないと王立図書館の司書になった時も、何も言わず応援してくれたのは母だけでした。ですから僕は全てを受け止めなければなりません」

 オスカー様は、決意を込めた瞳でアレックス様を見つめた。少し頼りなく見えたオスカー様は、今は頼もしく見えた。

「わかりました。あなたには包み隠さず全て教えると誓いましょう。今後、ブレス侯爵家は重い罪を背負うことになります。あなたがどうするかはお任せします。全てが明らかになった時、どうするか尋ねましょう」

「お心遣いありがとうございます」

 オスカー様は、深々と頭を下げた。


 その後、ミネルバ様を診察した医師から面会の許可が出たため、オスカー様も同席の上、事情聴取が行われた。当初は私のことを睨みつけていたミネルバ様も、アレックス様から父親の悪事と母親の真相を聞かされ、最後は大人しく事情聴取に応じていた。

「お母様は私に言いました。あなたを呪縛から解き放つのだと…自分は魔女で、そのことがあったからずっと不幸だったと…同じ目に合わせたくない、幸せになってと言って自分の指を傷つけて、床に魔法陣を描いて…私はそこからの記憶がありません…命をかけるなんて…」

 両目からぼろぼろと涙が溢れ、ミランダ様はそのまま両手を顔に当てて泣いていた。その間、オスカー様がミランダ様に寄り添ってずっと慰めていた。兄妹の仲は良好そうだ。何とか話せるようになったミランダ様は、私の方を見て頭を下げた。

「ごめんなさい。あなたのことが憎くて襲わせたのは私です。ちゃんと罰は受けます。二度とあなたのことを傷つけるようなことは致しません」

 アレックス様はまだ険しい顔をしていたが、私の中でミネルバ様の印象が少しだけ変わった気がした。

「謝罪を受け入れます」

 私はそれだけを伝えてミネルバ様の前を去った。


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