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第133話 呪いと願い

「フィーネ、頼まれてくれるか?このまま死なれては困るんだ…」

 アレックス様は少し辛そうな顔だった。詳しい事情はよくわからないが、目の前で苦しそうにしているエメリン夫人を放っておくことは出来なかった。

「わかりました。出来る事をしてみます。チルチルお願い、手伝って」

『しゃーないな、まかしとき』

 私はエメリン夫人の手を取った。人の手とは思えないほどその手は冷たかった。ほとんどの魔力が尽きようとしている…命が尽きるのも時間の問題だった。目を閉じ、ゆっくりと癒しの魔法を展開した。

 どれほどの時間が経過したか分からないほど集中していた。王宮の窓から夕陽が差し込んできた頃、私は目を開けた。気づかないうちに部屋の中には人が増えていた。

「とりあえずですが、今すぐに亡くならない程度には癒せていると思います」

 部屋のあちこちから、安堵したように息を吐きだす音がした。

 私がベッドから離れると、様子を見守っていた人たちがベッドの側へ押し寄せた。

「お姉様…」

「お母様…」

 王妃のクリスティ様と、息子のオスカー様が声をかけた。エメリン夫人はゆっくりと目を開けた。まだぼんやりとしているようで、意識も混濁しているようだ。

「ミ、ミランダは?」

 何とか言葉を絞り出し、掠れる声で娘の安否を尋ねた。オスカー様がゆっくり手を握りしめ、励ますような声で言った。

「先ほど目が覚めました。意識もしっかりしていましたし、医師も心配ないと言っていました」

「よ、かった…成功、したのね…」

「お母様、ミランダに何をしたのですか?」

「普通の、幸せを願いました、何の憂いもない、縛られない人生を送れるように…」

「お姉様、死なないで下さい。私を置いて行かないで…」

「クリスティ、ごめんなさい…私は、あなたに愛される資格なんてないの…どうか、私のことは忘れて…このまま、死なせて…」

 長くしゃべり過ぎたのか、エメリン夫人はそのまま力尽きて目を閉じた。

「お姉様!嫌です、そんな…」

 いつの間にか側に来ていた陛下が、そっとクリスティ様を抱き寄せた。

「大丈夫だ、少し眠っただけだ。聖女が癒したのだ、すぐに亡くなりはしない…」

「お母様…あなたは…。アレックス騎士団長、お願いです。説明してください、母は何をしたのですか?」

「陛下、この件に関して私に一任していただけますか?」

「ああ、そうしよう。報告を待とう」

 陛下はクリスティ様を支えながら部屋を出ていった。残ったオスカー様と魔法騎士団のマックス様、あとは私で、それ以外の者が部屋の外で待機するようだ。重苦しい空気の中、アレックス様が口を開いた。

「オスカー殿はもう薄々気づいているだろう?エメリン夫人は魔女だ。それも生粋の魔女と呼ばれる、魔女から生まれた魔女だ。つまり娘のミランダもそうなる」

「おっしゃる通り、母が暗黒魔術を調べて欲しいと言い出した時から、疑っていました。ですが、まさか生粋の魔女だとは…まさか妹のミランダも魔女だなんて…」

 オスカー様は、頭を抱えて嘆息した。


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