第12話 一緒に寝ることになりました
「あ、あの、一緒にいる……とは?」
「ご両親には、説明をした。君の命を優先して、夜一緒にいる許可をもらった。魂を戻す方法が分かるまで、君の魂の負担を少しでも減らしたい。結婚前にこんなことになってすまないが、一緒にいることを許してほしい」
「それは、一緒に寝、寝るのでしょうか?」
「いや、俺はそこのソファーでいいから、フィーネは普通に寝てくれ。不安だったら縛ってくれてもいい」
「あの、お願いです、私と一緒に寝てください。アレックス様に抱きしめられると、すごく安心するんです。だから、あの、あ、それにこのベッドすごく広いので、二人で寝ても広いです。アレックス様がソファーで寝るのは狭いですし、お仕事するのに疲れを残すのはよくないです。今日だけでなく、方法が分かるまでずっとそれでは、無理があります」
「それはそうだが、いいのか?」
「はい、アレックス様を信じています」
「そ、そうか、大丈夫だ、絶対に不埒な真似はしないと誓う」
「はい、ではおやすみなさい」
私は、ベッドに横になった。アレックス様も近くに横になった。魂が引き合っているのか、近づくと安心する。
「あの、もう少し側に行っていいですか?」
「ああ、いいよ。こっちにおいで」
私は、アレックス様の腕の中に入り込んだ。心地よいとはこういう事なのね。命が終わると言われ、強張っていた心がほぐれていく。安心した私はすぐに眠りに落ちた。だから、アレックス様のつぶやきは聞こえなかった。
「……フィーネ、信用してくれて嬉しいが、これは、忍耐がいるな……」
朝、目を覚ますと隣にアレックス様はいなかった。サイドボードの上にメモが置いてあった。
【おはよう、フィーネ。夜にまた来る。 アレックス】
いつもよりすっきり起きられたような気がした。やはり今まで、魂に負担がかかっていたのかもしれない。不安はあるが、きっと何とかなる。今はそう信じて、やれることを頑張ろう。
「おはよう、フィーネ。いつもより体調が良さそうね。良かったわ」
食堂に行くと、母が安心したように微笑んだ。きっと心配をかけていたのだろう。仕事に行ったのか、父の姿はなかったのでホッとした。両親公認とはいえ、アレックス様と一緒に寝ていることを知られているのは複雑だ。
「アレックス様は?」
「早朝に、自宅に寄ってから出勤すると言って帰られたわよ。あちらは少し寝不足だったみたいよ。目の下に薄っすらクマが、ふふふ、まあ慣れていただかないとね」
母は楽しそうに笑った。慣れる?
「クマ……もしかして、私、寝相が悪いとか?」
「まあ、そんなことはないわ。気を使って緊張している?そんな感じかしら」
「そうなの?今夜はゆっくり寝て欲しいけど……」
「それより、フィーネ。来週から学園に通うのだから、今週中に準備しておいてね。それと、先に庭と畑に水をあげておいて」
アレックス様に借りた家は、庭がとても広かった。有効利用しようとアレックス様に許可をもらい、庭の端に小さな畑を作った。今はトマトやキュウリなど数種類の野菜を育てている。私と母は水魔法も得意なので、交代で水やりをしている。収穫が楽しみだ。