第121話 真実は誰が語りますか
『なんや、そんなん読まんと直接聞いたらええやんか』
「だって忙しそうでしょ?気にはなるんだけど…はっきり言って私とブレス侯爵家に接点なんてないじゃない?どうして私を護衛までして守っているのか、全然わからないんだよね」
『そやな、今だに厳重に警護されたままやな…』
窓の外を見れば、護衛の人たちが立っている。あと4日で新学期だが、本当に登校していいのかも分からず、段々と不安になっていた。今日アレックス様から連絡がなければ、明日チルチルに頼んでアレックス様から聞いて来てもらおうかと思ってが、意外な来客によって情報がもたらされた。
「やあ、久しぶりだね、フィーネ嬢。実は話題の事件の情報収集に、事情を知ってそうな君に聞くのがいいと思って来たんだけど…人選間違えたかな?」
そう言って帰ろうとする人物の服を私は思いっきり引っ張った。私を訪ねてきたのは情報部部長のマルコ先輩だった。護衛の検査を通って、玄関にたどり着いた先輩が、私の顔を見て何の情報も待ってないと判断して踵を返そうとしたのだ。
「待ってください!!お土産もあるんです!!どうぞ中へ入ってください!」
無理やり応接室へ引っ張って行き、辺境伯領で買ってきたお土産を渡した。強引にソファーを勧め、お茶の用意をした。
「フィーネ嬢…何も知らない様子なんだけど、何か知っていたり、しないよね…」
「何も知りません。だからお願いです!知っていることを教えてください!」
「いや、でも君が知らないということは、団長があえて説明をしていない可能性もあるわけで…勝手に教えていいのか、判断に困るというか…」
タジタジになって帰りたそうな先輩に私は必死で食い下がった。このままだといつまでもモヤモヤしたままだと思った。
「大丈夫です!!きっと忙しくて説明に来られないだけです。それに、教えてくれたらあとで詳しいお話も出来るかもしれません。許される範囲ですが…」
「詳しい話、そうだな、魅力的な提案だね。わかった、では知っている範囲で教えるよ」
諦めたようにため息を吐いて、マルコ先輩は知っていることを話してくれた。
1か月ほど前から、ブレス侯爵家を内偵しているという情報は出回っていたそうだ。魔法騎士団と王家の影が動いたらしい。フィーネ嬢はどこかへ隠され、益々情報に信憑性がでてきた。
ブレス侯爵家と言えば、妻のエメリンの妹が現王妃クリスティ様だった。そのためブレス侯爵は王家支持派閥の代表となっていて、議会での発言権も絶大だった。
ブレス侯爵家のミネルバ嬢を、第三王子ウィリアム殿下の妃にという声が根強く支持されていた。ところがあの自傷事件だ。さらにフィーネ嬢を拉致するという事件まで起こった。
「そう、それで女神様ってのがどうやらミネルバ嬢のことらしくてさ、君を襲った男は半分だけ操られていたらしい」
「半分だけ?どういうことですか?」
「どうも無自覚に暗示をかけたようなんだ。ミネルバ嬢が魔女じゃないかって言う奴もいたな…」
「魔女ですか?」
「ああ、生粋の魔女って知っているかな?」
確かミラ様が言っていたのを聞いたことがあった。私は頷いた。