第10話 聖女とは
「お爺様が、西の魔女と……」
アレックス様はかなり驚いていた。探していた西の魔女が、前陛下である祖父と繋がりがあったのだ。フィオリーナ様とアレックス様が襲われたことと関係あるのかもしれない……
「そうですね、アレックス様が生まれるかなり前の出来事なので、知らなくて当然ですね。少し気になったのですが、フィーネ様の魂はフィオリーナ様の魂なのだとして、フィオリーナ様はもしや聖女ではなかったですか?」
「いや、そんな事は聞いたことがないが……」
「当時8歳だとすれば、魔力判定もしていない時期でしょう。例えば癒しの力が使えたり……」
「ああ、フィオは私が怪我をするたび癒してくれていた。属性を判定する前に亡くなったが、光魔法だと思っていた」
「そうですか。フィオリーナ様のお母様はキャサリン王女ですから、初代聖女が初代王の妻であったことを考えると、聖女の可能性が高かったと思います。時々王家に聖女が生まれるのです」
「あの、聖女ってなんですか?」
「ああ、聖女は6属性の魔法以外の精霊魔法が使える者のことを言う。癒しや加護の力があって、光魔法とは異なる。主に使うのが魔力ではなく、精霊の力を借りて癒しを施す」
「あの、もしかして、これがそうでしょうか?」
私はそう言って、手の平から淡い光を出した。私が得意な癒しの魔法だ。残念ながら眩暈を治すのに自分自身に魔法をかけることは出来なかった。
「おお、そうです。それは精霊魔法です。光魔法とは光り方が違うので、すぐわかるはずですが、今までどうして聖女だと分からなかったのですか?」
「私の住んでいた村には、魔法に詳しい方がいませんでしたし、癒しの魔法を使う機会もありませんでした」
「なるほど、では属性判定を10歳の時に受けてないのですね」
「そうですね、村で受けた子は半分以下でした。私も気にはなっていましたが、受けていません。魔法学園で受けるのを楽しみにしていたのですが……聖女は学園に入れますか?」
少し心臓がドキドキする。もし入れなかったらどうしよう。
「それは大丈夫だと思いますが、聖女は国に保護され、王太子の妃にされることが多いのです。今は聖女様がいませんから、聖女がいると分かれば、何かしらの動きがあるかと……」
違う意味で心臓がドキリとした。怖くなってアレックス様の顔を見た。
「大丈夫だ。フィーネのことは守る。それに今の王太子のオリバー殿下には王太子妃のマリアナ様がいらっしゃる。夫婦の仲も良い。第二王子のベンジャミン殿下も隣国の王女エマリエル様の輿入れが決まっている」
「そうですか、それならば大丈夫ですね」
ホッと胸をなでおろすと、隣でサミエル大神官長様が言葉を足した。
「もう一人、ウィリアム殿下をお忘れですよ。ウィリアム殿下は魔力量が多いので、今年トルカーナ魔法学園に入学するのです。今一番気にすべき相手では?確か末っ子で年が離れて生まれたので、甘やかされて大層我儘な性格、おっと不敬でしたね。まあ、それで、何度も破断され、婚約者も決まってないはずです」
「そうだとしても、俺とフィーネは10年以上婚約関係にあるんだ。よほどの理由がない限り婚約解消になんてならないさ」
「え、10年以上……」
サミエル大神官長様が少し引きつった顔で私たちを見た。そうなるのはわかる。13歳の時に4歳児を見染めたのだ。それだけ聞くと誤解されて当然だ。
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