第105話 王都に戻ってきました
王都に無事帰還して5日が過ぎた。今回の真相は秘匿とされ、表向きは初代聖女の封印が1000年経過して効力が弱まり魔物が増えたため、魔法騎士団が討伐し聖女フィーネが新たに封印をしたと発表された。
そしてその功績を称え、陛下よりアレックス様と私は勲章を賜り、無事全員帰還した魔法騎士団を労うための舞踏会が開催される事になったのだ。
「お待たせしました。アレックス様」
「フィーネ、今宵も妖精姫のように美しいよ」
アレックス様が眩しそうに目を細めて微笑んだ。そういうアレックス様こそ、礼服用の騎士服を素敵に着こなす美貌の貴公子だった。何度見ても眩しくて、どきどきする。
今日私が着ているドレスは、2日前にアレックス様から届いたものだ。上半身は白のオフショルダーでスカート部分は腰から裾にかけて淡いブルーから濃いブルーに変化している。裾には金の刺繍糸で薔薇が散りばめられ、動くたびにキラキラと輝きを放つ。アクセサリーはデビュタントで贈られたサファイアとダイアのネックレスとイヤリングだ。花の形を模して作られた可愛いデザインで、このドレスにとても合っている。髪はハーフアップにして、白い薔薇の生花で飾られている。そしてチルチルはそのまま私の頭の上に埋まっている…
今回の功績を称えられた主役の一人、いや、一羽なので、髪飾りになるのではなく、チルチルにも陛下より招待状が届いていた。
「あの、ドレスありがとうございました。帰還して5日しかなかったのに、急がせてすみませんでした」
「いや、そのドレスは、前々から用意していたんだ。デビュタントも済んだので、夜会に誘おうと思っていたんだよ。忙しくてなかなか実現できなかったんだけど…」
「そうでしたか、採寸していないのにピッタリで…」
「それは、目視で大体わかっ……」
アレックス様がパッと手を口に当てて、しまったという顔をした。目視で分かる…?
『変態やな』
「なっ…違う!そういう目で見ていたわけではない!違うから、フィーネ。なんとなく分かってしまうんだ」
「そう、ですか…そういえば、制服を頂いた時もピッタリでした…」
さらに焦りだすアレックス様を見て、クスクスと笑ってしまった。
「大丈夫です。変態だなんて思っていませんよ。どう見えているか、少し気になりますが…」
「そのままのフィーネだと思う…ところで、フィーネはいつまでその鳥を頭に乗せているんだ?もう、離れても大丈夫なんだろ?」
「え?…そうでしたね。魂は元に戻ったのでもういいんでしたね。なんとなく癖になってしまっていて…落ち着くというか…」
『わいはかまへんで。ずっと一緒におるで』
「いや、俺が嫌だ。すぐにそこをどけ」
『なんでや、わいはフィーネの相棒やで。絶対どいたらん!』
二人がケンカしだしたので、私は焦ってケンカを止めた。
「あの、急がないと遅刻してしまいますよ」
「そうたっだな。おい鳥、話は後だ」
アレックス様はさっと手を出して、馬車までエスコートしてくれた。ここは王都の端にあるので、王宮まで少し時間がかかるのだ。公爵家の馬車は4頭立てで、スピードも速いので少し余裕を持って会場に着くことが出来たが、すでに会場には沢山の人がいた。その中をアレックス様にエスコートされて緊張しながら進んだ。