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第103話 アレックスの願い

 呪文の詠唱が終わり、体から欠片の気配が消えた…どうやら死なずに済んだようだ…

「お婆様、フィーネは?」

「…術は成功したわ。でもまだ駄目ね…兎に角、フィーネを呼び戻さないと。まだ天には行っていないはず…」

 お婆様が癒しの魔法をかけながら、フィーネに呼び掛けた。俺もフィーネに縋って叫んだ。絶対に戻してみせる。戻って来い、フィーネ。


『よっしゃ、ここや、ここに戻るんや!!』

 鳥が上を見ながら叫んだ。その瞬間、何かがフィーネの中に入ったような気がした。

 フィーネの瞼が微かに震えた。覗き込むとゆっくりと瞼が開いて、綺麗なピンクトルマリンの瞳と目が合った。

「ア、アレックス、さ、ま…」

「フィーネ…フィーネ」

 フィーネは安心したように微笑んで、そのまま目を閉じた。

「フィーネ?!」

「落ち着いて、もう大丈夫よ。疲れて眠っただけ。ここは私が見るから、あなたはここの指揮をとりなさい。この子のお陰で魔物はほとんど弱体化しているから、しっかり処理するのよ」

「わかりました。フィーネのことよろしくお願いいたします」

 行く途中、空を見上げているお爺様に会った。

「お爺様、フィーネを守ってくださりありがとうございました。ところで何を見ているのですか?」

「うん、エイダンとイザベラが手を繋いで、空にのぼっていったんだ。幸せそうだったから、良かったなと思って…」

 年のせいでボケたのかと思っていたが、数刻後に目覚めたフィーネから、天に行かなかった理由を聞いて、疑って悪かったと反省した。

「天に行こうと思っていたら、エイダン様とイザベラ様に引きとめられて行けなかったんです。…そうですか、セイ様には見えたんですね。二人とも天に行けたのならよかったです」

 フィーネは安心したように微笑んだ。隣で聞いていたイーサン殿が涙ぐんだ。いろいろ複雑な心中を察するが、最後に救われたと思ったのだろう。

「フィーネ様、アレックス団長。本当に申し訳ございませんでした。父に代わりお詫び申し上げます。今後の処分も真摯に受け止めます。領民を救っていただきありがとうございました。そして、フィーネ様、命がけで兵を助けていただき感謝いたします。死者がでなかったのは本当に奇跡です」

 深々と頭を下げた後、イーサン殿は辺境伯の待つ館へ帰っていった。今日起こった顛末を辺境伯に報告するのだろう。


「アレックス様、背中の傷は大丈夫ですか?体調は?」

「ありがとう、大丈夫だよ。フィーネの方は、大丈夫か?魂の欠片が体に戻ったって、ミラお婆様から説明されたんだよね」

「はい、大丈夫です。不思議と馴染んでいます。ずっとアレックス様が大切にしてくれていた欠片だからでしょうか」

 嬉しそうに胸に手をあてて微笑むフィーネを見て、愛しさが込み上げてきた。フィーネを胸の中に閉じ込めて、溢れ出る気持ちを伝えたくなった。鳥と一瞬目が合ったが無視した。

「フィーネ、愛している。君を失わなくてよかった。生きていてくれてありがとう」


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