第99話 イヤーカフの秘密
次の瞬間、鳥型の魔物が私に狙いを定めて真っすぐ飛んできた。
「……!!」
思わずしゃがみこんだ瞬間頭上で爆発音がした。そして背後で聞いたことのある笑い声が聞こえてきた。
「え?」
どさっと音をたてて、鳥型の魔物は空から降ってきて絶命した。
「大丈夫かしら?転送したらいきなり魔物の真っただ中だったから、笑っちゃったわ~あはは」
「…ミラ様??どうしてここに?」
ミラ様の隣で茫然と座り込んでいるセイ様を引き起こしながら、悪戯が成功したように微笑んだ。
「ほら、そのお守りのイヤーカフ。それに転送魔法陣を組み込んでおいたの。フィーネの身に危機が迫ったら、私をあなたの元に送れるように」
「ミラ……いきなり何するんだ。転送するならそう言ってからにして欲しいよ…さっきの店、食い逃げだよ…」
食事中だったのか、セイ様の右手にはホークが握られたままだった…
「あはは、ごめんね~転送魔法が発動したから、慌ててセイも掴んで連れてきちゃった…剣は腰にあるから、まあ魔物討伐の訓練だと思って、頑張って!!今度こそ冒険者初級を返上するんでしょう?」
「ぐう、そうだな…」
「それで、これはどういう状況?とりあえずここにいる魔物全部敵かしら?」
ぐるりと取り囲む魔物を見て、楽しそうにミラ様が微笑んだ。
「はい、ここにいる魔物は敵です!聖女の石碑が穢されて、魔物が溢れ出てきています。私が清浄魔法を使って封印する間、魔物から守って欲しいのですが、いいでしょうか?」
セイ様はキョロキョロと辺りを見回して青くなった。結界魔法が破られて、魔物が続々とこちらにやってきていた。匂い玉の効き目も先ほどの鳥型魔物のせいで薄れているようだ…
「ミラ、これ、どうしたらいいんだ??私でいけるのか?!」
「まあ、なんとかなるでしょ?いざって時は守ってあげるから、出来るだけ頑張ってね」
「あの、セイ様。これ、匂い玉、痺れ玉、眠り玉です。火をつければいいので持って行ってください。これが火炎玉。弾けろ魔物と言って投げてください。魔力をこめて投げてくださいね。近距離は危ないので気をつけて!」
不安そうなセイ様にサッと渡すと、ミラ様を見た。
「了解よ。あなたのところには出来るだけ行かせないわ。多すぎて確約は出来ないけれど…」
「ありがとうございます!気をつけてくださいね」
「あなたこそ、気をつけるのよ。魔力は無限ではないのよ。枯渇すれば命だって危ないの。十分注意して」
「はい、では行ってきます」
私とチルチルは、石碑に向かって走った。出来るだけ早く聖女の石碑に清浄魔法をかけないと、戦況がどうなるか不安だった。あちこちで魔物が溢れ、負傷者がでているのがわかった。アレックス様もこちらに来るのが難しいようだ。
『よっしゃ、まずは石碑から剣を取り除くで』
「うん、わかった」
私は両手で剣を掴んで、力一杯引っ張った。しかし石に食い込んだ剣はびくともしなかった。
「無、無理…私の力じゃ、抜けないよ…」
「フィーネ、これを抜いたらいいのかい?」
隣から声がかかって、振り向くとセイ様がいた。
「やっぱり足手まといだから、フィーネの方に行けって…ミラが言ったんだ」