another force of fourth
『一霊四魂の話』を先に読むことを強く勧める。
エルドラド「………………」
幻「………エルドラド、姉さん達のことが心配なんだね」
エルドラド「………まぁ、それなりに。早く進むぞ、俺達が今出来るのはそれだけだ」
幻「………あのね、エルドラド。お願いがあるんだ」
エルドラド「………何だ」
幻「……イズモ石を、預かってくれないかな」
エルドラド「…………どうして」
幻「きっと、また敵が襲ってくる。私が囮になるから貴方だけでも逃げて。この石を、持っていてほしい」
エルドラド「………………………」
幻「叡智姉も、寂滅姉も、私達を逃すために………だから、私も腹を括らないといけないんだ」
エルドラド「………………………」
幻「今度は、私が囮になる。だからエルドラドは………」
エルドラド「chicken………quitter…………」
幻「えっ?」
エルドラド「How stupid can you get. お前、今なんて言った。叡智と寂滅のことなんて言った」
幻「エ……エルドラド………」
エルドラド「『囮』………たしかにそう言ったな?」
幻「う……?」
エルドラド「あいつらが囮になった?俺達を逃すためにだ?あ?」
幻「そ、それは………」
エルドラド「お前がそう見えたっていうのなら、お前には任せられない。石はそのままお前が持っていろ」
幻「な、なんでだよ!!私だって………!!」
エルドラド「………『囮』が必要なら、俺がやる」
幻「もう嫌なんだよ!!!誰かが居なくなるのは!!!」
エルドラド「…………」
幻「お父さんも!叡智姉も!寂滅姉も! 残ってるのは私達だけ………もう見たくないんだよ!!誰かが消えていくその様を!!!」
エルドラド「…………それは、俺もそうだ。多分、誰よりも」
幻「…エルドラド」
エルドラド「きっと、二人が居なくなって冷静じゃなくなってたんだと思う。でも、これだけははっきりと言える。あいつらは、囮になるために残ったんじゃない」
幻「……………」
エルドラド「叡智は言っていた、俺達の目標はスワにイズモ石を届けることだと。それに命を賭けただけだ」
幻「それは……わかってるよ……」
エルドラド「あたかも犠牲になったかのような口振りをするな、また会えるんだから」
幻「そうだよ………そうだよね!!」
エルドラド「わかってくれたならいいんだ」
幻「でも、生半可な気持ちであんなことを言ったわけじゃないんだよ。貴方の方が、私より断然速いし強いから……」
エルドラド「………そうか」
幻「……預かってくれないかな?」
エルドラド「…………良いんだな?」
幻「覚悟はとっくに出来てるよ」
エルドラド「………わかった、預かるよ」
幻はエルドラドにイズモ石を預けた。
エルドラド「それじゃあ……代わりといっちゃなんだが………カメラを預かってくれないか。この戦いが終わったら記念写真を撮りたいからさ」
幻「わかった、交換だね」
エルドラド「…………『絶対に』無くすんじゃないぞ」
幻「任せてよ、未来への約束だもんね」
……と、歩を進めたその瞬間。目の前に巨大な白蛇が現れた!
幻「クテクウシ!!」
エルドラド「……あの時のか、10mはあるか?」
幻「エルドラド、貴方はスワの所へ!ここは私が……!」
エルドラド「待て、あんなデカいやつから逃げられるか?尻尾で巻き取られて終わる気がする」
幻「た、たしかに……!!」
エルドラド「俺に良い考えがある。相手がクテクウシならうまく嵌ってくれるかもな」
幻「その考えって?」
エルドラド「クロニクルは言っていた、クテクウシは噂を餌にすると。なら、それを俺らが利用すれば良い。うまく誘導するんだ」
幻「だけど、そんな噂どこに………」
エルドラド「お前が一番知ってるだろ………最近聞いたばかりのほやっほやな噂を!!」
幻「……あの天国へ行く儀式の噂!?」
エルドラド「そうだ、思い出の品はそのカメラ。それをうまく使って奴を誘導してくれないか」
幻「このカメラでクテクウシを……わかった、やってみる!」
エルドラド「……はっ、結局囮になってしまったな」
幻「結果論だね、でも違うよ。囮なんかじゃなく、目的の達成の為……相手を引きつけてみせる!」
エルドラド「それじゃあ、思い出の場所で落ち合おう。別々の方向にダッシュだ」
幻「了解、必ず行くから」
クテクウシ「……………」
幻「こっちこっち!思い出の品はここだ!天国まで一緒に行こうか!!」
幻とエルドラドは別方向へと走る。
エルドラド「いいぞ、混乱している。作戦は成功だな!」
幻「こっちだこっち!!」
クテクウシ「……シャー!」
クテクウシはエルドラドを追いかけた!
幻「なっ、どうして!?これも思い出の品で、噂には間違いないはずなのに!!」
エルドラド「いや……もっと上があった……噂という言葉さえも生温い……いわば伝説がッ!!全ての噂の元凶たるものがッ!!!バレていたのか…俺が石をしまうその瞬間を見られたって言うのか!!!」
幻「不味い……距離が……!!」
クテクウシはエルドラドに襲いかかる!!
エルドラド「作戦が……裏目に出たか………はぁ…」
エルドラドは幻に念を送る。
エルドラド「……あー、幻。そっちは大丈夫か?」
幻「私は大丈夫だけど、クテクウシがそっちに!」
エルドラド「そうだな、俺をぶち殺す気満々でいるわ。まぁ、話したいことがあるから今話しておくよ。幻、そのままスワの所に行け」
幻「私だけ行ってもイズモ石が!!それ以前にエルドラドが!!!」
エルドラド「良いんだ、これが最善だ」
幻「な、何を言ってるの?とにかく、そっちに行くから……」
エルドラド「来るなッッ!!!!」
幻「!?」
エルドラド「時間が無いんだ、間に合わなくなる。早くスワの所に行け、何度言えばわかるんだ」
幻「で、でもイズモが………」
エルドラド「イズモ石ならお前が持ってるだろ」
幻「えっ!!?」
慌てて確認する、確かに彼女が持っていたのはイズモ石だ。
エルドラド「言っただろ、絶対に無くすなって。こっちの石はダミーだ。幻がよく見せてくれたマジックが役に立つ時がここで来たな。よかったよかった」
幻「よくないッッッ!!!!」
エルドラド「幻…………」
幻「じゃあ………最初から私を信用してなかったわけだ!!!嘘ついてたってわけだ!!!!」
エルドラド「……生憎と、嘘は俺の得意科目なんでね。クククク」
幻「何がおかしいッッ!!!」
エルドラド「おかしいさ、だって2回も俺の嘘に騙されたんだから。なぁ、今どんな気持ちだ?2回も騙された気持ちはさぞどんな気持ちなんだ???」
幻「囮になるなと説教したのはどこのどいつだッ!!あれも嘘だったって言うのッッ」
エルドラド「それは本当だ、幻。お前に囮は無理だ。お前は優しすぎる。憎みたくなるほどの優しさで、二人を救え。俺にはそんな優しさ毛頭無いからな」
幻「そんなの、私だって自信ないよ!!」
エルドラド「大丈夫だ、俺が保証する。あの時俺を叱ってくれたお前なら絶対にできる」
幻「あれは、無我夢中で……」
エルドラド「だからこそだ、だからこそ俺の心に届いたんだ。大丈夫、お前ならやれる。叡智も寂滅もちゃんと言わなかったけれど、お前ならやれると信じて石を託したんだ」
幻「………………」
エルドラド「いいか、よく聞け。ここからは一人だ、一人で行くんだ」
幻「………………無理……」
エルドラド「俺だってわかってるんだよ、叡智も……寂滅も……」
幻「………ッ!!!」
エルドラド「お前は、誰よりも強い。大丈夫だ」
幻「……やめて………」
エルドラド「愛してるぜ、my best partner」
幻「…………エルドラド?エルドラドッ!?エルドラド!!!」
エルドラド「………ふぅ、待たせたな蛇腹デブ。お前の求めている物はここには無い」
クテクウシ「謀ったのか………」
エルドラド「こちとら500年ずっと嘘をついてきた身でね」
クテクウシ「グオォォォォォォォ………」
エルドラド「飛んで火に入るクテクウシ……俺様の格好の獲物だな」
クテクウシ「この雪の前、いつまでその口を開けられるかな」
エルドラド「…………………」
クテクウシ「貴様も、あの儚い霊のように死ぬが良い!!」
エルドラド「………なんなんだろうな、この感覚は。憤怒のあまり、辺りが焦土と化しそうなのにどうしてこうも冷静なのだろうか」
クテクウシ「怒りに縛られて動けぬ愚龍が、喰い殺してくれるわ」
エルドラド「……いつもの俺なら知らないが……家族を殺した怨嗟の炎は、オケアノスでも沈静化出来ないぞ」
エルドラドの臓物が震える、炎が生じて口の中から吐き出される!!
エルドラド「………!」
炎の中にも関わらず、クテクウシが体当たりをする。
エルドラド「……カウンターのつもりか、この程度が苦痛になるものか」
次にクテクウシはその場の空気を凍らせた!
エルドラド「……絶対零度空間か………爬虫類のくせに面妖な………」
それに反してクテクウシは脱皮をした。
エルドラド「動きに無駄がなくなった!?…まぁいい、この空間ごと俺の炎で溶かし尽くしてやる」
喉奥から溢れ出す金色の炎、それは兇悪で極悪であるッ!!!
クテクウシ「………!!!」
エルドラド「…………ふん、俺の炎で燃え尽きたか。俺に勝てると思うなよ」
クテクウシ「………とでも思ったか?」
エルドラド「!?」
巨大なクテクウシはエルドラドを飲み込もうとする!!
エルドラド「ぐうっ!!だが……勝った!!勝負には負けたが、俺達の賭けは勝った!!!ざまぁみやがれ、クテクウシ!!!幻、後は任せるぜ……!!」
ごめんな、また嘘ついて。
幻「エルドラド………お願いだから返事してよ………なんで応えてくれないの…………」
幻はイズモ石を握りしめながら指輪に囁いていた。
幻「……………」
幻は必死に濡れた顔を拭う。
幻「……!」
上空にいたのは、スワだった。スワは彼女を見下すように上空に佇んでいた。
幻「お父さん!!!」
スワの真下には雪に埋もれた傷まみれの霹靂が!
スワ「そちらからわざわざ来たのか……愚かだな、奇魂よ。幸魂が命を捨ててまで逃したというのに」
幻「そこをどけぇっ!!お父さんを助けなきゃ!!!」
スワ「……一人か、他の三人は死んだようだな」
幻「死んでない!!誰も死んでない!!!」
スワ「どうして……そう真実を認めぬのだ……」
幻「イズモ!お願い、スワを止めて!!!」
スワ「…その石は…!僕を誑かした偽りの女神…!!」
イズモは朧げな姿を現す。
イズモ「…………………」
スワ「もはや声も出せぬか!!今度は貴様が消える番だ、イズモ!!!」
スワの神力に耐えきれなかったのか、イズモの姿が吹き飛んでいった。
幻「イズモがやられた!!?」
スワ「もはやイズモには何も残っちゃいない、助けを乞うても無意味だ。そもそも、偽りの女神の分際でどうやって他人を守ることが出来ようか」
幻「偽りの……女神?」
スワ「僕もイズモも、人間に良いように祀られた。イズモは僕を売った、己の為だけに!赦すものかッ!!」
幻「………赦さないだけのくせに、よく言うよ」
スワ「何…?」
幻「赦さないと心に決めているから、貴方の身体は半分黒く染まってるんだ」
スワ「…貴様のような赤子に何がわかる」
幻「知ったこっちゃないね。でも、赦すっていうのは心の強さだよ。本当に強い人は相手を赦すんだ、貴方は赦さないだけ………それじゃなんの解決にもなりゃしない!!……………寂滅姉は、あんなことしたクロニクルさえも赦そうとしてたよ。たくさん酷い目に遭ったのに、話すことが大事だって……」
スワ「それは臆病だからだ、衝突を避ける為の策に過ぎない」
幻「叡智姉はっ、シスコンだけどっ、やる時は本当にやる人だった!!」
スワ「周囲を見ずに、楽な方法で突っ込む。真実は必要ないからだ」
幻「エルドラドはっ、嘘ついたけど!!!」
スワ「人と関わるのに仮面は不可欠。だからこそ人は交われる、だからこそ悲劇は生まれる。貴様も、騙された身なのだろう?勝手に重荷を背負わされ、イズモに神頼みし参上することしかできない」
幻「…………そうだよ、みんな私を置いて行った……私だって、自信はないのに!貴方に任せるって……スワの所に行けって……勝手に決めつけて!私は一人じゃ何もできない……だからこそみんな一緒でここまでこれたのに!!もう……みんな居なくなっちゃった………」
スワ「そうだ、かつての仲間は息絶え、貴様はもはや独りだ」
霹靂「そんなことない………」
幻「お父さん!!?」
霹靂「幻、お前はとても優しい子だ……だが優しくあるためには強くならないといけないんだ……そうでなければ自分で自分を追い詰めてしまうから………」
幻「だけど……私の優しさじゃ………みんなを助けられない………」
スワ「まだ息があったか……丁度良い、貴様がどれほど無力なのかを教えてやろう」
霹靂「お前は……独りじゃない……叡智は……寂滅は……エルドラドは……お前の心の中に居る……」
スワ「消えろ!」
スワは霹靂を踏み潰した。
幻「!!!」
スワ「これでわかったか、どれだけ貴様が愚かだということを………」
幻「………お父さん………」
スワ「あとは貴様を消すだけだ…僕は嘘を、噂を、真実にする。真実だけの世界にする、それこそがナオヒなのだ!」
幻「………………………うるさいッ!!己を省みることのできない奴にナオヒを語る資格はないッ!!!お前はただ己の一心に溺れたッ!!!お前の言うことだって間違いじゃないッ!!!でもそれだけが正解ではないッ!!!」
スワ「僕に向かって反省しろだと……?何様のつもりだッ!」
幻「何様もないッ!!この世に存在するただの一霊ッ!!お前も私も根本的には変わらない!!!……貴方が怒りや怨みに満たされているのは知ってる。だから、私がそれを全て受け止める」
スワ「100年しか生きていない若造に、僕の気持ちがわかるものかッ!!!」
幻「いいから来いッ!ただし全力でッ!!その持てる力全てを出し切れッ!!!」
スワ「生意気なァァァァァァァァァァァァ!!!」
幻「この雪さえ止まればきっと………みんなと笑うって決めたんだ!!!」
スワの黒い部分が雪と共鳴しているように見える。
幻「その仮面……討ち取ったり!」
スワ「失せろ……イズモの幻影!!」
強烈なスワの暴力!それはまさしく絶対的神の力!!
幻「ここで退くわけには……いかないんだァーーーッ!!!」
幻の全身全霊ッ!!持てる力全てを使いスワに攻撃する!!!
……………………。
幻「………あ……あれ?」
スワ「そんな甘ったれた攻撃なんぞ、通らない」
幻「……え、攻撃が……すり抜けた?ど、どうして?確かにスワに当たったはずなのに………?」
混乱している幻にも容赦せず、神の力が下される。
…………勝てなかった………やっぱり……私だけじゃ無理だよ…………みんなで笑うって……約束……したのに…………
独りじゃないよ!
…………………………?
終わってないぞ!
……声………………?
幻、しっかりしてよ!
幻「ふぁ、ファントムちゃん!?どうしてここに!?」
ファントム「一時的に境界線をぶっ壊してきたんだ。またしばらくしたら元に戻っちゃうけど………」
幻「……私……失敗しちゃった……約束……したのに……」
ファントム「大丈夫。これ考えたの姉さん達だから、今頃あの三人も驚いてると思うよ」
ライト「うぇるかむとぅーあわーてりとりー」
叡智「……まさか死んだ先がエニグマ達の縄張りだったなんてな」
エニグマ「失礼だな、頑張って境界線ぶち壊してやったのに」
寂滅「エニグマさんは本当に最強だね……」
エルドラド「……しかし、あの雪の最中どうしろと………」
エニグマ「境界の先から聞いていたよ、あの黒い皮をひっぺがせば良いんだって?」
叡智「ああ、だがあの雪のせいで力が………」
エニグマ「力?そんな下品なものに頼るお前らだっけ?」
寂滅「えっ?」
ライト「ほらほら、アレだよアレ!」
エルドラド「…?」
ライト「『絆』だよ!」
三人「……!」
エニグマ「ほら、わかったんならとっとと持ち場につけ。これ以上はキツイ」
叡智「ああ、ありがとうエニグマ!」
寂滅「見せてやろうか、『私達』の絆を!」
エルドラド「おう!」
みんなの絆が、共鳴する!!!
三人「「「幻!!!」」」
幻「みんな!!!………みん……なぁ……」
エルドラド「ごめんな幻……嘘ついてごめんなっ……」
寂滅「幻、よく頑張ったね。よしよし」
叡智「さぁ、私達の絆を見せてやろうよ」
幻「私はやっぱりだめだった……失敗して…お父さんもイズモも……」
叡智「そんなことないさ、貴方は真っ向からスワに立ち向かったんだから。その勇気、敬意を表するね」
寂滅「スワを否定させずに、受け入れる。幻らしいっちゃらしいよ」
エルドラド「お前は嘘の皮を剥がすために、本音を本気で受け止めようとした。それはすごいことだ」
幻「だけどっ………お父さんが……イズモが……」
エルドラド「大丈夫だ、全部見てたから」
寂滅「お父さんも、イズモも、スワもみんな助けるんだ!」
叡智「一人一人じゃ雑魚っちいかもしれないけど、四人集まれば最強なんだ!」
がんばれ!
応援してるからな。
絶対帰ってきてね!
待ってるよー!
幻「さぁ、行こう。『泣いた破壊神』の真実を見つけに」
三人「「「イエスマム!!!」」」