表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

4

 屋敷に戻ったメイスは父に訊かれた。

 精霊は殺してきたか、と。

 メイスは黙って頷いた。


 この地ではときおり、精霊を娶る者が現れる。

 だがほぼ全ての者が上手くいかず、伴侶を殺してしまうのだ。

 そして人の世界へ戻ってくる。


 伴侶を殺す以外に誓いを解消する道はない。


 人は誓いを破れる生き物なのだ。


 子供たちをその罪から遠ざけるため、森へ行ってはならないと人々は言う。

 精霊の伴侶となる事なかれ、と。


 メイスは季節が変わる前に先方の領地へ婿入りし、思慮深い良き夫となった。

 後継にも恵まれ、領民を思う、良き領主となった。

 だが穏やかな風の吹く、水の(ぬる)む春の暖かい日には塞ぎ込む事が多かったという。


 

 お姉様。

 ねえ、お姉様。

 恋はどんなものだったのかしら、お姉様。

 恋は楽しいものだったわ。

 歌うより楽しいこと?

 歌うより楽しいこと。

 踊るより楽しいこと?

 踊るより楽しいこと。

 弾むようで、くすぐったくて、心地好いこと。

 弾むようで。

 くすぐったくて。

 心地好いのですって。

 素敵ね。

 素敵ね。

 すごく素敵。

 でも楽しいけれど素敵ではないの。

 どうして?

 どうして、お姉様?

 楽しいけど退屈だった。

 体のある生活は、刺激的だけど不愉快だった。

 誓いは縛りつけるだけで苦痛だった。

 あの体を捨てられて本当に良かった。

 恋は楽しいけど素敵じゃないの。

 楽しいけど素敵じゃないの?

 素敵じゃないわ、ああでも。

 昔、死んでしまったお姉様はどうだったのかしら。

 自分で森を出て、誓いを破って消えてしまったの。

 遠いところへ行ってしまったのよ。

 笑って行ってしまったの。

 どうして誓いを破ったの?

 どうして笑っていたのかしら?

 恋は、恋は。

 楽しいものではないのかしら?

 美しいものではないのかしら?

 わたしは恋をしていたのかしら?





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ