突破ッッ!!
みなさま。
日頃から大変お世話になっております。
芹子です。
先ほど、深夜に検問所を抜ける算段だと申し上げましたが、この度は日が明けるまで眠ってしまい、まことに申し訳ありませんでした。
考えてみれば、マイクロビキニ姿で散々歩かされた末に前世の記憶を思い出し、さんざん逃げたあげくにその後もいろいろありすぎて、起きてろってのが無理な話じゃあないですかね。
はい。はい。きちんと検問所超えます。超えさせていただきます。王都に行かないと話し進みませんもんね。はい。
……朝ごはん食べてからでもよろしいでしょうか?
「もぐもぐ。食えなくはないわね」
適当に成っていた木の実を食べて、腹を満たした。
私はくノ一、忍者なので、サバイバル術にも長けている。
食っても無害かどうかはだいたい匂いでわかるのだ。
ところであの女だが、いまものんきにイビキをかいて寝ている。
起こす気はない。こいつとはここでおさらばなのだ。
「よし、行くか」
朝といえど、まだ有明。
こっそり、すばやく、小さな体をより縮めればバレない……かも?
ささっと検問所へ近づきだしたそのとき、
「うおうおうおおぉぉ〜〜」
メミーナがふざけた歌を歌いながら大型バイクをふかして走ってきた。
パラリラパラリラの騒音付きである。
「女と生まれたからにゃあよお、自分の道くらい自分のやり方で行きてえよなあ!」
これがこいつの寝起きテンションだっていうのだから天晴だ。
そのまま事故ってくれ。
「あのバカ、気づかれるでしょうが!」
「こいよ! 邪魔するやつは全員焼き殺してやるぜえ!」
そこは轢き殺せ。
警備員たちは「なんだなんだ」と当たり前の反応をしながらメミーナへ視線を送っている。
「やあセリちゃん。おはメミー」
「私の名前を呼ぶな! あとその気持ち悪い挨拶金輪際使わないでよね!」
「え? なに? バイクうるさくて聞こえな――あっ」
メミーナはよそ見運転をしてそのまま検問所の金網に激突してしまった。
しかも金網には電流が走っていたようで、ビクビクと痙攣して泡を吹いている。
が、問題なのはバイクの方。どういう原理か漏れていたガソリンが電気で引火してしまい、大爆発を起こしたのだ!!
警備員が駆け寄る。
「だ、大丈夫か!?」
いまだ! 私はメミーナが命を落としてまで生み出してくれた隙を突き、検問所を突破した!
「やった、やったわ!」
ありがとうメミーナ。あんたのことは生理的に無理だったけど、この恩は忘れない。
せめて来世では虫にでも転生して静かに暮らしてほしい。
「どうにか抜けられたね! セリちゃん!」
と思ったら、地中からメミーナが出てきました。
「え、あんた死んだんじゃないの?」
メミーナはふっふっふと笑みを浮かべると、スプーンを取り出した。
「どっかから拝借したこのスプーンで土を掘って脱出したのだよ!」
「ここは刑務所じゃねえんだぞ」
結局、こいつとの旅はまだまだ続きそうです。
次回予告!!
ようやく検問所を突破した私たちに待ち構えていたのは、あの奴隷商人さんだった!
しかも可愛い部下を二人も連れて、もうたいへ〜ん!!
本当に王都にたどり着けるの? 誰か助けてー。
あ! あの人はいったい、だれ?
次回、最強くノ一芹子ちゃんがんばり物語 第9話
『芹子、全知全能になる』
次回も一緒に〜、せりっこせりっこ〜!




