旅立ちッッ!!
凄惨な親子喧嘩から少しして、メミーナが起き上がった。
妙に力強い眼差しで、私を見やる。
「考えてみれば、あの人はずっと私に冷たかった」
「う、うん」
「これがあの人の思いだって言うなら、受けて立つよ。わたしゃあの人を超える! 最強の格闘家になっちゃる!!」
「が、頑張って!」
「だから、一緒に旅にでよう!」
「え、あ、はい?」
みなさんお気付きだろうか。彼女と私はいまはじめて会話したことを。
つまり仲間になる義理も接点もなにもないのだ。
ずいぶんとコミュ力が高い……というより、人を人としてみていないサイコパス臭がする。
「いやだよそんなの」
「でもキミ逃亡者でしょ? 行く宛あるの?」
こいつあの短期間で私の立場を察してやがったな。
「だとしてもあんたとはいや」
「そんなこと言わないでよ〜」
メミーナは泣きながら私にすがりついてきた。
「一人は寂しいよ〜」
「知らないわよそんなの。それに、私は目的があるの」
「目的?」
異世界転生をしてしまったと判明したときに思いついた策。
この世界で生きる上でもっとも安全と安定が約束されたルートである。
「勇者を捜すのよ。私と同じような異世界から来たね。そいつの仲間になる。そうなれば一生安泰よ。なにせその手のやつは何でもできるチートとか持ってるはずだもの」
「異世界? ぷぷ、ファンタジーな頭してるね。かわいいんだ」
「お前の存在の方がファンタジーじゃ!」
こうして、メミーナが私についてくる形で二人旅がはじまってしまった。
メミーナは母を超えられるのか。私のくノ一設定が活かされるのはいつなのか。
それよりもまず、服を探そうと思います。




