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接近ッッ!!

 魔法を使うには高い精神力が必要らしい。

 それに比べて銃はいい。誰が使っても平等。

 まあ、銃の良さは一旦置いといて、とにかく、魔法はハートで使うものなのだとか。


 故に、リリィの修行のほとんどは、瞑想であった。


「むむむ……」


 部屋で座禅を組んでいるリリィに、声をかける。


「やってる〜?」


「ぬわ〜! も〜、せっかく集中してたのに〜」


「あはは、ごめん。できるようになったの? 察知の魔法ってやつは〜」


「やり方はママから聞いて覚えたけど、まだ自信ない……」


「ふーん。たしか、相手の考えが伝わる魔法だっけ? 試しに使ってみてよ」


 リリィは魔法のステッキを軽く振り、私に向けた。


「脳みそひーらけ」


 なかなか残酷なこと言うじゃん。


「むむむ……なにか数字思い浮かべてみて」


 じゃあ3。


「あ! 3でしょ!」


「おお! やるじゃん!」


「えへへ。もっと長い言葉でもいいよ」


 リリィのバーカ。


「む〜、も、もしかして、リリィは天才、とか?」


「……うん。その通り」


「やった!」


 精度は今一つのようである。

 ところで、私はガラブラたちが立てているドラゴノイド討伐計画について、何一つリリィに伝えていない。

 まだ細かく計画が練られているわけではないし、下手に話すのはリリィを急かすことになると思ったからだ。

 が、おそらく近いうちに話すだろう。いまのリリィは、私と二人でマイカを助けると考えている。でもそれは危険すぎる。

 正式にガラブラたちの仲間になっておいたほうが、この子の安全にも繋がるはずだ。


「計画って?」


「え?」


 リリィは興味津々といったキラキラした瞳で私を見つめた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 古城にあるもっとも広い寝室、かつてこの城の主である王が眠っていた部屋は、いまではテスカのものとなっていた。

 大きな窓からは日が差し、とても暖かい。

 テスカはこの部屋で日光浴をしながら昼寝をするのが好きだった。


 なのに、今日はなぜだかすんなり寝付けない。

 昨晩怒鳴りつけてしまった女が頭から離れないのだ。


 あの女はそこらのドラゴノイドとは違う。臆病でうじうじしていて、覇気がない。

 それに、どうして自分を襲ったやつの死を悼むのだ。理解できない。

 人間の意志が残っているからか?

 というより、人間そのもの。だが、普段は人の形をしているが、本当の姿は俺達と同じ。

 人であり、ドラゴノイドでもある。

 しかし餌ではなく、仲間とも言い難い。

 あいつと話していると、まるで未知の世界を覗いているような気持ちになる。

 不気味だが、それが少し、面白い。


 と、部屋にラズが入ってきた。


「お前も立ち会え」


「何に?」


「あの女に薬を使う。神経を侵せば意志も弱まるかもしれない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 牢獄、両手足をドラゴノイドたちに抑えられたマイカの前に、ラズが立った。


「お前のようなレアケースは、いまにしてみるとありがたいな。今後も似たような事例があっても、すぐに対処できる」


 小さなナイフに液体を塗った。


「まあ、これが成功すればの話だが」


 マイカが小さな悲鳴をあげる。


「な、なにをするんですか……」


「お前もいい加減楽になれ。……そうだな、魂は人間であっても、私たちの仲間になると忠誠を誓うならお前の意志を残してやってもいいぞ」


「そ、そんなの嫌です!」


「じゃあしょうがない」


 ラズがマイカに歩み寄る。

 それを離れたところから見ていたテスカの眉が、やや寄った。

 もし彼女の内に眠るドラゴンが目覚めたなら、マイカはどうなる。

 決まっている。魂が侵食され、完全に意志が消滅する。

 マイカがマイカでなくなるのだ。


「……待て」


 ラズがテスカの方を振り向く。

 何を言い出すのか待っているが、テスカの言葉は続かなかった。

 彼自身驚いているのだ。無意識にラズを止めたことを。


 マイカもテスカを見ていた。

 その視線が眩しくて、つい目をそらす。

 十数秒の沈黙の末、テスカは湧き上がる妙な感情を口にした。


「やめろ」


「何故だ、テスカ」


「いいからやめろ。そいつに手を出すな」


 直後、テスカはマイカを抑えていたドラゴノイドたちを瞬く間に殴り飛ばした。

 困惑の相好を見せるマイカを無視し、再度ラズに告げる。


「こいつに構うな」


 ラズは無表情のままじっとテスカを見つめ、頬を釣り上げた。


「変わったやつだな」


 ラズたちは大人しく、言われるがままに牢獄をあとにする。

 彼らを見送った後、テスカも去ろうとしたとき、マイカが引き止めた。


「あの!」


「なんだよ」


「あ、ありがとう、ございました!!」


「……」


 その瞬間、テスカの胸中がぐっと締め付けられ、同時に、生暖かい感触が脳へ上った。

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