調査ッッ!!
リリィは私と正反対で、グロとかホラーが大の苦手である。
映画の趣味も漫画の趣味も正反対。というか、リリィの好きな青春系や恋愛系を私が嫌いなので、なにかの作品について熱く語り合うなどやったことがない。
じゃあ二人で遊ぶときなにしているかといえば、とくに何もしない。
各々自由に時間を使い、共有したいことがあれば話しかける、みたいな感じである。
いまだってリリィは好きなファッション雑誌を黙って読んでいるし、私もハンドガンの手入れをしている。
なのでこうして、リリィの部屋で二人でいても、黙っている時間の方が長い。
それでも一緒にいたくなるのは、側にいるとリラックスできるから。
ふと視界を動かせばそこにいる。そんな空間が、二人とも好きなのだ。
が、そんな特別な時間に邪魔者が現れた。
私たちの保護者的存在の、奴隷商人おじさんである。
「ここにいたのかお前ら」
「あ、おじさん。久しぶりです!」
「なにしにきたの〜」
女の子の部屋にいきなりおっさんがやってきたわけだが、変質者の不法侵入ってわけではない。
おじさんはリリィの親戚なので気軽に家に入ってこれちゃうのだ。
「聞いたぞ〜、強くなるためにギルドの依頼受けてるんだってな」
にやにや笑いながら、おじさんが一枚の紙を取り出した。
「俺もちょうど依頼を出そうと思ってたのだ。受けてみるか?」
「え〜。どうせまた私ら騙して悪巧みするつもりなんでしょ〜」
「騙すだなんて人聞きが悪いな。まま、とにかく読んでみろ」
依頼書を手に取り、リリィと並んで内容を確認してみる。
「ドラゴン調査〜?」
「新種の中型ドラゴンの生態を調べる、ですか?」
おじさんは得意げに笑みを浮かべ、腕を組んだ。
「奴隷商売業界も不景気のいま、新たなビジネスとして希少動物売買をはじめることにしたのだ! お前らには先行して裏ルートで目撃証言を手に入れた未確認ドラゴンを調べてもらう。俺が捕まえやすくなるように」
「売買!? おじさん最低です!!」
「あ、やべ。違う違う。はじめるつもりだったけどやっぱり辞めたの。むしろ希少動物の将来のために保護したくて、生態調査をすることにしたのだ。もしこれが本当に新種だったら、お前ら教科書に載るぞ」
「嘘くさ〜」
「ど、どのみち噂の新種ドラゴンは人を襲ったりしてるみたいだし、人々や自然の生態系を守るためにもいち早く調査する必要があるのだ!!」
正直なところ、生き物を調べるのは興味がある。
動物のドキュメンタリー番組とかよく観るから。
売買には反対だが、ドラゴンを調査し、被害が広がらないようにするのは賛成である。
「どうする? リリィ?」
「う〜ん。……やってみよう! でもおじさん、悪いことしたら親戚だって刑務所にぶち込みますからね!!」
「わ、わかってるよ」
肝心なのは場所とメンバーである。
対象となる中型ドラゴンが目撃されたのは、ここから十数キロ離れた山岳地帯。
自然まみれの辺境の地に女子二人では不安しかない。
なので。
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「いいわよ。楽しそう」
シエリスを誘ったら見事OKしてくれた。
「あ、私も、参加します……」
マイカもOKだった。
「二人が来てくれたら心強いね、コノエちゃん」
「うーん。でもこういうのって、専門のプロがいるべきだよね〜。
おそるおそる、マイカが手を上げた。
「あの、私一応、ドラゴン学準一級持ってるんだけど……」
「いやでも、山に詳しい人とか、危険な虫に詳しい人とかもいるじゃん」
シエリスが口を挿む。
「大丈夫。私、故郷の国が山にあったから、山は詳しいの」
「う、うーん」
なら問題はない、かな?
あんまり頼りになる人増やしすぎても、修行の意味がなくなっちゃうし。
というわけで、『今度の休日旅行しようよ』みたいなテンションでドラゴン調査をはじめることになった。
虫除けスプレーめっちゃ持っていこう。
最強くノ一芹子の質問コーナー!!
この私がどんな質問にも答えちゃうよ!(エッチなの以外)
芹子のファン(35歳男性 無職)さん
「芹子ちゃんはキスしたことありますか? また、どんな男性が好みですか?」
回答「セクハラな質問には答えませーん」
芹子ラブ(41歳男性 自称自営業)さん
「住むところがないなら家にきませんか? また、今はどこを旅していますか? もしかしたら偶然出会えちゃうかも(笑)」
回答「プライバシーに関する質問には答えませーん」
せりこちゃんすき(5さい女の子 園児)
「死んだ先にあるのは無だと聞いたことがあります。ならば私たち人類は何を目標に生きればいいのですか? すべて無に帰すのなら、一生の間に積み上げるものなど無価値も同然じゃないでしょうか? 最強くノ一として、芹子さんのお考えをお聞かせください」
回答「知りません」




