ママッッ!!
突然の奴隷宣告! さすがにこれには警備隊からお叱りがあるかと思いきや、
「…………」
謎の無言! きさまら水バケツ持ってる以外に何が出来んだよ!
商人が全裸少女に迫る。少女は涙目で震えていた。
止めなくては! 私が善良な正義感に突き動かされかけたとき、
パカパパンパンパカパカン、パカパパンパンパカパカン
スマホの着信音が鳴り響いた。
すると、衣服がないはずの少女がどこからかスマホを取り出した。
なにゆえ異世界にスマホが? などとは一応疑問に感じたが、口にはしない。そういう雰囲気なのだ。
「あ、ママ? うん。ダイジョブダイジョブ。えへへ、心配しなくても平気だよ〜。隣町におつかいしてるだけなんだから〜。家で待っててよ〜」
まず、お前は確実に大丈夫じゃないしお前がいまいるのは街じゃなくて森だし、そもそもおつかい中に猫追いかけて焼夷弾で焼かれるんじゃない。
商人が苛立って少女を呼んだ。
「おいいつまで話してんだ!」
「ん? あぁ、ママごめん。なんかここ人が多くてさ〜」
などと申しつつ、少女は余った片手を顔の前で縦に伸ばし、「ごめんちょっと待ってて」的なポーズをした。
働き盛りのサラリーマンかあんたは。
やがて少女は通話を切ると、歯茎をむき出しにして吠えた。
「聞いてたか人非人ども! わたしゃね! 親友を人質にされながらも妹の結婚式に向かってる最中なんだよ!」
「そんな話ししてなかっただろ!」
まともなツッコミありがとう奴隷商人。
「うるせいやい! いいからさっさとそこのけそこのけえ!」
少女が強引に立ち去ろうとしたそのとき、
「あんたあああああ!!」
後方に生えていた木のてっぺんから、女性の声が轟いた。
少女がその声にビクついて振り返る。
小太りの中年女性が鬼の形相で少女を睨んでいた。
「メミーナあんた! おつかいはどうしたの!」
「ママァ!」
待て待て待て! あんたの母ちゃん隣町にいたんじゃないのか!
音速を超える速度で走ってきたってのかいババア!!
「よくもこの私に嘘ついたわね!」
「ち、違うのママ、ここにいる男たちが! 私を誘拐したの!」
「けっ、嘘つきなのはあんたの父さん譲りだね! このできそこない!」
「ひどい! 実の娘にひどいよママ!」
「ははは、傑作だねえ。まだ気づいてないのかい!?」
「え?」
まずい! たぶんこの流れはまずい!
誰かあの音速ババアの口を閉じろ!
「あんたは父さんの連れ子。私が腹痛めて産んだ子供じゃないんだよおおおお!!」
「ええええええええええええ!?!?!!!!!!??!??!」




