初プレイッッ!!
前回までのあらすじ!
私芹子、友達のネネと温泉に入ってたらえっちな話題になっちゃった!
私まだ14歳のピュアな乙女だから、よくわかんなくて大変!!
そんなこんなで鬼が来てネネがボコられました。
ネネはダメージが深刻なようで、立ち上がるのは困難そうであった。
「ネネ! クソ、こうなれば」
鬼に向かって駆け出す。
鬼は呆れ気味に鼻で笑い、殴りかかってきた。
「顔面潰してやるぜ!」
「乙女の顔に気安く触るんじゃあない!」
伸びてきた拳をかわし、足を払うと、鬼はバランスを崩し地面に倒れた。
「ぬっ!」
先程、ネネはラミーネを参考にすると言っていた。
性癖を真似る必要はないが、彼女の天才的なセンスは役に立つ。
私は起き上がろうとする鬼に飛びかかり、馬乗りの状態になる。
さらに鬼の手首を握り彼の拳を鬼自身の顔に向けさせ、鈍器で打つようにぶっ叩いた。
ラミーネがリュウトに使ったとされる技である。敵の肉体が硬いのなら、その硬さを利用してしまえばいい。
「うぐっ」
鬼は痛みを感じたようで、私はもう一発彼の拳で顔を叩き続けた。
抵抗の兆しとも言える殺気を感じたが、もう遅い。
三度目の殴打で鬼の拳が砕け、額から生えた角も一本折れる。
私は折れた角を掴むと、眼球ごと脳みそを貫いた。
やはり角も相当の硬さのようである。
「うぎゃああああ!!」
端で見ていたメミーナが作り笑顔を浮かべている。
「どっちが鬼なんだろ」
鬼は脳を破壊され死亡すると、その岩の肉体は砂となって空に舞った。
「ネネ、無事?」
「私は、なんとか……」
「ごめん、つい勢い余って殺しちゃった。お姉さんの手がかりがわかるかもしれなかったのに」
「いえ、おそらく手加減などすればこちらが死んでいたかもしれません」
ふとメミーナを見やると、難しい顔をして鬼のいた場所を見つめていた。
「どうしたのよ。考え事なんてらしくない」
「うーん。なんかいまの鬼、どっかで見たことある気がする」
「なんかのギャグで呼び寄せたとかじゃないの?」
「そうなのかなあ。……もしかして、前世で私と恋人同士だったとか」
「アハハハハ!! はじめてメミーナのジョークで笑っちゃった!」
「えへへ。やったあ!」
さっきまでの死闘が嘘だったかのようなほがらかムードに、ネネの緊張も解け微笑んだ。
直後、ネネの視線が折れてしまった木刀に視線に落ちる。
気高い意志と自信を失った喪失感を同時に抱えた者の顔を、このとき初めて目にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝。
私とネネ、メミーナの三人は、和室にてネネの父と対峙していた。
「昨晩は大変であったな、ネネ。まさかもう一度やってくるとは」
「いえ、私はまったく刃が立ちませんでした……」
落ち込むネネに、父が問う。
「弟子たちの報告によると、北西『足取り山』にて鬼を目撃した者がいたらしい。鬼は一体だけではない。お前たちが倒したのは、鬼の仲間の一人だろう。……それでも行くか、ネネ」
ネネは少し黙ると、強い眼差しで父を見つめた。
「もちろん。私の命に変えても、姉さんを救います」
「……いいだろう。ならば」
父は傍らに置いてあった刀を差し出した。
「使え。いつまでも木剣では心持たないだろう」
「しかし私は、すでに父上から頂いた刀を二本も折っているのですよ?」
「これをただの刀と侮るな」
かつて異国の地中より見つかった刀身があった。
長い年月、土の中で眠っていたにも関わらず決して錆びも刃こぼれもなく、新品同様であったその刃に、柄や鍔を装着して刀として成立させたのが、これらしい。
「この刀の名は自分で知れ。そうなれば真の力を発揮しよう」
なんだそのブ◯ーチみたいな設定。
「客人の二人にも、私から餞別を」
メミーナは特製の鎖帷子を、そして私には、
「自害用の薬だ」
「まったく笑えないんですけど」
「? 忍の者は捕まったら自害するものだと聞いたのだが?」
「なんで捕まる前提なんですか。昨日鬼倒したの私なんですけれども」
「でも捕まるかも知れないだろう?」
「もはや捕まってほしいんでしょあんた!」
なんであれこんなもんでも毒薬として使えるかもしれないので、一応もらっておく。
出発の直前、玄関で靴を履いている私に、ネネが話しかけてきた。
「昨晩、芹子さんが眠っている間に、試しにメミーナさんをペットにしてみました」
「えぇ……」
あの、これから鬼退治するってのに「変態プレイしました!」なんて告白聞きたくなかったんですけど。
しかもメミーナって、もはや付き合えれば誰でもいいですみたいなモテない成人男性みたいな選択するじゃん。
ネネは話の内容にまったく不釣り合いな真剣な眼差しで続けた。
「あれは違法薬物のようなものです」
「は?」
「たしかに何でもできちゃうんじゃなかってほど心が滾りますが、ハマっしまうと二度と抜け出せず人間として終わってしまう気がします」
遠回しにラミーネを人間失格認定したわね。
どう返答すればいいのか迷ったが、無性に私の胸が熱く興奮しはじめ、脳裏に問いが過ぎった。
逆に今度はネネがペットになってみたら?
などと口にしそうになったが、どうにか堪える。
私はまだ人間でいたいのだ。
「しかし万が一の場合は、やむを得ません。戦闘中でも、やるしか」
「……そりゃ敵はドン引きして隙ぐらい作れるかもね」
「?」
というわけで、ひょんなことから私たちの鬼退治の旅がはじまってしまったのでした。




