芹子VSリュウトッッ!!その2ッッ!!
慌てて火球を回避し、さらに間合いを離す。
騙し討ちのような蹴りのせいで、会場は大ブーイングの嵐だ。
「卑怯は褒め言葉よ。あいにく忍者なもんでね。……影分身の術!」
私をもう一人増やし、リュウトへ連続攻撃をしかけた。
が、おそらくチートとやらの力のせいか、いくら殴ってもまったく効いていない。
超人的な丈夫さである。
「うざってえぜ」
リュウトは私の動きを捉えると、分身の腹を殴り、本物の私を平手打ちした。
加えて火球を放ち、私は灼熱に焼かれながら吹き飛んだ。
「くそっ」
攻撃、防御、そのどちらも上限知らずのチート。
いざ戦ってみて、改めてこいつの怪物性を思い知る。
「まだ済まさねえよ。俺を怒らせたら責任は取れねえぜ?」
「ふん。怒りたいのはこっちよ。勝手に途中で試合に乱入して、コノエが取り乱しているうちにボコってさ、あんなの不公平じゃない」
「俺の仲間たちの想いを受け止めて、いても立ってもいられなくなったんだ」
「自分の仲間じゃないやつの都合は無視ってわけね。良い性格してるわ」
「……お前に言われたくないね」
「あらどうも。でも私はいつだって正直だから。あんたみたいなカマトトと違ってね」
「は?」
「単にちやほやされて周りの人間を下に見たいだけでしょ、本心は」
空に大きな魔法陣が浮かび上がった。
やがて魔法陣は目も眩むほど神々しく光り、極太のビームを発射した。
「やば!」
身代わりの術を使い、どうにか直撃を免れる。
これもリュウトの魔法なのか。
すると、リュウトはさらに数え切れないほどの魔法陣を、宙に出現させた。
「お前、さっさと消えろよ」
だったら、こっちも勝負に出るしかない。一か八かの策に身を投じてやる!
ビームの雨がリングに降り注ぐ。
その隙間を縫ってリュウトにダッシュし、
「多重影分身の術!!」
何十人にも増やした私と共に、リュウトに飛びついた。
数人がかりで取り押さえ、振りほどかれないよう、残りの私たちが体重をかける。
「なっ、なにを!」
「人間の不完全性を攻めるのよ!」
いくら体が硬くても、力持ちでも、打たれ強くても、絶対に鍛えられない場所がある。
絶対に強くできない箇所があるのだ!!
人を支える骨の隙間、つまりは、関節である!!
「うおおおおお!!」
リュウトの右腕を力いっぱい捻じり、肘の関節を外した。
「ぐわああああ!!」
「まだまだああ!!」
続いて左肩を外し、リュウトの両腕を使い物にならなくする。
しかし、これで終わりではない。まだあるのだ! 人体の欠点!
分身の私が、リュウトと口を重ねる(全国の私のファンの皆さま安心してください、あくまで私の分身です)。
そして、息を一気に吸い込んで、リュウトの肺から一切の空気を奪い取った!!
「っ!」
リュウトの視点が揺れ、意識を失いかける。
これで気絶しないあたり、やはりチートだ。
だが、こいつにはもう反撃はできない。
呼吸困難を起こしながら、リュウトが囁く。
「ち、ちく、しょ」
「もっと人の倒し方を勉強しておきなさい。ま、貰った力だけでイキってるあんたにゃあ無理でしょうけど」
止めのヘッドロックで頸動脈を圧迫し、完全に意識を落とした。
まさかまさかの展開に、会場が静まる。
そのなかで、観客席にいるネネ、リリィちゃん、コノエ、ジェルリさんが私に拍手を送った。
私は湧き上がる高揚感に従い、両手を天に伸ばした。
「よっしゃあああああ!!!!」
残るは一人。私の闘志は、これ以上ないほど熱く燃えていた。




