芹子VSリュウトッッ!!
試合終了後、ラミーネは気絶しているメミーナに首輪を付け、ずるずると引きずりながら退場しだした。
「ちょっとあんた! なにやってんのよ!」
あまりの仕打ちに激昂してしまい、ラミーネに詰め寄る。
「慌てないで、あなたのことは決勝で躾けるから待ってなさい。……勝ってちょうだいね。男と戦っても面白くないから」
「メミーナを離しなさい!」
「なぜ? 私の妹なんだから、私がどうしようと勝手でしょう?」
「ふざけないで!」
「文句があるのなら、私を倒せばいいじゃない。こう見えて負けたら素直に従う性格よ」
ならいますぐ! と殴ってしまいたかったが、本能に静止された。
勝てる自信がなかったのだ。
高確率で返り討ちにされると、私の危機察知能力が告げていた。
それがたまらなく悔しくて、歯を食いしばりながらラミーネの背中を見送った。
「続いて準決勝第二試合!」
やるせない気持ちを抱えたまま、私はリュウトの前に立った。
私ではラミーネに勝てない。結局私たち三人は誰も優勝できず、奴隷になってしまうのだ。
助かる方法はないものか、そればかり考えてしまう。
リュウトが私を見下ろした。
「シエリスがお前を恨んでるぜ。あいつのぶんまで、痛めつけてやらないとなあ」
もし、ラミーネに勝てる人物がいるとすれば、こいつしかいないだろうか。
そうだ。私はもともとこいつの仲間になりに来たのだ。
助けてもらおう。悲劇のヒロインになって、物語の主人公様に救助してもらうべきである。
「東京都渋谷区」
「……え?」
「私の地元。芹子という名前で気づかなかった? 私も異世界転生者よ」
気づけば私は、自身の身の上を語っていた。
不慮の事故で亡くなったこと、よりにもよって奴隷少女に転生したこと、メミーナたちに出会ったこと、そして、現在置かれている窮状を吐露した。
真実を知ったリュウトが哀れみの眼差しを向ける。
「そっか、キミも大変だったんだね」
頼んでもいないのに私の頭をぽんぽんと叩いてくる。
「協力するよ。困っている人はほっとけないからさ。それに……」
リュウトは苦笑しながら観客たちを見渡した。
「この世界って俺たちの世界に比べて文明が遅れてるだろ? 当たり前のようなこといちいち驚かれるのも参ってるんだ。キミがいるとそのぶんこの世界の人たちに文明を教えてあげられる」
いちいち上から目線な物言いが気に食わないが、ぐっと堪えた。
私たちの声は周りに聞こえないが、どうやら状況を察したのか、シエリスがリュウトを褒め称えた。
「さすが勇者くん! 言葉だけで相手を倒したのね!」
師匠のクローノや弟子のケイスも同調する。
「やはりあやつには敵わんな……」
「すげーぜリュウトさん!!」
仲間になれば、私もこいつらのようにリュウトの取り巻きになるのか。
心から崇拝できるなら喜んで褒め称えるさ。
でも、私は、どちらかといえばこいつが嫌いである。
こいつがジェルリさんを一方的に目の敵にしたように、私もこの男が気に食わない。
だが、それでみんな助かるのなら、私の意思なんて……。
リュウトが私を抱きしめた。
「キミとキミの友達を奴隷から開放しよう。これからは俺の側にいれば大丈夫だ。なんせ俺には、神から貰ったチートがあるから」
「……」
たぶん、私はあのまま元の世界で大人になっても、就活に苦しんだのだろう。
気に入られるために嘘をつき、自分を殺す。自ら個人を殺す自殺行為。
そんなもの耐えられない性格なのだと、いまはっきりと理解した。
嫌いなやつに従うのなら、奴隷と変わらないじゃないか!!
どっちに転んでも奴隷少女に逆戻りなら、最後まで戦ってやる!
倒してやるわよラミーネなんて、助けてやるわよネネとメミーナを!
私は、最強くノ一だ!!
「離れろ痴漢野郎」
「へ?」
リュウトの抱擁を振りほどき、彼の顔面を蹴り飛ばした。
「自分より下のやつ見つけてイキってんじゃねえ!!」
リュウトは舌打ちをして不気味に笑った。
「あの卑怯なババアと一緒だな。こういう悪い子ちゃんは、たっぷりお仕置きしてやらねえとなあ」
「はん! 女は心変わりが激しいのよ!!」
リュウトが火球を撃った。




