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ラミーネVSメミーナッッ!!

 準々決勝が終わり、現在残っている選手は4人。

 私、メミーナ、ラミーネ、そしてリュウト。

 絶対予測のラミーネとチート持ちのリュウトと、優勝の道に立ちふさがる敵は侮れない。


 そしてついに、不穏な姉妹対決が幕を開ける。


「準決勝第一試合、似ているのは見た目と爆乳くらい! ラミーネVSメミーナ!!」


 微笑むラミーネに対し、メミーナは敵意まんまんと言った具合で、拳を握って彼女を睨んでいた。


「まさか、暇つぶしに大会に参加してみたら、メミーナに会えるなんてね」


「わたしゃ会いたくなかったわい」


「そういえば、母さんに叱られたようね」


「いいもん。あんな人、お母さんじゃない!」


「あっそう。私も母さんは嫌いだけど、あなたが家にいないのは寂しいわ」


「帰りたくないよ! 無理やり犬の首輪つけてくるんだもん!」


「だってあなたは私の妹兼ペットだもの。さ、お家に帰るわよ」


 ラミーネが一歩踏み出すと、メミーナはバズーカを取り出した。


「くらえい! 総合誠実格闘術超自由形ミニマム級『モグラ叩き!』」


 弾を発射すると、ラミーネの足元からモグラが出てきた。


「やっと、やっと地上に出られたぜ。これで俺は自由だ〜!」


 と喜びながら、モグラは無残にバズーカ砲の餌食となって吹っ飛んだ。

 モグラが出てきた意味なんだよと内心でツッコみつつ、爆炎が収まるの見守る。

 爆発に巻き込まれたラミーネとて無事では済まないはずだ。


 が、しかし、爆炎と立ち込める煙が消えるとそこに、ラミーネの姿はなかった。

 よく辺りを見渡せば、リングの壁に背を預け、腕を組んでいる。


 メミーナは攻撃が不発に終わり、悔しそうに口を歪ませる。


「こうなったら、御輿で勝負するしかねえ!」


 来た! メミーナお得意のフィールド干渉系攻撃。

 なんでもありの空間にしてしまう理不尽フィールドが形成されれば、ラミーネとて予想は不可能。


 すると、入場口から御輿を担いでいるお祭り男たちが乱入してきた。

 その中にメミーナが紛れ、一緒に御輿を担ぎ出す。


「……はぁ」


 ラミーネは深くため息をつくと、呆れ気味にメミーナを見やった。


「お祭り男たちが楽しそうに御輿を担いでいる最中、お祭り男の一人の首元に変なタトゥーを発見し、切れたあなたが御輿を私に投げつける、でしょ?」


「……」


 メミーナはお祭り男たちと共に硬直した。

 まさかあの女、ギャグまで予想できるっていうの?

 ていうかボケを見破られるなんて想像したくもないほど恥ずかしい。私の共感性羞恥が刺激されて鳥肌がゾワゾワである。


 途端、展開を見透かされたお祭り男たちが切れだす。


「こんなコントやってられるかよ!」


「おいどこ行くんだよお前!」


「触んじゃねえ!」


 一発触発の雰囲気に、メミーナが割って入る。


「ちょっと真面目にやりなさいよ男子〜」


「うるせえ! 女はすっこんでろ!」


 お祭り男たちが乱闘を始めると、ラミーネはゆっくりと歩き出した。


「乱闘後、何故かメミーナ一人がボコボコにされる。『えぇ〜!』と第三者のリアクションの後、いきなり私の足元が爆発。『なんで!?』というツッコみが入りこのギャグは終了」


 メミーナやお祭り男たちは困惑し、顔を見合わせた。


「じゃ、俺たちはこれで」


 逃げるようにお祭り男たちは立ち去り、リングには姉妹だけが残る。


 一歩、また一歩、ラミーネが近づくたび、メミーナは後ろに下がった。


「何年、あなたの姉をやっていると思っているの? あなたのボケパターンなんてすべてお見通しなのよ」


 まずい。これはまずいわ。メミーナのおふざけパワーよりラミーネのシリアスパワーが上回っている。

 『あの人は私のキャラを殺すんだよ』、メミーナの台詞をいまになって噛みしめる。

 メミーナは、ラミーネと相性が悪すぎる!!


 メミーナが叫んだ。


「お母さんもお姉ちゃんも私を見下して! 嫌いならほっといてよ!!」


 このバカ! あんたまでシリアスになってどうするのよ!

 真面目になればなるほどあんたのキャラの力は失われるってのに!


「嫌いじゃないわ。大好きよ。でもね、あなたが私を笑顔にする方法はふざけることじゃない。私の犬になることよ」


「シンプルに怖いよ!」


「でも、お母さんから守ってあげられるわ」


「?」


「私は、私以外の人間が私のペットを怯えさせるのが気に食わないの。だから、メミーナのこともちゃんと守ってあげるわ。あなたのお姉ちゃんだもの」


 ラミーネは優しく微笑み、両腕を広げた。


「もう、メミーナだけおかず一品少なかったり、寝てるときにクーラー消されたりしないのよ」


 メミーナが俯く。

 彼女の家庭環境を、私は知らない。

 ただ母親と姉がイカれているということしか。

 もしや私が思っている以上に、メミーナは母親にコンプレックスを抱いているのだろうか。


「さあ、こっちにきなさい」


 言われるがままメミーナが歩き出す。

 ダメだ! 屈指ちゃダメよメミーナ。離れなさい! ソーシャルディスタンス意識しなさい!!


 メミーナがラミーネの側に立ち、彼女の抱擁を受け入れる。

 決着か。行き場のない虚しさを吐き出したとき、メミーナはにやりと唇を釣り上げた。


「でもわたしゃ知ってるよ。お姉ちゃんもお母さん怖がってるじゃん」


「……は?」


「お母さんは私の力で倒すんだい! 喰らえい!」


 メミーナはラミーネの腰をしっかり抱きしめ、後ろに仰け反った。

 シリアスキャラが喰らったら絵面だけでちょっと笑えるプロレス技、ジャーマンスープレックスだあ!!!!


 さすがのラミーネも不意を突かれたようで、頭部から勢いよく地面に激突する。

 大会初のラミーネへのダメージ!! やっちまえメミーナ!! イケイケドンドン!!


「どうだいお姉ちゃん!」


「……少し会わなかっただけでもう躾を忘れてしまったのね」


 ラミーネは横たわりながら、メミーナに足払いをして転ばせる。


「恐怖を思い出させてあげるわ。私が、私だけが母さんから教わった体術で」


 ラミーネが天高く舞った。

 片足をピンと伸ばし、まるで流星の如き速度で落下する究極の足技。

 あぁ、あれこそは、あれこそはまさしく、音速ババアが私とメミーナにぶつけた必殺技。

 天翔道隕石蹴りッッ!!


 そのとき、瞬きすら許されぬ僅かな時間の間で、メミーナは私の方を向いてつぶやいた。


「ごめんね」


 落下とともに凄まじい轟音が響き、リングに巨大なクレーターを生み出す。

 その中央には、悠然と立つラミーネと、横たわるメミーナのみがいる。


 準決勝第一試合の勝者は、決勝進出したのは、絶対予測と天翔道を兼ね備えたサイコパス、ラミーネに決定した。

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