芹子VSガラブラッッ!!
メミーナが順調に駒を進めてくれた。
ネネは敗北してしまったため、大会終了後プロモーター契約によって奴隷になってしまう。
しかし、私かメミーナが優勝し、負債分を賞金で払えば、彼女は助かるのだ。
そのためには、私も勝たなければならない。
「準々決勝第三試合、わがまま身軽ガール芹子VS豪腕巨人ガラブラ!!」
誰がわがままじゃ。
私はローブで腕を隠すことなく、最初からマイクロビキニ姿で堂々と入場した。バレているのなら、隠すほうが恥ずかしい。
それにしたって私、いつまでマイクロビキニ着てればいいのだろう。
「試合開始!」
あの怪力で殴られたらひとたまりもない。
私は距離を取り、手裏剣を連続して投げた。
だが、ガラブラの逞しい筋肉にわずかな切り傷をつけるだけで、刺さることなく地面に落ちてしまう。
「ははは、俺が怖いか」
余裕綽々といった具合で、ガラブラはゆっくりと近づいてくる。
真正面からでは太刀打ちできない強敵ならば、作戦を練るしかない。
一応私、くノ一の中でも頭脳派と恐れられていましたのよ。
「忍法、目くらましの術!」
お手製の閃光弾を投げつけ、ガラブラの視界を白く染めた。
ちなみに、お前さっきからどこからアイテム出してんの? という疑問には一切返答しないのであしからず。
ガラブラの視力を奪った隙きに素早く彼の肩に乗り、両耳を思いっきり引っ叩いた。
耳から垂れる血が、鼓膜が破れたことを鮮明に表している。
視界はすぐに戻るだろうが、聴力は試合中戻ることはなくなった。
「このガキ!」
ガラブラに足を捕まれ、地面に叩きつけられる。
声も出ないほどの痛みが全身を駆ける。
内蔵もシェイクされ、肺も圧迫されたため、しばらく呼吸が困難になるだろう。
「くっ!」
必死にガラブラから離れ、様子を伺う。
観客席の声が聞こえず聴力消失を受け入れざるを得ないのか、彼の形相は動揺と怒りにみるみる満ちていった。
「殺してやる……」
そのとき、私の視界に、観客席で私を応援してくれているリリィちゃんが映った。
「はぁ……はぁ……やれるもんなら……やってみなさい!」
負けられない。リリィちゃんのためにも、私は負けられないのだ!
そう、あれは数年前のこと。
「なにリリィちゃん、話って?」
「あの、私……芹子さんが好きです!」
「ふ、知ってたよ」
「ほ、本当!?」
「キミに優勝をプレゼントする。それが二人の結婚式さ」
「きゅん♡」
的なことがあったのだ(あってくれ)。
この妄想を現実にするためにも、こんな筋肉バカに負けてたまるかい!
「影分身の術!」
もう一人の私を生み出し、ガラブラへ特攻を仕掛ける。
「死ににきたか!」
ガラブラが偽物の私を殴った。
その間に彼の背後に回り込む。
「じゃあこっちが本物か!」
巨体にしては意外と素早い動作で、後ろにいた私に裏拳を炸裂させた。
が、それは、
「なに? 枕!?」
身代わりの術で設置した枕である。
「こっちよ!」
ガラブラが正面に立つ私を見やった瞬間、忍法男刈りによって、私は彼のゴールデンボールを蹴り上げた!
「うぐっ!」
さらに壮絶な痛み(私は経験ないけど)に悶えるガラブラの顎を横からビンタし、脳震とうをおこさせた。
ガラブラは完全に脳が揺らされ、鈍い音を立てながら地面に横たわった。
とにかく急所を攻めまくる。これぞ忍者の戦い方である!!
「勝者、芹子!」
入場口に戻ろうとしたとき、私はふと勇者リュウトがいる来賓席に目をやった。
忌々しそうに私を睨むシエリスの肩を、リュウトが優しく抱いている。
負けた腹いせでリュウトに私のことをボロクソ言っていないといいのだが……。




