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マイカVSメミーナッッ!!(告知あり)

 ネネは強がりの作り笑いで「一人にしてください」と告げ、控室に戻ってしまった。

 こんなとき、なんと声をかけたものか。元気づける忍術があればどれほどいいか。


「続いて準々決勝第二回戦、ドラゴンガールマイカVSメミーナアアア!!」


 おどおどとした足取りでマイカが入場する。

 一方メミーナも、どこか深刻そうな顔つきであった。

 それもそうだろう。怖がっていた姉が、仲間をさんざん弄んで勝ったのだ。いくらメミーナといえど、精神的にくるものがあるのだろう。


「試合開始!」


 マイカは全身に気合を入れ、ドラゴンの力を開放した。

 二本の角に真っ赤な瞳。そして化け物のような両手。

 唯一第一回戦との違いは、表情に理性が宿っていることだ。

 どうやら、彼女はドラゴンの力を自由にコントロールできるようになったらしい。


「いきます」


 マイカは突撃し、メミーナにタックルをかました。

 すぐさま立ち上がったメミーナの肩を、鋭い爪で切り裂く。


「こ、降参してください。あんまり、殴る蹴るは好きじゃないんです」


「くっ」


 メミーナは痛みに耐えながら、ファイティングポーズを構えた。

 じりじりと間合いを詰め、三発ほどジャブを決めるがマイカにダメージはない。

 いやいや、なに正攻法の攻撃してんのよあんた。お得意のギャグ拳法はどうしたっての。

 私はいても立ってもいられず、大声で叫んだ。


「ちょっとメミーナ! もっと不真面目に戦いなさいよ!!」


 それを聞いて、メミーナは苦虫を噛み潰したかのように顔を歪めた。


「浮かばないんだよ……」


「え? なに?」


「ギャグが湧き出てこないんだよーっ!」


 な、なんですって!? まさかメミーナのやつ、さっきの試合のせいでテンション下がりまくって、ふざけられなくなったっての!?

 どうすんのよ! あんたからギャグ拳法取ったらただの頭イカレポンチの女じゃない!!

 将来どうすんの? みんな勉強してるのにあんただけ遊んでばっかで、その遊びもやらなくなって、どうやって食ってくつもり? ちゃんと先のこと考えてるの?


「隙きあり!」


 マイカの蹴りが炸裂し、メミーナは蹲った。

 あの臆病なマイカは姉のおかげでこんなにも立派な戦士に成長したってのに、あんたは姉のせいで退化しちゃダメでしょ!


 マイカの一撃が決まり、観客席にいた彼女の姉、レンカが声援を送った。


「マイカ、そのまま決めちゃえ〜!」


「うん! 頑張るね、お姉ちゃん!!」


 微笑ましい姉妹愛を見つめながら、メミーナが立ち上がる。


「いいよねマイカちゃんは。普通のお姉ちゃんで」


「ふ、普通じゃありません! 世界で一番優しいお姉ちゃんです!!」


「それに比べて私と来たら、お母さんはアレだし、お姉ちゃんもアレだし」


 言っとくけどあんたもアレだからね。


「私って、なんて不幸なんだ……ぐふっ!」


 自虐の最中、メミーナは突然吐血した!


「だ、ダメだ、精神的ダメージが肉体に影響されちゃう!」


 マイカは対戦相手の異常に不安を覚え、背中をさすった。


「大丈夫ですよ。ちゃんと話し合えばお姉ちゃんと仲良くなれます。私達姉妹のように!」


「ぐえっ!」


 無自覚幸せ自慢がメミーナの腹部に打撃のようなダメージを与えた!

 まずい、攻撃手段が封じられている上に弱点まで増えたんじゃ、いよいよ本当にメミーナが負けちゃう!


 メミーナは負けじと、マイカを睨んだ。


「でもマイカちゃん呪われてんじゃん」


「ぐわっ!」


 思わぬ反撃にマイカは仰け反った。

 これは、まさかマイカにも不幸が肉体ダメージになっているのか。

 つまり、メミーナはなんだかんだギャグフィールドを形成したってわけね!


 マイカはコンプレックスを刺激され、眉間にシワを寄せた。


「でも、私の家庭は温かいし、お母さんは毎週ハンバーグ作ってくれるし、お姉ちゃんは一緒に寝てくれるし、学校でも私に優しい友達いるし、昨日2万ギル入ってる財布拾ったし、男子にだって告白されたことあるんですから!!」


「うぎゃあああああ!!」


 メミーナを焼かれたような痛みに苦しみ、地に伏した。

 たぶん、マイカが挙げた幸福を、メミーナは一つたりとも経験したことないんだろうな。

 家族は冷たくて友達もいない。結構な不幸属性である。

 でもね、そんなもんよメミーナ。変人や天才ってのはね、いつの世も理解されぬもの。

 出る杭ならいっそ、突き抜ければいいのよ!!


 メミーナは悔し涙を浮かべ、歯ぎしりしながらマイカを見上げた。


「ゆ、許さん。キサマだけは決して許さん。私が教えてやる。本当の幸せとはなにか、その身に焼き付けてやるわ!!」





※告知です※

この度「最強くノ一である私が奴隷少女という身分に転生したあげく頭イカレポンチな女と最強の格闘家を目指すはめになってしまった。」が書籍化&ドラマCD化することになりました!!

編集社様からドラマCDの告知を書いてほしいと頼まれましたので、ボツ案を一部記載させていただきます。


メミーナ「セリちゃん大変たいへ〜ん!」

芹子「なにようるさいわね」

メミーナ「私たちの冒険が本とドラマCDになるんだって!」

芹子「初回限定版には原作者監修の設定資料集とポストカードがついてくるんでしょ?」

メミーナ「なんだ知ってたのか〜。これは5億冊買わないとね!」


メミーナ&芹子「『最強くノ一である私が奴隷少女という身分に転生したあげく頭イカレポンチな女と最強の格闘家を目指すはめになってしまった。』単行本、ドラマCD、予約受付中!!」


※以上、告知でした※




「どうだ、これが本当の『幸福』でーいっ!!」


「きゃあああああああ!!!!」


 私を巻き込んでの幸福妄想激炸裂!! シェンロンだって叶えちゃくれないドリームであるが、こうも目の前に叩きつけられるとその威力は桁外れだ!!

 (みなさまごめんなさい。告知は嘘です。嘘っぱちです。この物語は一生ネットの奥底に埋まっておくべきなのです。メミーナを好きにしていいので許してください)


「か、勝てない……」


 マイカは力尽き、メミーナは天高く拳を突き上げた。

 よかった。一時は心配したけれど、メミーナはここぞという場面できちちんと決めてくれる。

 準決勝では姉と戦うけど、きっと大丈夫よね。

本当にごめんなさい。

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