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ネネVSラミーネッッ!!

 おかしいなー。私って願望が尽く達成されない呪いにでもかかってるのかもしれない。

 予定では気苦労が絶えないけどわんぱくわいわいワールドでなんだかんだ楽しい冒険をするはずだったのに、いつのまにかギャグも減ってひたすら真面目にバトってる。

 おっかしいなー。


 第一回戦がすべて終わり、残った8人の選手たちによる第二回戦がはじまる。

 その最初の試合は、私のずっ友ネネと、メミーナの姉のラミーネである。


「ネネ、なにしてるの?」


 通路の真ん中で、ネネは自分の刀をじっと見つめていた。


「精神統一、ですかね」


「そ、そうなの。試合、頑張ってね」


「はい」


 ラミーネはとても強いという印象があるだけで、格闘スタイルも、得意な戦術もわからない。

 ネネの胸中はきっと、未知なる強敵への緊張に満たされているに違いない。

 私の心配の眼差しを察したのか、ネネが笑った。


「大丈夫です。この刀に誓って、負けません」


「特別な刀なの?」


「父がくれたものです。ですが、父から貰った刀は、これで二本目。……一本目のように折られないよう、私は強くなってきた。だから」


 遠い日の悔しさを押し殺すよう、ネネは刀を鞘に納め、リングへ向かった。

 諦めました。もうシリアス路線を受け入れます。茶化しません。


「準々決勝第一試合!! 刀ガールネネVS謎の格闘家、ラミーネ!!」


 私は入場口でネネを見守っていることにしたのが、その隣にメミーナが来ない。

 まったく、ネネは仲間なんだから応援しにきなさいよ。

 と思ったら、いました。観客に紛れていました。

 いいですよいいですよ。私かてあんたと並んで応援などしたくないわい。


「試合開始!」


 ネネが刀を抜く。

 すると反対にラミーネは、ふふっと笑みを零しながら目を閉じた。


「なっ! 試合放棄のつもりですか!?」


「あなたはメミーナの友達のようね。かわいがってあげる」


「ならば!」


 ネネが斬りかかる。

 が、目をつむっていたはずのラミーネは難なく白刃を回避した!

 続けてネネが何度も刀を振る。

 しかしそのどれも、ラミーネの肌を切り裂くことはなかった。


「な、なぜ……。だったら……」


 ネネは刀を納め、腰に差した。

 完全なる居合への形である。

 もし、ラミーネの回避がネネの殺気を感じることに起因するならば、居合なら、高速の斬撃なら、殺気を感じてから避けるのは間に合わないはずなのだ。


 数秒、数十秒と、ネネは間を置いた。

 静寂の膠着状態のなかでも、ラミーネは決してまぶたを開けず、薄ら笑いを浮かべている。

 そして、


「ふっ!」


 抜刀による超高速の斬撃が繰り出された!

 煌めく刃がラミーネに触れる。その瞬間、


「おりこうね」


 ネネの刀を、ラミーネは人差し指と親指で掴んだ。


「そ、そんな!」


 ゆっくりと、怪しい眼差しがネネを捉えた。


「その絶望した顔、可愛いわね。家で飼いたいわ」


「いったい、どうして……」


「なにも不思議に思うことじゃないのよ。たとえば、元気な犬に餌を見せたら、全速力で走ってくるって誰だって予想できるのと一緒」


「私の攻撃をぜんぶ、予想したとでも?」


 予想だけであれほどの攻撃を避けきれるものなのか。まさか初戦で、観客席からの不意打ちの矢を受け止めたのも、予想できたからってこと?


「私は強くなるために多くの、大勢の格闘家と戦ってきた。それが予知の如き予測を可能にしたのよ。あなたもそうとう鍛えているみたいだけど、私とじゃあ、経験が段違いのようね」


「ふざけるな!」


 ネネはがむしゃらに刀を振るが、すべて無意味な素振りとなって終わる。

 もはや見ていられないほどに、二人の力の差は歴然だった。


「うおおおおお!!」


 悔しさの涙を浮かべながら、ネネは横一閃に薙いだ。

 同時、ラミーネはわずかに砂埃を巻き上げ、姿を消した。

 見失ったネネがキョロキョロと辺りを見渡すと、その背後にラミーネが現れる。

 ネネが咄嗟に突きを仕掛けると、ラミーネはその刀を掴み、


「可愛い女の子をいじめてる時間が一番楽しいわ」


 刀を折り、続けざまにネネを蹴り飛ばした。

 ネネは何度も地面に打ち付けられながらリングの壁際まで転がり、気絶した。


 あまりに一方的で、超人めいたラミーネの勝利を、観客たちは声援を送るのを忘れ息を呑んで見つめていた。


「しょ、勝者、ラミーネエエエエ!!」


 あのネネが手も足も出なかった。

 あれが、メミーナの姉。彼女とはまるで正反対の本物の武人。

 あいつとは違う意味で頭がおかしいようですけども。

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