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第六試合ッッ!!

「芹子さん、やりましたね」


「ありがとう、ネネ」


「まさかあんなに強いとは。決勝で戦うのが楽しみです」


 入場口でネネと勝利を分かち合っているが、メミーナはいない。

 それがなんだか癪に感じる。

 まさか、この私が寂しさを覚えてしまうとは。


「続いて第六試合、選手入場!!」


 彼を一言で表現するなら、巨漢である。

 とにかく、でかい。2メートル以上は確実にあるだろう。

 その得意な骨格を包むのは分厚い筋肉。

 そう、とどのつまりは、パワー系筋肉キャラである。


「やってきました前回準優勝者、握力800キロ!! 拳一つで山を渓谷に変えたとの逸話のある怪力男!! 好きな肉は鶏肉、お母さんの名前はプリミ。お父さんは保険会社勤務。ペットの犬はうんこしながら吠えまくる! ガラブラ・ゴブーラアアアア!!」


 個人情報漏れ過ぎである。

 嫌だよ、戦いながら「そっかあ、こいつの父さん保険会社勤務なのかあ」とか考えたくないよ。


「対するは!」


 その男を一言で表現するなら、毛である。

 全身毛むくじゃら、というか、毛の塊であった。

 一瞬獣かなにかと勘違いするほどに、毛なのだ。


「かつては美少年とちやほやされていたボクサーがなぜこんな姿に!? ボストンンン!!!」


 巨漢のガラブラが勇者を指差した。次はお前だ、というジェスチャーか。

 すでにこの試合を勝ったつもりらしい。


「試合開始!」


 合図と共に、ガラブラは地面を殴りつけた。

 大地が揺れ、小さなクレーターができあがる。


「さあてどうする毛むくじゃら。死にたくねえなら降参しな。優しさで言ってるんだぜ」


 それに対しボストンは、ただ不敵に笑うのみである。


「ああそうかよ!」


 先制攻撃。ガラブラの拳がボストンの胸部に直撃する!!

 いや、していない。おかしな話だが、当たっているのにダメージがないのだ。

 眉をひそめるガラブラに、ボストンはクククと喉を鳴らした。


「これぞ我が最強の鎧。柔さでもって力を分散させる!!」


 ガラブラの攻撃を無力化させたのは、尋常ではない毛の量であったのだ。

 ガラブラは続けざまに連続パンチを繰り出すが、まるで通用していない。

 しかし、全身がクッションならばボストン自身の攻撃も威力が激減するのではないか? そもそも、地を抉る怪力を、本当に毛で無効化できるものなのか。


 その二つの疑問が、ボストンが繰り出した一撃によって解消される。


「ぐうっ!」


 ボストンの拳がガラブラの腹を突いた。


「ふふ、解せないのも無理はない。だが、これぞ我が拳法の真髄。自分の毛の硬度を自在に操ることで、鋼鉄のパンチを放つことが可能なのだ!!」


 通常とは程遠い特殊な毛こそ、彼の武器であり盾。

 たとえば、矛盾するが硬く、そして柔らかく毛の形質を変えれば、力の分散も相まって、超パワーを消失できるのだろう。


 ボストンが追撃の蹴りを食らわせた。


「十年前、俺はお前のような筋肉自慢に負けて、山で修行をしたのだよ。そこで俺は、獣が獣毛によって身を守っているのを改めて知った。人間が捨てた毛の力。それを俺は手に入れたのだ!」


 ……いやいや、気になるのは毛の力に気づいた経緯じゃなくて、毛の硬さを変える技術を習得した方法だから。

 全国の女の子に教えたら神になれるよ。髪だけに。


 ガラブラは大仰にため息をつき、ボストンに近づいた。


「めんどくせえやつだぜ」


 すると、ガラブラはボストンの胸毛を鷲掴みにし、


「邪魔なら消すまでだ!」


 むしり取ったのだ!


「ぎゃあああああ!!!!」


 綺麗に脱毛された胸板へ、ガラブラの恐怖の一発!!

 その後のボストンの描写はコンプラを考慮して割愛するが、酸鼻なものであった。

 まさにパワー系ならではの力技による勝利。

 次にあいつと戦うの、私かよ……。

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