Aブロックを終えてッッ!!
第四試合はメミーナの勝利で終わった。
メミーナは意気揚々と、るんるんスキップで入場口まで戻ってくる。
「どうよセリ――」
最後まで聞くことなく、私は突発的にリングの真ん中で伸びているリリィちゃんへ駆け寄った。
「リリィちゃん平気? 大丈夫?」
「ふぇ〜、頭がくらくらします〜」
「人工呼吸!? 人工呼吸すればいいのね!?」
「それは大丈夫です〜」
リリィちゃんは医務係に運ばれ、私はふと入場口を見やった。
こちらをジトーっと見つめている、メミーナがいた。
まるで「あーはいはいそうですかそうですか」とでも言いたげに何度も頷くなり、彼女が立ち去っていく。
「やっべ」
せっかく喧嘩中の構ってちゃんに嬉しいことがあったのに、一緒に喜んであげなかったあげく、負けた側の応援していたとあれば、事態は悪化するに決まっている。
困ったな。まさかあんな些細な原因で、こんなにも深い溝ができあがってしまうなんて想像もしていなかった。
最初の四試合、つまりAブロックが終わり、少しの休憩時間に入った。
急いでメミーナに謝りに行ったが、あいつは露骨に私を避けて聞く耳を持たなかった。
どうしようもなく、私はふと外の空気を吸おうと闘技場から近い公園に立ち寄ってみることにした。
すると、公園の隅でネネが真剣を素振りしているのが目に入った。
「ネネ、まだ試合は残っているのに体力使っていいの?」
「おや芹子さん。私的には、第一試合がウォーミングアップにもならなかったので、体を温めているのです」
「いまから? まだBブロックが残ってるのに」
ネネは苦い顔で素振りをやめた。
「正直、動いていないと落ち着かないのです。第二回戦、私はメミーナさんのお姉さんと戦うから」
「ネネなら勝てるよ!」
「……そのつもりで挑むつもりですが」
なんとも歯切れの悪い返答であった。
「あの人から溢れるオーラ、尋常じゃありません。仮に勝てたとしても、Bブロックから這い上がってくる人はどんな化け物か……」
「え、私とネネ、もしくはメミーナが決勝で戦う予定でいいじゃない」
ネネは作り笑いを浮かべ、闘技場へ戻った。
たしかに、どんな怪物が残っているのか見当もつかない。
しかし不安に怯えて負けることを考えながら試合に望む格闘家などいないだろうし、そもそも意味がない。
休憩明けにはBブロックの第一回戦。いよいよ、私の出番だ。




