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第三試合ッッ!!

 第三試合、リングには二人の女性が相対していた。

 似た面持ちの二人。姉妹なのは一目でわかる。

 メミーナ姉妹の話のあとに、また別の姉妹。ごっちゃになりそうである。


 片方は強く逞しい表情をしているが、もう片方はビクビクして、視線を落としていた。


「第三試合はまさかまさかの姉妹対決!! サーカス団育ちのエリート娘レンカ!! 対するはその妹にしてドラゴンの呪いをかけられた不運の子、マイカ!! 第三試合、始めええ!!!!」


 強気な姉、レンカがファイティングポーズを構えると、臆病な妹、マイカの肩がビクついた。


「どうしたのマイカ、そんなんじゃお姉ちゃんを倒せないよ!」


「む、無理だよ姉さん。わたし、戦いなんて無理……」


「じゃあ、私から行くよっ!」


 レンカはぴょんぴょんと軽やかに跳ね、軽いジャブを決めた。


「きゃっ!」


「さあ、立ちなさい!」


「怖いよ姉さん! わたし、もう降参する」


 レンカは苦々しい顔で両腕を下げた。


「でも、強くなりたいんでしょ?」


「……」


「ドラゴンの呪いを使いこなして、自分を変えたいんでしょ? みんなを見返したいんでしょ?」


「……うん」


 なんだか妙な空気が会場を包んだ。

 なんだか訳あり姉妹のようだが……ごめんなさい、話のテンションの差が激しすぎてちょっと疲れます。


「なら、私を乗り越えなきゃ。マイカに宿った力、コントロールできなきゃ、ずっと臆病なままだよ」


「だけど、もし姉さんを傷つけちゃったら……」


 ニコッと、とても頼もしい笑みで、レンカは再度構えた。


「私は大丈夫。マイカのお姉さんだもん」


「姉さん……」


「さあ! おいで!!」


 マイカは覚悟を決め、よろりと立ち上がった。


「うん!」


 マイカは全身に力を込めると、不思議と、彼女の周囲が歪んだ。

 ゴゴゴと空気が震え、彼女の両手が肥大化し、トカゲの手のような鱗と鋭利な爪が伸びる。

 額には二本の角が生え、真っ赤に変色した瞳が、姉を捉えていた。


 ドラゴンの呪い。私も噂を耳にしたことがある。

 ドラゴンの子を殺した人間は、自分の子供がドラゴンになっていく呪いにかかるのだ。

 てっきり都市伝説だと思っていたが、いま目の前で起きてるのは、紛れもない現実である。


「うおおおおお!!」


 マイカがダッシュし、レンカにタックルした。

 その威力や凄まじく、レンカは後ろへふっとばされ、壁に叩きつけられた!

 まだ終わりではない、マイカは一蹴りして、その鋭い爪を振り下ろした。

 が、辛うじてレンカは腕を抑え、爪による刺殺を阻止する。


「くっ、相変わらずなんてパワー」


 マイカは獲物を発見した獣のようによだれを垂らしていた。

 理性が、完全に失われているようである。


 レンカの渾身のパンチがマイカの鼻に直撃する。

 怯んだ隙きにレンカは逃げようとしたが、マイカに足を掴まれてしまった。

 

「!?」


 これが止めと言わんばかりに、マイカが再び爪を振り下ろす。

 その瞬間、マイカはピタッと停止し、


「だめ……」


 力んだ手を、もう片方の手で必死に抑えだした。


「姉さんを傷つけちゃ……だめ……」


 それは呪いのせいなのか。収まりきらぬ闘争心はマイカの両腕を支配し、レンカに両手の爪を向けた。


「だめえええ!」


 絶叫と共に、マイカは自分自身を止めるため、自分で思っきり頭部を地面に打ち付けた。


「マイカ!」


 心配する姉をよそに、マイカは倒れ、角は消え、手も元の白い女の子の手に戻っていった。

 マイカは朦朧とする意識の中で、嬉しそうに、頬を釣り上げた。


「はじめて、力を抑え、られた」


「うん、すごいよマイカ」


「でも、負けちゃった」


「違うよ。マイカの勝ち。マイカならこのまま優勝できるよ。応援してる。そのために、私も参加したんだから」


「えへへ……じゃあ、がんばらないと……」


 敗者が勝者を見下ろす異質な結末。

 それでも、レンカは妹マイカを勝者と堂々と宣言するのだろう。

 第三試合が幕を閉じる。

 こういうバトルがあってもいいよね。

 たぶん、予想するに、バランスを取るため第四試合はすんごくふざけた戦いになるんじゃないかなあ。

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