参加ッッ!!
闘技場に訪れた私とネネは、観覧者用入り口横にある受付に声をかけた。
白いひげを生やした老人であった。
「あの、いまって試合とかしてますか?」
「あ? 耳を澄ましてもな〜んにも聞こえねえだろ。大会は明後日だよお嬢ちゃん」
「観覧するのにいくらかかりますか?」
「一人1万ギルだよ」
「1万か……」
そんな大金、持っているわけがない。
ネネを見やると、彼女はお金の件より、もっと別のことで不満を抱いている様子であった。
「出場するんじゃなかったんですか?」
「いやそれはメミーナが勝手に……」
「あの、受付さん。大会とやらに出場するには、いくら必要ですか?」
老人はにやりと不気味に笑った。
「その前に、あんたら身分証は?」
奴隷の私にそんなものあるはずがない。
ネネに目配せすると、老人はその視線の揺らぎで、察した。
「じゃあプロモーターをつけて強引に枠に入れてもらうしかねえな」
「プロモーター?」
「俺がなってやるよ。そうすりゃタダで参加できる。が、もし負けたらそんときは、参加費両分、いやそれ以上の金を体で払ってもらう」
つまり、敗北即奴隷に逆戻りということ。
まてまて、そもそも私は大会に参加するつもりなど毛頭ない。
勇者さえ見つけ出せればそれでよいのだ。
「ちなみに、さっきお嬢ちゃんみたいな子が一人、プロモーター制で参加が確定したぜ」
「私たちみたいな子?」
「金髪で、足し算もできなさそうな……」
「あのバカッ!」
メミーナがすでに参加したことが刺激となり、ネネは私に決意の眼差しを向けた。
「メミーナさんに置いていかれるわけには参りません。私たちも!」
「えぇ〜」
しかし、観覧の席を買う金もない。
そもそも、本当に勇者がいるのかも不明である。
すると、老人は渋る私を見かねてため息をついた。
「どうすんの? やんの?」
「いや私は……」
「見たところ金ないんでしょ? どうする? 優勝賞金は1000万ギルだけど?」
「参加します!!」
やべ、大金欲しさについ口が滑ってしまった。
まあいいさ、私は最強くノ一。実力はまだお見せできていないが、敗北などまずありえない。
前世ほどの卓越した肉体ではないが、そこは技術で補えばいいだけである。
その後私とネネは老人にプロモーターになってもらい、参加枠を手に入れた。
仮に三人中二人が負けてしまっても、一人が優勝して負債分を賞金で払えば問題ないはずだ。
「ところで、ネネも身分証持ってないの?」
「ありますよ。でも、メミーナさんや芹子さんの仲間である以上、一緒に運命をともにすべきかと思って」
「……ねえ、私たち、ずっ友でいようね」
「え? ずっ友とは? ていうか、メミーナさんはほっといていいんですか?」
「大会当日に会えるでしょどうせ」
それから私はネネのお金で宿に泊まり、ぐっすり眠った。
金も身分証も持っていなくても、親切な友達は持っているべきだなと、深く心に刻みつけた。
次回から新章突入です




