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王都ッッ!!

 ブランブラン王国は貿易が盛んで、様々な国や文化、人種が交わるサラダボールとなっている。

 集まるのは品物に限らず娯楽もまた然りで、とくにギャンブルに関してはひどく熱狂的で、一晩で億万長者になった者が数分後には借金まみれの浮浪者になるのもザラであるらしい。

 そして市民たちがもっとも愛するギャンブルというのが、街の闘技場で行われる格闘技である。

 そこに目当ての勇者が来ていれば、私は奴隷少女というキャラ設定で仲間になって生涯安定した暮らしができるというわけだ。


 私たち三人は王都に到着し、むさ苦しい人混みの中を適当に歩いていた。

 誰も彼も、売りや買い、談笑や喧嘩など、人と人とのコミュニケーションに血気盛んで、騒音のような人の声が一向に止む気配がない。


「ここも変わりませんね」


「ネネは来たことあるんだ」


「はい。私は武者修行中の身。いろんな場所を旅していますので」


「なんで修行してるの?」


「うーん。一言で申し上げるなら、覚悟ですね」


「覚悟?」


「日々苦しく辛い、ときには悔しい思いをする生活に、あえて自らの足で身を置く覚悟が、私の心を高めるです」


 めちゃくちゃ真面目である。

 めちゃくちゃ真面目すぎる。

 守護ってあげたい。この実直さ。


「ねえねえ! セリちゃん! ネネちゃん! みてみて〜」


 後方からメミーナの声が聞こえたが、振り返らなかった。

 ネネが反応して視線をやろうとしていたが、


「ダメよ!」


 制止した。


「ねえ! ねえねえ見てよ〜。おもしろいよ〜」


 きっと街にあったものを使ってモノボケするに違いない。

 故に、そんなもので汚れを知らないネネに悪影響を与えたくないのだ。

 ママ〜、なにあれ〜。

 見ちゃいけません!

 みたいなやつである。


「芹子さん? メミーナさんが呼んでますよ?」


「気にしちゃダメ。このまままっすぐ闘技場とやらに行くわよ」


「し、しかし……」


「セリちゃんセリちゃ〜ん。ほんとに面白いから、マジで爆笑するから〜」


 今日、あわよくば異世界転生している勇者を見つけ出し、仲間になりたい。

 しかし、もし断られでもしたらどうするか。

 また別の異世界転生者を捜すか、もしくは定期的に接触を図って準レギュラー枠からレギュラー枠への昇格を試みるか。


 むむむと悩んでいると、追い風が私の背中を押した。

 すると、飛ばされてきた一枚の大きな紙のようなものが頭部に絡みついた。


「ちょ、なによこれ。……て、えぇ〜」


 干からびたメミーナであった。


 乾燥した海苔のようにしおしおになって、なにやらブツブツと唱えている。


「おねがいですから構ってください……」


「芹子さん! メミーナさんが大変ですよ!」


「セリちゃん、ネネちゃん、構って……」


 どうやら遊んでもらえない悲しさで全身の活力を失い、哀れな姿になってしまったらしい。


 とりあえずもう一度風が吹いたのでその風に乗せてメミーナをはるか彼方まで飛ばし、再び歩き出した。


 やがて私の視界に、コロッセオのような巨大な円形の闘技場が見えてきた。

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