英雄の休日4
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「お待たせしましたー」
ファミレスの店員が三種類の料理、オムライス、和風ハンバーグ、お子様セットを運んできた。
服を買った後、携帯などの生活必需品を買いに行こうかと思った。
しかし紅依奈の腹の音が、お昼ごはんにしようと主張してきたので、モール内のファミレスに入ることにしたのだ。
店員が、紅依奈の前にお子様セット、クオンの前に和風ハンバーグ、俺の前にオムライスを置く。
十五才の少女がお子様ランチを頼んでいるという強引なキャラ付けに戸惑う。
しかしいろんな料理が同時に食べられるお子様セットは、ある意味で幕の内弁当と同じ日本の食文化の発展形だと無理やり決めつけて周りの痛い視線を気にしないことにした。
かくいう俺も朝寝坊し朝食抜きだったので危機的空腹である。
スプーンでオムライスをひたすら口に運んでいると対面に座るクオンが話しかけてきた。
「この世界はすごいな、工業もある程度発展してるし、文化もすごい発展してる」
「クオンは今までいろんな世界を見てきたんだよね?そのクオンから見てもそうなのか?」
「昨日読んだラノベ(?)で描写されてる世界は結構似てる世界もあったよ。
例えばだけど魔法が存在しうる世界はやっぱり工業的には遅れてる傾向があるよ。」
確かに魔法という便利な力が存在するのにわざわざ何かを発明する必要はないか。
すると横で追加で注文したと思われるパフェを食べている紅依奈が突然会話に入ってきた。
「でも、もっと発展してる世界もあったんじゃない。」
紅依奈の素朴な質問に、クオンが笑顔で答える。
「もちろんこの世界より工業とかが進んだ世界もあったけど、そういう世界は大抵効率を重視した方向に発展するから逆に食文化とかは衰退する。
だからここの施設みたいにわざわざでスペースを区切って多種多様な店を出しているのがすごいんだ」
紅依奈がもぐもぐしながら
「そぉなんだぁー」
と適当に返答する。
するとクオンが突然まじめな表情になり、しゃべりだした。
「ここからが大事な話なんだけどさ・・・
本当に俺の協力をしてくれるならこの契約書サインしてほしいんだ。」
するとクオンが机に、その契約書と思しき紙を一枚机に置いた。
この英雄は、契約書を用いないと人を信用できないということなのだろうか・・・
しかしだったらなぜいくつもの世界を救って歩いてるんだ?
いろんな世界を渡り歩いてきたならいやという程人間の嫌な分を目にしてきただろう。
卑劣にして強欲にして傲慢それが人間の本性だ。
しかし彼がそれを、人間の本質と認め契約書まで用いて世界を救うことになぜ執着するのだろうか。
その問いに対する答えはすぐに返ってきた。
「この契約は、お前たち二人を縛るものじゃない。
明確な違反項目などは設定されていないし途中で投げ出しても構わない」
あまりにも意味不明な返答に、思はず問いかけてしまう。
「どういうことだよ。縛るつもりがないなら、何の意味があるんだ?」
「これは、俺を縛るためのものなんだよ。君たちに助けてもらった代わりに、君たちに望みを一つかなえるっていうさ。」
確かに自らを自らのルールで縛るというのは、英雄っぽいといえば英雄っぽい。
「しかしそれは世界を救った後に、また混乱を招く可能性があるんじゃないか?
俺たちが世界を救った後に、何を要求するかわからないわけだし。その望みが悪しき物だったら?」
「だからだよ。」
クオンが発した声は人間のものとは思えないほど低く轟いている。
「無数の世界を未知の敵から守り続ける。それが俺の罪だ。
だから世界がそこに住む者たちの欲望によって破壊されるならそれが運命だろ?」
なるほど異世界を敵から守る。
だからその後の世界はどうなるかは知らない。そういうことか・・・
何を望んでも許されるのか・・・
どうしても即決できず、気をそらすために一心不乱にメロンソーダを飲んでいると、紅依奈の行動に驚きむせてしまった。
紅依奈は、どうやら即決したらしくすでに契約書に名前を書いているのだ。
そんなかいなに対して、
「なんでも簡単に決めすぎじゃないか。
即決することは必ずしも良いことじゃないぞ」
と注意する。
「しっかり考えたよ。
でも考えてるだけじゃ・・始まらないでしょ・・・」
言葉を発した紅依奈の目は、暗く輝いていない。覚悟を決めたということなのだろうか。
「でもクオンと協力してこの世界を救い。
そしてその後にこの世界を壊すことも可能な褒美を手に入れることは、この世界のすべての業を背負うことになるんだぞ…」
恐らくこの問いに意味などないだろう。
ただ言い訳をしているだけだ。
自分が何も背負うことができない弱さに…
「私には、世界を壊してでも手に入れたい思いがあるから」
そんな紅衣奈の覚悟の言葉に俺は自己嫌悪に襲われ、とてもこの場にとどまっていられないと思った。
「俺、先に携帯ショップ行ってる」
自分の分の契約書を無理矢理ポッケに突っ込み、財布から1万円をだし机に置いた。
視線が痛い。
周りからの視線じゃない。
二人からの視線だ・・
それでも選べない。選ぶ覚悟がない。
自分の願いをかなえる覚悟も、
自分の意志を発言する覚悟も。
自分のことを決める能力に欠如した人間は、どうやって生きたらいいんだ?
何も決められないのに今の現状にも満足できない・・・
それでも・・・




