英雄の休日1
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「ん…」
体が重い。明確に意識があるのに起き上がれない。
まさかこれが金縛りというやつか…
「なわけあるかー」
叫んだ勢いで自分の体の上に乗っている生命体をベッドから叩き落した。
「痛ったぁ」
と床に転がってる幼なじみに少しばかりの罪悪感を感じながら壁の時計を見ると午前十時を示していた。
無理やりおこしに来た幼なじみに少しイライラしたがこれは寝坊した俺が悪いところもある
「悪い寝坊した。」
いつもなら目覚ましで必ず起きれるのにな…
ヘッドボードに置いてあるスマホを確認するとアラームが設定されていなかった。
昨日は確か、紅依奈を家に返した後クオンに部屋を案内して物置化していた部屋を一緒にかたずけた。
その後クオンがこの世界における異世界に対する認識について知りたいというので持ってる異世界ラノベ数十冊を部屋に届けた。
そして自室に戻ってそのまま寝ちゃったのか…
「回想に入ったところ悪いけど下でクオン君が待ってるから早く準備してね」
君呼びか。まあ大方俺が起きるまで下でクオンと話していたが全然起きないから二階の俺の部屋まで起こしに来たのだろう。
「わかった。シャワー浴びて着替えるからクオンと一緒に待ってて」
伝えた通りシャワーを浴びて着替えた後リビングに向かうため階段を下りていると談笑の声が聞こえてきた。
「悪い。待たせた。」
と一応謝罪しておくとクオンは
「全然待ってないよ」
と返してきた。こいつは対話スキルも反則級らしい
「今日は、隣町のショッピングモールで買い物した後、図書館にいくってことで」
うなずく二人に目をやると衝撃を受けた。
紅依奈は、フリルのついた白いシャツに黒いスカートという、いかにも王道黒髪後輩コーデなのだが、隣の奴の服装がとにかくヤバい。
胸部には、鉄板をそのまま曲げて作ったような粗雑なプレートアーマー、そして全身に鎖帷子を付けている。
極めつけに背中には一メートルほどの西洋剣・・
「ねえ、クオン。その服装は何?」
俺の率直な疑問にクオンは
「昨日本借りただろ。それ読んで分かったんだけど。異世界に来たらまず初期装備って言われる。
安価な鎧でしばらく行動するんだろ?」
いやこれは俺のミスだ。頼まれたとはいえ普通の学園ラブコメを貸すべきだった…
「ごめん。多分その服装で出たらすぐ捕まると思うよ…」
というと
「まじで?」
などといって、めちゃくちゃ驚いている。
「紅依奈、お前も注意しろよ、この服装の前出たら即銃刀法違反で捕まるぞ。」
すると彼女は
「いやだってあまりにもファンタジーな服装だから面白くってw」
と言って笑っている。
クオンにはひとまず俺の服を着てもらい、家を出た時にはもう十一時になっていた。