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モノクロレインボーシンフォニー  作者: 華水ながれ
第一部 -『夢』と『現実』-
5/5

独裁者の相棒

 ―――アーテルテクノロジー・社内。

 社内の一角で、年配の男性を叱る長身の青年の姿が。


「こちらのバグ、対応したんですか?」

「はい……対応しましたけど」

「このバグ、3日前にこっちに直しましたよね? しかもあなたが担当でしたよね?」

「え? はい……」

「おかしいと思いませんでした? バグが上がってきた時点で」

「すみません……」

「この仕様は私の方で確認しておきますので。他を進めてください」

「はい……申し訳ありません」


 長身の青年は、自席に戻り手際よく作業を進めていった。


 ……始業時間からすでに2時間が経過した頃。

 ピッ、とドアのセキュリティが解除される音が鳴った。

 姿を現した金髪の青年は、欠伸をして気怠そうに席に座った。


「……」

海星(ひとで)君、挨拶。あと言う事はない?」

「……うっさい」

「はぁ……」


 長身の青年……零は、小さくため息をついた。


 この態度さえ改善されれば、彼は僕を超えられる人材なのに。勿体無い。

 彼、海星君の態度は、初めて出会った時から相変わらずだ。


「あのさ、会議資料仕上げてって昨日に言ったよね。

 今日の会議準備しないといけないのに。本当は今頃には資料がないと……」

「できてる」


 海星君はパソコンの電源をつけ、僕にメールで資料を送付してきた。

 ……資料の中身は申し分ない。けれど。


『To:クソリーダー

 あとはよろしく


 P.S.昨日お前口角上がってた。きもい。

 ---------------

 海星(ひとで) 満月(みつき)


 メールの文章は、0点。

 相手が僕だから、こうしてるんだろうけど。



 ―――アーテルテクノロジー社内・給湯室。

 給湯室で、世間話をする男性社員。


「先輩、俺も遂に異動になりました……」

「うわ、遂にここまで魔の手がきたか。藍内のやつ、容赦ねぇな」

「でもなんで、海星さんは頑なに手放さないんでしょうね。勤怠も態度も最低なのに」

「仕事『は』出来るからだろ。お前はああなるなよ」


「……」

 給湯室から聞こえた世間話。

 文句を言うなら、どうして自分が異動になって、海星君が残ったか考えてみたら?

 心の中で冷たい台詞を吐いた。


 ―――数年前。

 社会人になって1年と少し経った頃。

 人事部と、話をしていた時のこと。


「技術部が人手不足……ですか……」

「藍内君、周囲に優秀な人はいないか?」

「優秀……ちょっと探します」


 優秀と言ったら、『彼』しかいない。

 僕は電話をかけた。

 彼と話すのは、学生時代以来だ。


 ―――場所は変わり、アーテル学園。

 アーテル学園は、小学校~大学までの学部が併設された、一貫校。


 ベンチで昼寝していた満月は、不満気にスマホを取り出した。


「……なに」

『海星君、就職決まってないよね?』

「ん……」

『はぁ……どうせ探してもないんでしょ?

 ……その方が今は好都合なんだけどさ。

 あのさ、アーテルテクノロジーに就職する気はない?』

「アーテル……あぁ、運営が学園と同じなんだっけ」


 ――――――


 現在に戻る。

 時刻は、20時。


 僕の今月の残業時間は、12時間。

 まだ月の初めだというのに、このペースはまずい。


「海星君、残業時間危ないから今日は上がらせてもらうよ。

 悪いけど、明日までの緊急のバグ対応よろしく」

「……ん、ついでに仕様側と口裏合わせとく」

「うん、よろしく」


 なんだかんだで、僕の指示の意図を汲んで、要領よく業務をこなすのは海星君ひとりだった。

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