イリュジオン神話での神もどき
「邪神の遣いが!地獄に落ちろ!」
そう言うと信者らしき人達は俺たちに魔法を唱えた。
「鎮魂神フィロドクスィアよ、我は裁きを求める者なり。聖なる炎で彼の者達を焼き払え。代償は我が魔力。神々の力の一片を与えたまえ。」
詠唱が終わると神父はにやりと顔を歪ませて
「死ね!」
と一言言うと、
「アギア=フローガ アルカリオス!!」
パッとあたりは炎に包まれた。
「うびゃあぁ!?」
あまりに強力で俺たちはそのまま焼かれ続けるしか無かった。
何故こんなことになったのか、フォノスが教会に行こうなんていうからいけなかったのだ。
「神々の祝福はね?旅人にとって通らないといけない通過儀礼みたいなもんだよ。これを終えて、やっと正式な旅人として扱われるんだ。」
フォノスは俺にその有用性を説き、俺も最もだと思い始めて来た訳なんだが…
「これはこれは新たな旅人さんですな?どうぞお上がりを。」
俺たちが来た教会はかなりの大きさで、何でもこっちの世界の国宝みたいな扱いらしい。
俺たちは案内されるがままに奥へ奥へと進んで行った。
「貴方達はイリュジオン神話をご存知ですかな?」
奥へと向かう途中、神父は突然そう聞いてきたのだ。
俺はもちろん知らない。が、フォノスのほうを見ると
「まぁ、知らない事は無いですが…」
と言っていた。
「そうですか。では、貴方達はこの神話に出てくる邪神エレゴスというのをご存知かな?」
「知りませんが、邪神と言うからにはあまりに良い神様では無いんでしょうね。」
まぁ、普通はそう考えるわな。俺もそう思うけど。
神様か。俺には一応知り合いの神様は居るがろくな奴じゃないし、行方不明だし。
「えぇ、鎮魂神フィロドクスィアの妹を殺し、フィロドクスィア様本人も殺そうと画策した、まさに邪神。」
そう言うと物陰から信者らしき人達が俺たちを取り囲んだ。
「どういうつもり?」
「いやはや、それは最早その剣に聞いた方が早いのでは?」
え?なんでここで俺?知らんよ。俺なんも知らんよ。
やめて?そういうの。俺知らんよぉぉぉぉ!
「その邪神エレゴスなんですがね?とある伝承の剣を曰く付きの森に隠してましてね?そしてその中に異世界人の魂を宿らせたと言うのですよ。」
「え?それって…」
俺もそれを言われて気づいた。あの神様もどき…
「そう、貴方の事ですよ。呪剣アドヴァシティー。」
うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
という感じだったのだ。こんな序盤で死ぬのだろうか…少なくともフォノスは助からないだろう。
もうちょっとレベルとか上げてたら勝てたのかな…
そう思って諦めかけたその時だった。