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英雄の剣の化けの皮  作者: マナポポな人
序章 冒険の前日譚
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屋上からの転生

屋上までの階段は長く、登りきった時の俺の息切れの激しさは尋常じゃなかった。


「相変わらず体力無いなぁ。運動してる?」


「……はぁ…余計な…お世話だよ。」


渡谷ハネカ 図書委員長 生まれつき運動神経が良い。俺の幼馴染みである彼女は、俺の数少ない気の許せる人の一人だ。中学生の頃、一度告白をしてみたのだがバッサリと振られてしまった。俺もそこからバッサリと諦めているわけだが、それを知らない奴らは勘違いをしてくる。


「あのね、今日呼んだのはね…」


なんだか言いにくそうにしている。こういう時は察してあげるのが一番だ。


「…俺のこと、好きになっちゃった?」


「違うの。」


あらやだバッサリ。少し悲しい。


「実はね…?」


ハネカは恐る恐る俺の顔を見て言った。


「今から私、死のうと思ってさ。」


…何言ってんだ?


「ホントだよ?だから私、最後にツルギと話したくって…」


「…ははw冗談に聞こえない所が怖いw」


笑ってはいるが、声のトーンが冗談じゃないのは俺にも分かった。でも、そんな訳ないと思った。


「中学生の頃、ツルギが私に告白してくれたの覚えてる?私、ツルギのことそういう風に思ってる訳じゃ無かったんだけど、嬉しかったんだ。すごく。」


「いやいや、それは俺も嬉しいけど…とりあえず、一旦こっちで話そう?」


俺は屋上の縁に立っているハネカを少し警戒しながら呼び戻そうとした。


「駄目!私は本気なの…」


そう言ってハネカはその大きく澄んだ瞳から涙をこぼした。本気だ。


「何でだよ!何が気に食わない!俺はお前がいないと駄目なんだよ!」


俺は必死の形相で呼び戻そうとした。でも、


「私がツルギをここに呼んだのは私の自殺を止めさせるためじゃないの。私の最後は、ツルギに見てて欲しいって思ったんだよ。」


嫌だ。嫌だ。行かないでくれ。

夕陽を背景に、俺は世界一美しい笑顔を見た。

その笑顔の意味は、俺には理解できなかった。


「ありがとう、ツルギ。」


それでも、俺は呼び戻すのを諦めたくなかった。


「うおおおおおおおおおおおお!」


俺は全速力で落ちていくハネカの方へ走った。

俺の手はハネカの手を掴んだ。


「うぇ⁉︎ツルギ⁉︎離して‼︎」


「離さない!絶対!」


俺はハネカの手を力強く握りしめた、が、


「うぁ!?」


俺はハネカを引き上げることができず、俺も屋上から落ちてしまった。


「そんな…!」


俺は落ちながら絶句した。

助け…られなかった…



刹那、激しい光が俺たちを包んだ。そう思ったのも束の間あたり一面は真っ暗になった。死んだのか?




「やぁやぁ、ようこそ世界の狭間へ。」


何だ?この声…誰なんだろう…


「見てたよさっきの。いっやぁー君、随分とまぁ正義


溢れる死に方しちゃってさぁ。凄いね。」

何だ?褒められてるのか?いや、俺は褒められる訳にはいかない。結局ハネカを死なせてしまったんだ…


「あ、生きてるよ。君もハネカちゃんも。」


え!まじか!それは良かった!


「いや、それはそうとして…これはどういう状況?」


「え?君ならわかると思うけどなぁ。」


俺ならわかる?…そう言えばこの雰囲気、もしや!


「……転…生?」


「そうそう、正解!」


「うっそだろキタコレ!!」


やったぁぁぁぁ!転生できる!異世界生活できる!


「あのね、でもね君がただ異世界生活楽しんでるだけだといずれハネカちゃん死んじゃうんだ。」


え?どういうことだよ?


「おほん…あのね、彼女はあの時死ぬことが決まってたの。

それを私が神の権限を使って、無理矢理異世界で転生させたの。だからそう長くはもたないのよ。」


そんな…ハネカは結局死ぬのかよ。


「心配しないで、手はあるの。」


「なんだって?どんな方法ですか?」


「私が正式に神の術を使ってあの子を蘇生させてあげる。時間がかかるから今回はできなかったけど時間稼ぎにはなったからね?」


「はぁ…」


「でもね、それをするにはあの子を見つけ出さないと。」


「神なのにできないんですか?」


「うっさい!人なんてどこの世界でも多すぎて一人を探すなんて出来る訳ないでしょ。」


「じゃどうするんですか!」


「そこで君の出番さ。ハネカちゃん、探し出して?」

は?そこは人任せ?神なのに役立たずかよ!


「あれ、神は心も読めるよ?あんまり言い過ぎないようにね?」


すみません、やります。探し出します。


「はいオッケー!じゃ飛ばすよー!」


「せっかくだったらイケメン勇者にしてくださいよ?」

「はいはい、いっきまーす!」


良かった、希望が見えた。ハネカ、見つけ出して必ずお前に何があったのか聞き出す。そしてお前をいじめた奴を懲らしめてまた笑い合いながら話そう。

俺は目を閉じて、決心した。そして、声が聞こえた。


「あ、やべ。」

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