始まりの放課後
秘剣・アドヴァシティーの伝説
その昔、突如現れた魔物に人類が苛まれ、喘ぎ、慄いていた頃、異界より出でし勇者が魔物を討ち果たさん。時には砂漠に雨を降らせ、時には荒野を耕さん。
その勇者の剣こそ、秘剣・アドヴァシティー也。
秘剣・アドヴァシティーは、光の象徴とされ
多くのひとに崇め奉られん。
しかし、ある日より突然アドヴァシティーは盗まれん。それより先は行方知らずのまま也。
勇者に関する文献
異界より出でし勇者は心優しく民のため、平和のために力を与える者だ。しかし、何故だろうか時々彼の剣は、彼に刃を向けるのだ。彼はすぐにそれを制するものの、勇者の剣は彼になにかしらの感情を静かにぶつけているようだった。剣の精霊よ、彼の何が不満だというのだ?彼はこんなにも人に尽くしているじゃないか。
________________________
「転生か〜。ちょっとしてみたいな〜。」
俺は漫画を読み終えたのと同時にそう呟いた。
「ツルギ、お前ならどんな転生したい?」
「そうだなぁ…防御力全振りとかゴブリン専門スレイヤーとか?」
「…お前って影響されやすいよな。」
「はーい、じゃあ今から点呼とるよー。」
「うーす、部長。」
「はいじゃあまず….佐村 剣。」
「うーす。」
佐村ツルギ 17歳 漫画研究部所属 安定の陰キャだ。クラスではいじめられないように日々精進している。勿論そんな学校生活はストレスがたまらないはずが無い。だから毎日、同類の集まるこの場所で漫画を読み耽ってストレスを発散させている。
「…多田 太。」
「うぃーすぅ。」
多田フトシ 同い年 漫画研究会所属 ちびデブ。
俺の同士とも呼べる存在。こいつとは奇跡的な程好みの漫画が一致していた。好きな食べ物はポテチのコンソメ、飲み物ならカレーだ。毎日水筒からいい匂いがする。
「で、俺という事で全員参加だな。」
部長 18歳 漫画研究会部長 名前は知らない。
丸メガネがトレードマークの自称頭脳派。
ちなみにテストで高得点が取れる教科は保体らしい。
「やっぱりここ部員少ないっすねー。」
「まぁ運動部入る奴なんて自己顕示欲の塊だからねぇ。」
「そうそう、あいつらはモテたいんだよ。」
この漫画研究会は全部員数3名とこの鞘山学校中で一番少ない。廃部寸前の状況だ。
「でもそんな自己顕示欲の塊を呼び込まないとやっていけないかもっすよ?」
ここは現実的に言ったほうがいいと思った。
「まぁツルギが言うならそうかな?とりあえず視野に入れておこう。」
「ぜひお願いします。」
正直あまり気が進まないようだったが渋々了承してくれた。
「ってか部長今日遅かったですねぇ。」
「先生に呼び出し食らってさ。いじめバレたらしいよ。」
「へぇ、部長の学年も色々たいへんっすねぇ。」
俺はこの手の話にはあまり興味がない。何気なく窓をぼんやり眺めていた。オレンジ色に染まった雲を見つけ、自分と重ねてみたりしてみた。ただぼんやりと
他の色に染まって風に流される雲を見て、もっと自分の色に自信を持てばいいのに、なんてロマンチックに浸りながら考えていた。
「おーい!」
ふと呼びかけられ下を向いた。
「羽香?どうしたんだよ?」
「ちょとさ、今から屋上きてよ。」
「はぁ?なんでだy…」
「いいから急いで急いで!」
ハネカは食い気味に答えて俺をせかした。
「何なんだよ?」
「いいなぁ、青春してて。」
「よっ!アオハル!」
「フトシ黙れ!あと部長も!」
別に俺たちはそう言うのじゃない。ただの幼馴染みだ。
ひゅーひゅーと茶化す二人を背に、俺は屋上へ向かった。