94話 ダンスパーティー2
会場に入ると、ホールはとても華やかに飾られており、人もまだそんなにいないのでとても広く感じた。
ウィルによるとこのホールは王城のホールとかなり似せて作られているらしく、言われてみれば確かに小さい頃に見た景色とよく似ていた。
ホールの奥へ進むと階段があり、その階段を上ると王族が座る席があるのだが、階段の手前でカイン様とアルベール殿下とヴィンス先生が話していたのでウィルが「珍しい組み合わせですね」と話しかけた。
「やぁ、ウィルとマリアンヌは今来たのかい?」
「はい、カイン様とアルはこんな所で何を?」
ウィルが本来王族席にいるはずの2人にそう尋ねると、アルベール殿下が「あそこに割って入る気になれなくてな」と言って王族席の方を指したので確認すると、学園長とアルヴィン様がいたので私とウィルは察した。
「あー…カイン様、あの2人一緒にいて大丈夫なんですか?」
「どうなんだろう、私とアルが来た時にはもう居たからねぇ」
「お祖父様も何だって俺らより先に居るんだか」
「学園長がアルヴィンと話したいからと早めにいらっしゃったんですよ、あとアルヴィンは父親である学園長に危害を加える気は無いので大丈夫です」
ヴィンス先生がそう言うと、アルベール殿下が「叔父上はお祖父様の事どう思ってるんだ?」と先生に質問した。
「世間ではアルヴィンの力に畏怖し厄介払いをした様に思われてますが、当時の学園長はアルヴィンを守る為に城から出したのです、その事を彼なりに理解しているので恨んではいませんが、家族とも思っていないといった感じでしょうか」
「へぇ、じゃあ私の陛下に対する感情と似たようなものですかね、そういえば先生は叔父上と古い付き合いなんですよね」
「はい」
「どちらが年上ですか?」
「私ですが、それが何か?」
「面布で分かり辛いですがそれでも結構若く見えるので、以前から気になっていたんです」
「なるほど、ずっとは無理ですが殿下に顔を見せるくらいは可能ですので、外しましょうか?」
「いいの?じゃあお願いしようかな」
カイン様がそう言うとヴィンス先生が面布に手をかけたので、カイン様とアルベール殿下と私が注目していると、急に私の視界が暗くなった。
驚いたが誰かの手で目隠しされたのだと分かったので「…ウィル?」と尋ねると「正解、悪いけどマリーに先生の顔はまだ見せられないから我慢してね」と耳元でささやかれ、先生の素顔は気になるが何が何でも見たい訳ではないので大人しく従った。
ウィルの手が離れると先生はもういつも通りだったので、素顔を見たであろう2人の反応を見るとどちらも眉間にしわが寄っていた。
「…先生ってどっかの貴族の子供だったりするのか?」と発言したのはアルベール殿下だ。
「貴族ではないですが似たようなものですかね、私自身は孤児なので何の権力もありませんが」
「すまない、嫌な事を聞いたな」
「大丈夫ですよ、もう随分と昔の事なので」
「おいヴィンス、お前何顔見せてんだよ」
そう言ってアルヴィン様が階段を下りてくると、先生は「殿下達なら問題ないでしょう、それより話はもう良いんですか?」と言った。
するとアルヴィン様は「別に大した話でもないしな」と言って、カイン様とアルベール殿下に王族席に行くよう促した。
カイン様は私とウィルの方を見ると「マリアンヌ、悪いんだけど暫くウィルを借りてもいいかな?」と言ったので「構いませんよ」と答えたのだが、何故かウィルが嫌がった。
「カイン様、今日は俺が必要な仕事は無かったはずですが」
「実はセスに別の仕事を任せたから護衛がいないんだよね」
「カイン様に護衛って必要ですか?」
「あ、それ言っちゃうんだ、確かに私には必要ないけどアルとお祖父様には必要だよ」
「アルヴィン様でもよくないですか?」
「叔父上にはアリスの方をお願いしてるから無理だよ、開始の挨拶まででいいから居てくれないかな」
「はぁ…分かりました」
ウィルは渋々承諾すると「マリー、悪いんだけど俺が行くまでアリス様と一緒にいてくれる?」と申し訳なさそうに言ってきた。
「大丈夫ですよ、アリスと一緒に待っていますね」
私がそう言うとウィルはカイン様と王族席の方へと向かい、私はアルヴィン様とヴィンス先生と一緒にアリスの所に移動した。
「あら、アルヴィン様だけだと思ってたのに、マリーとヴィンス先生も一緒なんですね、嬉しいわ」
「その言い方は俺に不満があるように聞こえるが?」
「ありますよ、アルヴィン様と2人でいたら変な噂が流れるか、ご令嬢に囲まれそうですもの」
「分かるわ」
「カイン殿下もそれを心配してこうなるようにしたのかもしれませんね」
ヴィンス先生の発言に、私とアリスは同意した。
暫くすると生徒の数も増え、主役である4年生の入場が始まり、学園長とカイン様の挨拶の後パーティーが始まった。
パーティが始まるとすぐにカイン様とウィルが私達の方にやって来て、それを見たアルヴィン様は「じゃあ俺は帰るぞ」と言って姿を消してしまった。
「叔父上を社交界に出すのはもう少し先になりそうだなぁ」
「カインったらそんな事考えてたの?」
「うん、叔父上が大公として社交に出てくれると、陛下が迂闊な発言をしなくなるから助かるんだよ」
「そうなの?それなら是非とも参加して欲しいわね」
「アルヴィンの興味を引ければ参加すると思いますが、気まぐれですから」
「そうですね、考えておきます」
そんな話をしていると丁度最初のダンスが終わり、ウィルに「マリー、俺と踊ってもらえますか?」と手を差し出されたので「もちろん、喜んで」とその手を取った。
カイン様とアリスも踊るみたいで、ダンスに自信のない人や下位貴族の方は参加しなかったので、人数が少なめだった。
まぁ間違って王太子とその婚約者とぶつかったりしたら怖いものね、対処法としては正解だと思う、でも仮に人数が多くてもカイン様が人とぶつかるようなリードをするとは思えないけど。
そういえばアルベール殿下は何をしてるんだろうと思い探してみると、王族席で学園長と何か話していて、学園長は楽しそうに話しているが殿下の方は勘弁してくれといった感じだった。
「アルが気になる?」そう聞かれて顔を上げると、ウィルが心配そうにこちらを見ていたので「学園長と何を話してるのかと思っただけですが、どうかしましたか?」と聞き返すと、ホッとしたような表情をした後「あれはユーフェミア様といつ婚約するんだって学園長が聞いてるんだよ」と教えてくれた。




