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90話 不憫2


後は寝るだけという状態で寮の部屋で過ごしていると、猫のメーネスが外に出たがったのでカーテンを開けたら、外にウィルがいて本当に驚いた。

話があるというので部屋に入ってもらったのだが、私がお茶を淹れている間ソファに座っていたウィルは頭を押さえてずっと考え込んでいた。

いったいどうしたのだろうと思いつつ、お茶を出して隣に座ると「こんな時間に来てごめんね」と言われたので「明日は学園が休みの日ですし、私は構いませんよ」と答えた。


「それで、話ってなんですか?」

「マリーが最近上の空だから何をそんなに気にしているのか聞きに来たんだよ」

「うっ…ごめんなさい」

「謝らなくていいから、話してもらえる?」

「それはつまり、何かモヤモヤするという理由では駄目って事ですよね」


私が最近1人で勝手に悩んでいる事については、ウィルに聞くのが1番早いのは分かっているのだけれど、聞く事に抵抗があったので、何とか自分で気持ちに折り合いをつけようと思っていた。

でもそのせいでウィルにこうして気を遣わせてたら駄目だよね、と思っていたらウィルに頬を撫でられたのでそちらを向くと「俺ってそんなに頼りない?」と言われてしまったので慌てて否定した。


「違うんです、ウィルのせいではなくて私が勝手に思ってるだけで…」

「でも俺に関する事だよね?」

「…はい」

「例の男爵令嬢の事?」

「それもあります…」

「も、って事は他にもあるんだね」

「パトリシア男爵令嬢に関しては、アリスと話してエレナ様の代わりなのではと少し疑ってます」

「代わり?」

「はい、エレナ様は私達の前世では新ヒロインの位置でしたので、本来卒業までこの国に居るはずなのですが、ティルステア聖国に帰られてしまったので、代わりとして彼女が現れたのではないかと」

「まぁ確かに攻略対象って言われてる人物に接触してるし、マークは落とされてるけど、それがどうかしたの?」

「どうかしたのじゃないですよ、カイン様もウィルも一応攻略対象なんですから、万が一があるかもしれないじゃないですか」

「そういう事か、じゃあマリーやアリス様は、俺やカイン様が強制力みたいなもので男爵令嬢に心変わりしないか心配してるって事でいい?」


ウィルにそう聞かれたので私が頷くと、ウィルは少し考えた後「マリー、ここに座ってくれる?」と笑顔でウィルの膝の上を指定してきた。

ウィルの膝の上に座るとか、学園に入学する前にしたのが最後なので流石に恥ずかしいと抵抗すると、ウィルにヒョイと抱き上げられ、横向きに強制的に座らされた。


「フフッ、マリーがそんなに真っ赤になるのを見るの久しぶりだね」

「ウィルは楽しそうですね」

「うん、少し楽しいかも、ねぇマリー」

「はい」

「俺は例の男爵令嬢を見た事もあるし、応対した事もあるけど、正直全く興味がない、それは分かるよね」

「分かります」

「うん、じゃあもし俺がマリーよりあの男爵令嬢を選ぶような事があれば、それはもう俺じゃないから先生に相談して俺を正気に戻してもらえるかな」

「分かりました」

「じゃあ男爵令嬢の件はこれでいいとして、他には?まだあるんでしょ?」


私は、これは答えないとずっとこのままなんだろうなと思ったので、観念して「ウィルが、夜会で大変モテていると聞きました」と言うと、ウィルの眉間にしわが寄った。


「…誰から聞いたの」

「アリスとセス様とアルヴィン様から聞きました」

「そう、何て言ってた?」

「アリスは、ウィルが次期宰相候補だから近付こうとする令嬢がいるけど、ちゃんとかわしていると教えてくれて、セス様からは、ウィルはフリーになると毎回ご令嬢に囲まれていて、たまに何人かダンスの相手をしてるくらいだと聞きました」

「アルヴィン様は?」

「ウィルを遊び相手として誘う女性の方と、一緒に娼館へ遊びに行かないかと誘う男性の方がいると教えて下さいました」

「あの人本当に何なんだろう、俺の事嫌いなのか?…あっ、俺ちゃんと誘いは断ってるからね!?」

「はい、そこは信じてます」

「良かった、なら何を悩んでるの?」


ウィルがそう言って首を傾げるので、私は「私がまだ夜会に参加出来ないせいで、私のウィルに近寄ってくる女性がいる事に腹が立つし、娼館に誘う方なんて論外ですよ、そんな所に行かなくても私がいるのに…でも結局牽制すら出来ないので、このどうしようもない年齢差への憤りを抱えてる事が最近の悩みです」と早口で言うと、居た堪れなくて手で顔を覆った。

するとウィルが「じゃあ俺マリーが夜会に参加出来る歳になるまで、夜会欠席しようか?」と言い出したので、私は慌てて顔を上げてウィルを見た。


「な、何言ってるんですか、駄目ですよそんなの」

「え〜、俺マリーが悲しむ事はしたくないんだけど」

「大丈夫です、私のわがままでウィルの仕事に支障が出る方が嫌ですし、それにウィルがモテるのは予想してましたから」


「ごめんね、ちゃんと断ってるから問題ないと思ってたんだけど、考えてみれば言い寄られてるだけでも面白くないよね」とウィルは言うと私を抱きしめソファに寝転がったので、私がウィルをソファに押し倒したような状態になってしまった。


「確かに面白くは無いですけど、夜会でのウィルの事は私が知ろうとしなければ分からないので、気にしないようにします」

「俺は少しぐらい嫉妬したマリーに束縛されたいけどな」

「本気ですか?」


私がそう言ってウィルの胸に頭を預けると、ウィルは私の頭を撫でながら「本気だよ、それに多分だけど、マリーが夜会に参加し始めたら、俺がマリーを束縛すると思うし」と言い出したので「例えば?」と聞いてみた。


「そうだなぁ、まず俺と一緒じゃないと参加させないし、俺以外とはダンスを踊っちゃ駄目とかかな」

「私も元々そのつもりですから大丈夫ですよ」

「マリーならそう言う気はしてたよ…そういえばさっき言ってたから確認なんだけど、俺を娼館に行かせない為に何かするつもりなの?」

「あー…それは、私転生者なので前世含め知識はあるんで…」

「マリーって前世何歳だったの」

「女性に歳を尋ねるのは失礼ですよ…」

「そうだけど…でもマリーに触っていいなら俺は触りたいから、本当に分かってるのか知りたいんだけど」

「…」

「マリー?…え、ちょっと、この状況で寝ちゃったの!?…マジかよ、俺の事信用しすぎだってば」


私は見事に寝落ちしてしまい、翌朝目が覚めると普通にベッドで寝ていたので「うああぁ…ウィルに謝らないと」と頭を抱える事になった。


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