87話 失脚と逃亡
教皇クライヴは夏季休暇中にエレナ様とノア様に断罪され、教皇の地位を失った。
私は、その事をカイン様から聞いただけなのであまり実感がわかず「こんなにあっさり終わるものなのですね」と言うと、カイン様に「他国の事だしね、これから国を安定させなきゃいけないエレナ嬢やノアは忙しいと思うよ」と言われた。
「2人はこれから学園の方はどうするのですか?」
「エレナ嬢は暫くティルステアから動けないけど、ノアは夏休み明けには学園に戻ると聞いているよ」
「そうなんですね、エレナ様とノア様にはお礼を言いたかったので、カイン様もありがとうございました」
「マリアンヌに何かあるとウィルが仕事しないからね、本当に良かったよ」
「それでカイン様、クライヴの処罰はどうなるんですか?」とウィルが聞くと、カイン様は「余罪が結構あるみたいでね、全部判明するまではクロードが居た地下牢に幽閉されるみたいだよ」と言った。
「余罪ですか、ならリーベル公爵と教皇は繋がってたんですか?」
「証拠はまだだけど、パトリシア男爵令嬢をリーベル公爵に紹介したのが、教皇派の枢機卿だった事が分かってるよ」
「そうですか、教皇が失脚した事でリーベル公爵も動きますかね?」
「どうかな?教皇が知ってる情報次第じゃないかな」
そんな話を聞いた翌日、ティルステア聖国で幽閉されていた教皇が殺されたという情報が入ってきた。
カイン様は「叔父上が確認に行ってるから帰ってきてから話そう」と言って、後日時間を作ってくれた。
いつものように話を聞く為ウィルと生徒会室へ行くと、カイン様の他に若干機嫌の悪いアルヴィン様とノア様もいた。
私達が席に着くと、ノア様が「マリアンヌ嬢申し訳ありません、クライヴを逃がしてしまいました」と言ったので驚いた。
私が「えっ!?殺されたんじゃないんですか?」と聞くと「その情報は誤りです、そもそも我が国はそんな情報流してませんから」とノア様は答えてくれた。
「だが死体があったのは事実だ」
「アルヴィン様、どういう事ですか?」
「頭が無い首から下だけの体がクライヴの服を着て、クライヴが居た地下牢に置いてあったんだ」
アルヴィン様からグロテスクな現場の様子を聞いたウィルが「それがクライヴではないという根拠は?」と質問すると、ノア様が「クライヴには背中に痣があったんですけど、その遺体には無かったので別人だと判断しました」と答えた。
「しかもわざわざクライヴに付けてた精霊を消滅させてるからな、俺に見られると困る事があるんだろ」とアルヴィン様が言ったので、カイン様が「では、今クライヴがどこにいるか叔父上にも分からないのですね?」と聞いた。
「こっちの大陸にいない事だけは確かだ」
「海の向こうの大陸まで転移したという事ですか?かなりの魔力が必要なはずですが」
「別に転移先が大陸である必要はない、こちらに発見されないギリギリの距離の船の上の可能性もある」
「どちらにしろ叔父上に見つからずにそこまでするんですから、余程ですね」
「まったくだな、忌々しいが逃げられてしまったものは仕方ない」
「こちらの不手際ですみません」
「ノアのせいではないですよ、叔父上で無理ならお手上げですから」
「そういう訳だからウィリアムは油断するなよ、クライヴがなりふり構わずマリアンヌを狙う可能性が出てきたからな」
「分かってますよ」
私を聖国へ引き渡す件が無くなったと思ったら、今度は肝心の主犯に逃げられてしまった事に頭痛がしたが、今すぐ何かがあるわけでは無いし、ウィルもいるのでこの時の私はそこまで心配はしていなかった。
そしてウィルが「それで、クライヴ1人で逃げ出せた訳ではないのですよね?」と言うと、アルヴィン様が「精霊を消滅させたのは神術だから、むこうの大陸の奴が関わってるのは間違いないぞ」と答えた。
「叔父上、もしかして以前話していた適合者ですか?」
「おそらくな、そうでもなきゃ下位精霊なんて感知出来んだろうし」
「厄介ですね」
「もし、そいつが出てきたら俺が相手するからお前らは手を出すなよ」
「大丈夫なんですか?」
「売られた喧嘩を買うだけだ、問題ない」
「そうですか、分かりましたお願いします」
その後、カイン様がノア様に今後どうするのか聞くと「逃がした事実をちゃんと公表してクライヴを指名手配します、そうじゃないと再び入国してきた時に捕まえれませんからね」と言った。
「ノアはどうするんだい?」
「僕は予定通りまた学園でお世話になります、パトリシア男爵令嬢の動向も気になりますし、クライヴが現れるとしたらこちらでしょうから」
「確かにその通りだね、じゃあエレナ嬢の手続きだけしておくよ」
「お願いします」
そんな話をした数日後には夏休みが終わり、クライヴの件はティルステア聖国が指名手配にした事で皆が知る事となった。
するとパトリシア男爵令嬢に変化があり、マーク様を使ってアルベール殿下とバージル様に近寄ろうとし始めたらしい。
しかし殿下もバージル様も事前にカイン様から注意するよう言われていたので、今のところ男爵令嬢の接近は上手くかわしているそうだ。




