75話 休み明け
辺境伯領での最終日は私の誕生日だったのだが、朝起きると左手の薬指に指輪があったので驚いた。
指輪は中央がエメラルドで、その両サイドに少し小さめのダイヤがあるデザインで、隣で既に起きていたウィルと指輪を交互に見ていたら、ウィルが笑いながら「驚いた?誕生日おめでとう」と言ってきた。
「驚きました、ありがとうございます嬉しいです」
「喜んでもらえて良かったよ」
「でもどうして指輪を?」
「結婚指輪は無理でも婚約指輪なら構わないでしょ、マリーも学園に入ったし教皇の件もあるし、俺のですよアピールしとこうかなって思ってね、土台はブレスレットと同じで俺が作ったからサイズ合わなくなったら言って」
「分かりました、大切にしますね」
その後、クレメント家の方々からもお祝いしてもらい、夕方にはお土産と共に王都の家に帰った。
家でもお祝いされ、私の12歳の誕生日は終わった。
夏休みはあっという間に終わり、また学園での生活に戻ったのだが、夏休みの間に幾つか変わった出来事があったらしい。
放課後いつものように生徒会室へ行くと、カイン様、アリス、セス様、ウィルが居て、私も席に着くとカイン様が話し出した。
「さて、今日からまた学園での生活が始まるわけだけど、夏休み中にあった事を教えておくね、まずリーベル公爵がキャサリン嬢のティルステア聖国行きを許可した」
「えっ!?カイン私それ初めて聞いたわ」
「私も知ったのは一昨日だったかな、リーベル公爵が留学の手続きをしているとニコラスから連絡があって知ったんだ」
ウィルが「今更どういうつもりですかね」と言うとカイン様が「エレナ嬢からの情報だと、どうやらキャサリン嬢を使って教皇と接触したいみたいだよ、流石に他国の新入りがいきなり教皇に会える程甘い国じゃないから今は大丈夫だけど、キャサリン嬢はマリアンヌと知り合いだから、もしかしたらがあるかもね」と答えた。
「リーベル公爵はこの国を荒らしたいんですか?」
「私が王太子になってしまったから、自分の首を心配するあまり、国が荒れても最終的に自分が無事なら良しとしてるんじゃないかな、いっその事リーベル公爵と教皇には仲良くしてもらって外患罪あたりで処分出来るのが理想なんだけど」
「では泳がすんですか」
「うん、エレナ嬢に頼まれてるクロードの件もまだだからね」
ウィルとカイン様の話を聞いていた私は、カイン様のその発言に「そういえばクロードは見つかったんですか?」と尋ねた。
「叔父上が見つけてくれたよ、今はティルステアにある大聖堂の地下牢に居て、しかも操られていないらしい」
「えっ、そうなんですか!?」
「まぁ驚くよね、叔父上によると彼は元々帝国の人間だから神術が効きにくいみたいだよ、しかもエレボスの力が届きにくいこちらの大陸での事だったし、神杖が近くになければ正気でいられるんだって」
「それなら今後どうするんですか?」
「クロードには悪いけど自力で脱走してもらう事にした、今は叔父上とエレナ嬢がクロードを説得中、ただそれだと神術がかかりっぱなしだから、1度隣のユグナーティス王国の方に逃げてもらってからこっちで解除する予定にしてる、後はクロードが私達を信用出来るかの問題だね」
「そうだったんですね、分かりました」
私がそう言うと、カイン様は「あとねマリアンヌ、落ち着いて聞いて欲しいんだけど、夏休み中に君の友人2人はエレナ嬢の予想通り、ティルステアの依頼を受けた奴らが攫いに来たよ」と言った。
「え…でも私、今日2人に会いましたけどそんな話聞いてません」
「リリアン嬢の方は叔父上が回収したからそもそも気付いてないと思う、クリスティーナ嬢の方はニコラスが対応して口止めしてるから自分からは話さないと思うよ」
「そうですか…」
「マリアンヌの時と違って2人組だけだったらしいから、失敗しても構わないくらいのつもりだったのかもね、ニコラスも訓練を受けてない一般人だったって言ってたから」
カイン様がそう言うと、ウィルが「また随分雑になりましたね」と言い、カイン様は「マリアンヌの時にそこそこ捕まえたからね、人が足りてないんじゃない」と笑顔で返していた。
「そういう訳だから、ニコラスは今後もリリアン嬢とクリスティーナ嬢の2人となるべく一緒にいてもらう事にしたよ、特に来月は学園祭もあるし、外部の人間が入れるからね」
「学園祭は何をするんですか?」
「生徒会は当日の見回りくらいかな?何か出し物がしたければ企画を出してもらって、私が問題ないと判断すれば基本何でも出来るよ」
カイン様がそう言うと、アリスが「去年は魔道具科の作品展示や女装コンテスト、魔法研究科の発表とか色々あったわ」と教えてくれた。
そして私は、明らかに異彩を放つ企画について尋ねた。
「女装コンテストって…まさかアリス…」
「私の企画よ!大盛況だったわ」
「ちなみに1位はアルで2位はウィルだったよ」
「ちょっ、カイン様バラさないで下さい、マリーが興味持つじゃないですか!」
「今年はないんですか?」
「ほらぁ…」
「マリアンヌ、今年開催したとしてもウィルは出ないと思うから、去年の写真で諦めてくれないかな」
「はい、それで構いません!」
「俺は良くないです!というかいつの間に写真なんて撮ったんですか」
「魔道具科が作ってたから借りたんだよ」
「くっ…俺の写真をマリーに渡すなら、カイン様も自分の写真アリス様に渡して下さいね」
ウィルが自棄になってそう言うと、カイン様は「じゃあ交渉成立だね、ちなみに私の写真は既にアリスが持ってるよ」と笑っていた。
後日、アリス経由で貰った写真には、ウィルの母親のコルネリア様そっくりの美少女がいて、あまりの本気度に驚いていると、アリスがアルベール殿下とカイン様のも見せてくれた。
アルベール殿下はご令嬢が自信をなくすレベルの仕上がりで、カイン様は流石に女装感はあれど、ただの美女だった。




