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72話 クレメント辺境伯領1


学園が夏休みに入り、ウィルと約束していたクレメント辺境伯領へ行く日がやってきた。

私は夏休み開始日に家に帰ったので、ウィルが家まで迎えに来てくれたのだが、馬車から降りたウィルに「マリー、会いたかった」と抱き締められたと思ったら、ウィルのお母様のコルネリア様も降りてきて、ウィルごと私を抱き締め「マリーちゃん久しぶりね、会いたかったわ」と言った。完全に似たもの親子である。


「ちょっと母さん、俺ごと抱き締めるのはやめてよ」

「嫌ならマリーちゃんを放せばいいでしょう?」

「は?やだよ」

「なら我慢しなさいよ、私帰省中はマリーちゃんを愛でると決めてるんだから」


母子でそんな言い合いをしていると「お前達何してるんだ、マリアンヌちゃんが困ってるだろ」とバーナード様が声をかけ、バーナード様の後ろからセス様も顔を出したので驚いた。


「セス様?なぜここに?」

「最近アルヴィン様がカイン様のそばにいて下さるので、空いた時間で修業し直そうと思いましてね、私も辺境伯領に行く事にしたんです」

「実技大会で俺に勝てなかったしな」

「それ言わないで下さいよ、そもそもウィルさん強くなり過ぎてませんか?俺もうちょっといい勝負になると思ってたのに」

「俺ヴィンス先生に師事してるから」

「あの先生強いんですか?」

「強いよ、俺勝てなかったもん」

「うわぁ、流石アルヴィン様のご友人…」


私はウィルとセス様が話し込みだしたので、コルネリア様に「あのお義母さん、どうやって辺境伯領まで行くのですか?」と尋ねた。

すると「馬車で移動なんてしたら時間がかかって仕方ないから、バーナードが馬車ごと転移魔法で連れて行ってくれるわよ」と答えてくれた後、バーナード様に「あなた、そろそろ行く?」と話しかけた。


「そうだな、じゃあ馬車に乗ってくれ」


バーナード様にそう言われ、私、ウィル、セス様、コルネリア様は馬車に乗った。

バーナード様が扉を閉め、馬車ごと転移ってどうなるのかと思っていると、少しだけ揺れを感じ、外を見ればもう違う景色だった。

馬車から降りるとお城があり、王都の城とは違い城塞といった感じだった。

私が驚いているとウィルが「辺境伯領は国境が近かったり、魔物の出る森があったりして、王都より危険なんだ、他の国境沿いの領地もこんな感じだよ」と教えてくれた。


その後私達は城塞の中に入り、ウィルのお祖父様で、前クレメント辺境伯のブランドン・クレメント様に会ったのだが、見るからに軍人と言っていいガタイがよく厳格そうな方だった。


「お父様、ただいま帰りましたわ」

「お帰りコルネリア、バーナードも変わりないか?」

「はい、相変わらずです」

「ウィルとセスも元気そうだな、それで、そちらのお嬢さんがウィルの婚約者か?」


ブランドン様にそう聞かれたので、私が挨拶をすると優しい笑みで「儂はブランドンだ、こちらで何か困った事があれば儂に言うといい」と言って頭を撫でてくれた。

私は見た目が厳格そうなだけで、優しい方なんだなと思ったのだが、ウィルやセス様が信じられないという顔をしていたので、どうやら本来の対応と違うらしい。


その後、男性陣は訓練に参加しろとブランドン様に連行され、私はコルネリア様に城塞の中を案内してもらっていた。

中庭に差し掛かったところで、白い狼の姿の上位精霊であるフィンと遭遇し、そのすぐ後にウィルのお兄様のフレッド様と見知らぬ女性が一緒に現れた。


「あら、フレッドにミラちゃんどうしたの?」

「前に会った時にマリアンヌちゃんにミラを紹介すると言ったから、中庭でお茶でもどうかと思って準備してたんだ」

「貴方相変わらずタイミングが良いわね」


コルネリア様がそう言うと、フィンが「私が先に偵察しているから当然だ」と呟いていた。


こうして私とコルネリア様は中庭で少し休憩をする事にし、フレッド様の奥さんのミラ様を紹介された。

ミラ様は亜麻色の髪に金色の瞳の加護持ちの方で、年齢はフレッド様の1つ上になるそうだ。


「フレッドとミラちゃんは4月に結婚した新婚さんなのよ」

「ミラとは小さい頃からずっと一緒に居るからあまり新婚感ないけどね」

「そうなんですか?」

「私もここの騎士団所属なのよ、治療班だけどね」

「なるほど、幼馴染なんですね」


そんな感じで話していると、ミラ様が突然「ねぇマリアンヌちゃん、顔触ってもいいかしら」と聞いてきたので「あ、はい、構いませんよ」と答えたらミラ様が豹変した。


「きゃ~~!すごーい!肌がもちもちなのにすべすべ、そして何度見ても可愛い!髪もサラサラなのね!」

「え、あの、ミラ様…」

「もう、様なんていらないわ!私とも仲良くしましょう!」

「そ、そうですね…ではミラさんと呼びます」

「それでいいわ、お義母さんこの後の予定は?」

「うちを案内し終えたら、マリーちゃんの為に用意しておいた服を1度着てもらおうと思ってるわ」

「私も行きます!」

「ちょっとミラ…落ち着いて」

「あら、ごめんなさい、私可愛いものを見るとついテンションが上がっちゃうのよね」

「マリアンヌちゃんごめんね、ミラはいつもこうなるから慣れてもらえると助かるんだけど」

「驚きましたが大丈夫です」


こんな事があったので、城塞案内にはミラさんも加わり、案内後はコルネリア様が用意してくれていた服が予想以上に多く、私はその日1日2人の着せ替え人形の様になった。


その日の夜、コルネリア様が「マリーちゃんが寝る部屋に案内するわね」と言ったのでついて行ったら、なぜか部屋の扉をノックしたので不思議に思っていると、ウィルが扉を開けて中から出てきたので驚いた。


「母さん…と、マリー?え、何、どうしたの?」

「こっちにいる間マリーちゃんは貴方の部屋で寝てもらおうと思って連れてきたのよ」

「「…はい?」」


コルネリア様の衝撃発言に、私とウィルは何を言われているのか分からなかった。


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