69話 国王と第1王子
※アルヴィン視点※
その日俺はカインに言われ一緒に城に来ていた。
カインはいよいよ国王である兄さんに自分を王太子にするよう迫るみたいだが、雰囲気からかなり緊張しているのが分かる、それもそうだろう、兄さんはぶっちゃけカインに我が子としての興味がない。
それは父親としてどうかと思うんだけど、義務で作った子供にはそうなるもんなのかねぇ、俺はそんな状況でも責務をこなせるカインに味方する事を決めたから、兄さんが渋っても結果は変わらないんだけど、ただ俺が出ると今後色々ややこしくなるから、出来れば何事もなくカインに決めて欲しいなぁ。
そんな事を思いながらカインにしか見えない状態で、カインの隣を歩いていると、兄さんの執務室に着いた。
カインが扉をノックするとバーナードさんが扉を開け、カインに「カイン殿下、時間通りですね」と話しかけた後、俺の方を見た。
相変わらずこの人の感知能力異常だな、これで俺の姿は見えてないんだからホント意味わからんと思いつつ、どうするのかと見ていると、カインがバーナードさんにしか聞こえないくらいの声で「叔父上に付き添ってもらってますけど通してもらえますよね?」と直球で聞いたのには驚いた。
バーナードさんも同じだったらしく驚いた表情をしていたが、すぐに元に戻すと「どうぞお入り下さい」と言い、部屋への入室が許可された。
部屋に入ると執務机で仕事中の兄さんと、そのそばに宰相のロナルドが立っており、カインが執務机の前に立つと兄さんは顔を上げて「カイン、用件は何だ?」と聞いた。
「単刀直入に申し上げますと、私を王太子にして欲しいというお願いです」
「⋯は?」
「ですから王太子です、まだ決めていないでしょう」
カインがそう言うと兄さんは少し考えた後「なぜ今、しかもお前を選ばなければならんのだ」と言い出した。
「なぜ…ですか、それはもちろんこのままでは国が傾くからですよ」
「何のことだ」
「ティルステアの教皇がマリアンヌを寄こせと言ってきているのでしょう?」
「なぜお前は毎回教えてない事を知っているんだろうな、確かにその通りだがそれがどうした」
「どうしたも何もどうするおつもりですか?まだ何も手を打つ気が無いのでしょう、このままだと後手に回りマリアンヌを奪われ、陛下の想像以上の大事になりますよ」
カインがそう言うと兄さんは黙り、逆にロナルドとバーナードさんが口を開いた。
「失礼陛下、一応言っておきますが、もし私の娘を渡せばいいや等と判断された場合は、私は宰相を辞しますのでよろしくお願いします」
「なっ!?」
「あ、それなら私も言っておくことが、息子のウィリアムですが婚約者の事となると過激になるので、対応が遅いと教皇を暗殺ぐらいしてくるかもしれません」
「はあ!?そんな事をすれば戦争だぞ!」
「そうですね」
バーナードさんがしれっとそう言うと、兄さんは「…そうか、お前達はカインを王太子に推すのだな」と静かに言った後、しばらく悩んだ末「アルが王太子では駄目か?」と言った。
するとロナルドが「陛下、以前から申し上げてるではないですか、アルベール殿下は王に不向きです」と言い、それでも兄さんは「しかし私はアルに期待している」とカインの目の前で言ったので、流石にイラッとした。
もう面倒な事になっても俺が何とかすればいいと思ったので、カイン以外にも俺の姿が見えるようにして「アーノルド兄さん、あんたいい加減にしろよ」と言うと、兄さんとロナルドが驚いた。
「だ、誰だ!おい、バーナード何してる、捕まえろ!」
「ロン落ち着け、お前は初めて会うだろうが、この方はアルヴィン・フェアリード大公閣下だ」
「大公閣下!?…生きてたんですか」
「音信不通にしてて悪かったな、何せ6歳でここを追い出されたもんだから、城は信用出来なくてね」
「…本当にアルヴィンなのか?」
「あぁ、間違いないよ、久しぶり」
「お前どうして…」
「どうして今まで音信不通だったのに今更出てきたのかって?カインを王太子にする為に決まってるだろ」
「お前までカインにしろと言うのか」
「当たり前だろ、王の責務を間違いなく果たせる奴がいるのに、何を情に流されて王の器じゃない奴を王にしようとしてるのか、俺は理解出来ないね」
「叔父上…」
カインがそう言って申し訳なさそうにこちらを見ていたので、とりあえず頭を撫でておいた。
「ではお前はカインを王太子にしろと言うのだな」
「そうだ、今すぐな」
「…嫌だと言ったら」
「俺が精霊の寵愛者だというのを忘れたのか?天災を故意に起こす事も可能なんだぞ」
「ぐっ…」
「はぁ~…往生際が悪いなぁ、それならもういっそバージルの事バラして泥沼化させようか?」
「なぜ知っている!?」
「陛下、私も知っています」
「カインも!?」
「大公閣下、カイン殿下、すみませんがバージルとは誰の事ですか?」
「ロナルドが知らないのか、じゃあバーナードさんも?」
「知らないぞ」
「おい、やめろ!言わないでくれ!」
兄さんは喚いていたが、それを無視して「アルの側近をしているバージル・キャンベル伯爵令息は実は陛下の隠し子なんです」とカインがいい笑顔で暴露した。
それを聞いた2人が兄さんに詰め寄り、洗いざらい吐かせた後、カインが「私を王太子にして頂けないなら、もういっそバージルも交えた3人で、手段を選ばず王太子の座を争いましょうか?」と兄さんを脅した。
どうやらこれが1番効いたらしく、兄さんは「分かった、お前を王太子とする」と言い、ロナルドが用意した正式な書類にサインをした。
「どうもありがとうございます、陛下」
「お前は、私を殺すのか?」
「…何の事でしょう?」
「お前を王太子にすべきだというのは分かっていたんだ、しかし私はアルが可愛くてお前に何もしなかったからな、私を父と呼ばないお前を王太子にすれば、こんな私はすぐに殺されるのではと思っていたんだ」
「だから私が何度進言してもカイン殿下を王太子にしなかったのですか」
「そうだ、ロンには迷惑かけたな」
「確かに私は陛下を父として慕ってはおりませんが、殺したい程憎んでもおりませんので、私の事はいつ王位から退いても問題が起きない保険が出来た、とでも思って下さい」
「そうか、分かった、お前を王太子とした事は明日にでも発表しよう、それとアルヴィン、お前はこれからどうするんだ?」
「俺?別にどうもしないよ、これまで通りカインを助けてやるだけさ」
「式典や夜会には来ないのか?」
「兄さんマジで言ってんの?」
「生きてる事が分かったからな、どれか出てみないか?」
「気が向いたらな」
その後、兄さん達からの俺への質問を幾つか答えてその日は帰り、翌日には約束通りカインを王太子にする事が正式に公布された。




