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67話 期限


王誕祭翌日の朝、私の部屋に来た侍女のマーサが「奥様からです」と言って手紙を渡してくれた。

受け取った手紙を開封して読んでみると、話があるから今週の休日にウィルと一緒に家に帰ってきて欲しい、という内容のものだったので、私はその事を登校中にウィルに話した。


「お母様から話となると教皇の事ですかね」

「多分そうだろうね」

「ウィルは今週の休日時間大丈夫ですか?」

「うん大丈夫、一緒に行けるよ」


ウィルとそんな話をした日の放課後、生徒会室に行くとカイン様、アリス、ウィル、セス様が居た。

カイン様とアリスは同じソファに座り、セス様はその後ろに控え、ウィルはカイン様達の対面側のソファに座っていた。

私はウィルの隣に座るよう言われたので、そこに座るとカイン様に「マリアンヌ、昨日は大変だったみたいだね」と言われた。


「いえ、私は守ってもらうだけでしたので」

「ウィルとフレッドがいれば滅多な事にはならないと思ってたけど、無事で良かったよ」

「ありがとうございます、カイン様達の方はどうだったんですか?」

「あーうん、それね…」


カイン様が言い淀むとアリスが「あの変態教皇、思い出すだけでも気色悪いわ」と毒づいた。

アリスがそんな事を言うなんて何があったのだろうと思っていると、カイン様が説明してくれた。


「王誕祭の式典の後、いつものように夜会が開かれて今年は私とアリスも参加したんだ、丁度例の教皇も参加してたから様子を伺ってたんだけど、夜会中はまぁ…普通だったよ、問題なのはこの後でね、夜会の後マリアンヌの誘拐未遂について、陛下が呼び出して話を聞いたんだけど、誘拐しようとした事は認めた」

「認めたんですか!?」

「あぁ、だがあれは誘拐ではなく、こちらが契約違反をしたからマリアンヌを引き取りに来ただけだと言い出した」


カイン様がそう言うと、ウィルが「8人も諜報員使っといてよく言うよ」と言った。


「ウィルの気持ちも分かるけど、誘拐を指示した証拠の文書とかはないからね、言った言わないでは裁けないよ」

「カイン様、それで契約違反とは何の事ですか?」

「叔父上が話してた君の両親の結婚条件の事だ」

「えっ、でもあれは2人目の子供が生まれた場合の約束ですよね?」

「どうやら初めは生まれた子供が女児なら渡す条件だったのを、第1子が難産とかで次の子が望めない場合、公爵家に血の繋がった跡継ぎがいないと困る、という理由でこちらが2人目ならと提案した内容なんだ」

「それではまさか…」

「あの変態マリー欲しさに「第1子が女児でありながら、故意に次の子を生まないのは、我が国の聖女を奪う為の策略だったのか?」とか言い出したのよ!」


アリスがそう憤っていると、カイン様が「ちなみに私達は、叔父上に頼んで隣室から聞いていただけだから話に参加出来なくてね、教皇の対応をしたのは陛下と宰相のロナルドだけだよ」と教えてくれた。


「お父様…」

「それで色々聞くに堪えない話し合いの結果、マリアンヌが16歳の成人を迎えるまでにどうするか答えを出すという事でその日は終わったんだけど…」

「どうするも何も、それマリーを差し出す期限が延びただけですよね」

「そうだね、ウィルの言う通りだよ」

「…殺してきていいですか?」

「駄目だよ、それは最終手段だから我慢して」


カイン様の発言に驚いた私が「えっ、最終手段暗殺なんですか?」と聞いたら「最終判断が陛下だから、マリアンヌ1人と全国民となるとちょっとね」と言われてしまった。


「私と全国民ってどういう事ですか?」

「教皇が話し合いの時に、マリアンヌを渡さないなら聖女を攫った国に神聖魔法は使わない、全聖国関係者を帰国させると言い出してね、病気やけがはティルステア聖国が設置してる大聖堂や教会に頼っているから、それが無くなると死亡率が跳ね上がるんだよ」

「そういう事ですか」


私がそう言って俯くと、ウィルに手を握られたので彼の方を見ると、私の事を心配そうに見ながら「マリーは絶対誰にも渡さないから」と言われた。


「ウィル…」

「私も黙って見ているつもりはないし、教皇の狙いがハッキリした事で朗報かどうかはわからないけど、エレナ嬢が教皇に従うつもりがない事が分かったから、そろそろエレナ嬢と1度話してみるのもいいかもね」

「そうなんですか?」

「うん、何か言う事を聞かなければならない理由もあるみたいだけど、彼女自身は教皇を嫌ってるみたいだよ」

「エレナ様も何か弱みでも握られてるんですか?」

「おそらく何かしらはあるんだろうね、もし利害が一致すれば教皇を何とか出来るかもしれないし、まだ時間はあるから、期限が来る前になんとかしよう」


カイン様がそう言うと、ウィルが「具体的には何をするつもりですか?」と尋ねた。


「そうだね、とりあえず今のままだと私に出来る事が少ないから、陛下に私を王太子にするように言ってみようかな」

「カイン様、また随分予定を前倒しするんですね」

「だってセス、もたもたしてたらウィルが何かやらかしそうじゃない?」

「俺はまだ何もしてませんよ」

「まだ何もしてないだけでする気が無い訳じゃないんでしょ」

「…王太子になれそうなんですか?」

「叔父上にもお願いするし、ロナルドは私側だから今ならいけると思うんだよね」

「分かりました、カイン様が王太子になれたら、ギリギリまで勝手な行動はしません」

「良かった、じゃあ私も頑張って王太子の座を取ってこようかな」


その後カイン様は「どうやって陛下を説得しようかな~」と楽しそうに考えており、その様子を見ていると、何となくだが陛下が可哀想な事になりそうな気がした。


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