66話 王誕祭2
狼が首に噛みついたら動かなくなった男性を見て、一瞬死んだ?と思ったがウィルと一緒に近寄ると、首には血どころか噛み跡すら無かった事に驚いた。
そしてウィルが「気絶してる、兄さんだな」と言った瞬間、目の前に「ウィル悪い1人逃した、大丈夫だったか?」とバーナード様と顔が似ている赤毛の男性が現れた。
「あ、兄さん、全然大丈夫だよ」
「まぁお前は大丈夫だよな、そっちの彼女も大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です、ありがとうございます」
その後男性は王都警備の影に引き取られ、ウィルのお兄様と改めて挨拶をした。
「先程はありがとうございました、マリアンヌ・ガルディアスと申します」
「いや、寧ろ迷惑かけたね、俺はウィルの兄のフレッド・クレメント、よろしくマリアンヌちゃん」
私はウィルが狼の攻撃をフレッド様のものだと判断したので、いつの間にか居なくなっていた狼について挨拶ついでに質問してみた。
「あのフレッド様、1つ質問よろしいですか?」
「うん、全然構わないよ」
「あの白い狼って何ですか?」
私がそう質問した瞬間フレッド様は固まり、ウィルの方を見ると、何の事を言ってるのか分からないという表情をしていた。
「あ、あれ?いましたよね?大きな白い狼…」
「マリー何言ってるの?」
「ええぇ?」
私が混乱していると「ほらみろフレッド、この娘は私が見えると言っただろう」と声がしたのでそちらを向くと、フレッド様の隣にあの白い狼がいた…というか今喋った?
「マリアンヌちゃんもしかしてコレ見えてる?」
「コレとは失礼だな、見えてるに決まってるだろう」
「え、何で狼が喋ってるんですか?」
「ねぇ、さっきっからマリーと兄さん何の話してるの?」
「ウィル見えないんですか?」
「何が?」
どうやら白い狼が見えてるのは私とフレッド様だけで、ウィルには姿どころか声も聞こえてない様なので、どうやって説明しようかと思っていると、フレッド様が「フィン、ウィルにも見えるようにして」と言った。
フィンと呼ばれた白い狼は「仕方ないな」と言うとウィルに向かって1回吠えた。
するとどうやらウィルにも姿が見えたらしく驚いていた。
その後私達は近くにあったベンチに移動し、私はベンチに座らされ、ウィルとフレッド様は私の前に立ったままだが、なぜか私の膝の上に狼が頭を乗せて寛いでいる。
「ねぇ兄さん、何でマリーの膝の上を犬が独占してんの?」
「私の見た目は犬ではなく狼だ、それに正確には精霊だ」
「精霊なんですか!?初めて見ました」
「お主のように祝福を持っていても、姿が見えるのは上位精霊か精霊王様とその子供くらいだからな、そうそう見られるものではない」
「ちなみにフィンは上位精霊だよ」
「兄さん何で今まで教えてくれなかったの?」
「精霊がいるだなんて言って信じるか?それに父さん達に話すなって言われてたし」
「そうなんだ…」
フレッド様は「俺の話はウィルが辺境伯領に帰ってきた時にでもしようぜ」とウィルに言うと「マリアンヌちゃんも来るんでしょ?」と私に話を振ってきた。
「あ、はい、行きます」
「じゃあその時は俺の奥さんも紹介するね、母さん並みの歓迎を受けると思うけど」
「覚悟しておきます」
「ほら、フィンいつまでそうしてるんだ行くぞ!」
「この娘のそばは休憩に最適なんだ、もう少しいいだろう?」
「何言ってんだ、2人のデートの邪魔になるだろ!」
フレッド様はそう言うと私からフィンを引き剥がして去っていった。
ウィルはフレッド様達がいなくなると「何か色々あったけど、とりあえず夕日見に行く?」と手を差し出してくれたので、私はその手を取った。
高台に着くと丁度綺麗に夕日が見えていたので、2人で並んで眺め、私は今日1日を振り返ってウィルへのご褒美には程遠いなぁ、と思いながらウィルに寄りかかった。
「ねぇマリー、最近何かあったの?」
「え?何がですか?」
「実技大会のあたりから何か積極的だなぁって感じるんだけど」
うん、普通に考えて今まで何もしなかった私が行動し始めたら不思議だよね、ウィルが気になるのも当然なので、私が何て言おうか迷っていると「言いたくなければ言わなくてもいいよ」と言われたので焦った。
「言いたくないんじゃないんです、何て言ったらいいか迷ってて」
「そうなんだ、じゃあ急に積極的になったのは何で?」
「それは、ウィルは私に色々してくれるのに、私何もしてないので」
「俺が好きでしてる事だしマリーは気にしなくていいのに」
「それと、ニコラス様に私が入学する前のウィルの様子とかも聞きまして」
「ニコラス…あいつ余計な事を」
「それで、その、私の為に頑張ってたウィルにご褒美をあげて欲しいとも言われまして、でもウィルって何をしたら喜んでくれるのか分からないので」
「マリーがしてくれる事なら何でも嬉しいよ」
「それが1番困ります、とりあえずそういう訳で少し積極的になろうとした結果が、ここ最近の私の行動になります」
私がそう言うとウィルは「じゃあマリーは俺の喜ぶ事が知りたいの?」と聞いてきたので「そうです」と答えた。
「ふ~ん…じゃあ今のままもっと甘えて欲しいかな」
「た、例えば?」
「俺へのお願いなら何でもいいよ、俺はマリーを甘やかしたい」
「既にかなり甘やかされてると思うのですが」
「全然足りない」
「足りない⋯ですか」
「あ、無理しなくていいからね、何かしたいとかされたいって思った時に俺を頼ってくれたらそれでいいから」
ウィルは優しいのでそう言ってくれるけれど、ウィルが喜ぶならしてあげたいという気持ちもあるので、恥ずかしさを投げ捨て、ウィルがどういう反応をするのかに集中して「それじゃあ、少し寒くなったから、ウィルに抱き締めて欲しいな」と言ってウィルの真似して首を傾げてみたら、ウィルにすぐ抱き締められたのでどんな顔をしてるのか分からなかった。
ウィルが私を抱き締めたままずっと黙っているので「あの、今の駄目でした?」と聞いてみると「駄目じゃない、マリーが可愛すぎてどうしていいか分からない」と言い出した。
「えっあの、ウィル、大丈夫?」
「⋯ごめん大丈夫、自分で言ったのに実際やってもらったら想像以上で驚いただけだから」
「そ、そうですか」
「マリーさっきの恥ずかしかったでしょ」
「まぁ、それなりに⋯」
「それなのに俺の為にやってくれたんだ」
「そうですよ」
私が答えるとウィルは「すごい嬉しい、ありがとう」と満面の笑みで言ってキスしてきた。
私がご褒美貰ってどうするんだ!と思ったけれど、これに関してはウィルに勝てる気がしないので諦めた。
その後ウィルが「これ以上外にいると風邪ひきそうだからそろそろ帰ろうか」と言ったので一緒に学園に帰った。




