65話 王誕祭1
王誕祭当日、事前に外出許可は取っておいたので、今日は私服でウィルと街に出かけた。
そもそもウィルをデートに誘ったのは、ニコラス様にウィルに何かご褒美をあげてと言われたからだったのだが、変態教皇のせいで最早デートというより私を使って諜報員を誘き寄せるミッションの様になっている。
しかも驚いたのは教皇側の本気度で、学園から出た瞬間少し寒気がした。
ウィルが居るからなのか寒気を感じたのは一瞬だったのだが、ブレスレットでウィルもそれが分かるようにしたので「あ~…これがマリーの言ってた精霊の警告ってやつ?」と聞かれた。
「そうですね、まさか学園から出た瞬間から来るとは思ってませんでしたが」
「向こうも本気って事か、いっそ尾行してる奴らに俺とマリーの仲の良さを教皇に報告してもらう?」
ウィルがそんな事を言うので、冗談だと思った私は「それもいいかもしれませんね」と言ったのだが、言った瞬間腰を抱かれてキスされる事になった。
まさか本気だと思ってなかった私は真っ赤になったのだが、ウィルは何事もなかったかのように私の腰に手を回したまま歩き出した。
「さっきの本気だったんですね」
「冗談かと思った?」
「はい、その、一応狙われてる身なので」
「大丈夫だよ、今日マリーを守ってるのは俺だけじゃないから」
「そうなんですか?」
「うん、カイン様が父さんにマリーが狙われてる事を言ったらしくてね、今朝部屋に父さんと兄さんが来たから驚いたよ」
「カルロス様ですか?」
「あ、そっちじゃないよ、1番上の兄さんのフレッドの方、王都の警備や影は使えないから辺境伯領から引っ張ってきたんだって、全部片付いたら紹介するね」
「分かりました、でも良かったんですか?そんなわざわざ来て頂いて」
「マリーが狙われてるのに何もしなかったとなると、後で母さんがキレるからこれでいいんだよ」
「そういえばお義母さんと最近お会いしてないので、久しぶりに会いたいです」
「夏休みに辺境伯領行くでしょ、その時会えるよ」
「あ、そうですね!楽しみにしてます」
そんな話をしながら歩いていると、ウィルに「出店もあるけどどうする?行ってみる?」と聞かれたので「はい、行ってみたいです」と答えると、出店が並んでいる通りへ連れて行ってくれた。
「ウィルはこの辺りに何度か来た事があるのですか?」
「うんあるよ、カイン様割と出歩くし、ニコラスの新店調査に付き合わされた事とかもあるからね」
「カイン様って外ウロウロするんですね、意外です」
「本人曰く「城の中が一番危険だよ」らしい」
「前から不思議だったんですが、カイン様ばかり狙われるのってなぜですか?」
「優秀過ぎるからじゃないかな、傀儡になんて絶対出来ないタイプの人だし、逆にアルはチョロいから生かされてるよね」
ウィルのそんな話を聞いていると急にウィルが私の頭を抱き寄せたので何事かと思ったら、前にいた人が倒れた。
「えっ!?」
「神経毒か、マリーを狙うなんて手段選ばなくなってきたなぁ」
「はい!?え、じゃああの人私の代わ「移動するから捕まってね」」
私の言葉に被せてウィルはそう言うと、私を横に抱きかかえて路地に入り、建物の屋根の上まで跳躍した。
屋根の上から先程の路地を見下ろすと、2人組の男性が通過していき、ウィルが「まだ2人も残ってたか」と呟いた。
「あの、ウィル今のって…」
「あれがマリーを狙ってるティルステアの諜報員だよ、ここに来るまでに兄さんが6人も捕まえてるのに、まだ2人も残ってたんだね」
「いつの間に…あっ!私の前にいた人はどうするんですか?」
「治してあげたいかもしれないけど、ティルステアがこの国で騒ぎを起こした大事な証拠だから我慢してね、あれは動けなくなるだけでしばらくすれば元に戻るから命の危険は無いよ」
「そうなんですか…分かりました」
私がそう言うとウィルは「じゃあこのまま屋根の上使って移動しようか」と言って私を抱きかかえたまま移動し始めた。
その事に、最初こそお姫様抱っこされてると浮かれていた私だが、ウィルの身体能力だと普通に絶叫マシーンくらいの怖さがあり、特に結構な高さから飛び降りられた時は宙に浮く感覚がしたので、思わず全力でしがみついてしまった。
暫くしてウィルが移動するのをやめて立ち止まったので、顔を上げるとウィルが「ふふっ…ごめんマリー怖かった?」と言いながら笑いをこらえていた。
「わざとあんな移動したんですか?」
「必死でしがみついてくるマリーが可愛くてつい、ごめんね」
「ぐぅっ…許します、ところでここどこですか?」
「あぁ、あっちの広い道に出たら分かると思うよ」
ウィルはそう言うと私を下ろし、手を引いて広い道に出た。
するとそこは数年前に第1章のイベントが起きた広場のそばの道で、私達は手を繋いだまま広場へと足を踏み入れた。
「ここはあの時と変わらないんですね」
「あの時も王誕祭だったからね」
「どうしてここに?」
「2人で夕日を見に来ようって約束したでしょ」
「覚えてたんですね」
「もちろん、マリーとの約束は忘れないよ」
ウィルと一緒にそんな話をしながら、夕日の見える高台の方へ歩いていると、ウィルが急に立ち止まり、振り返ったので、私もウィルの見ている方を向くと、息を切らした男性が1人立っていた。
その男性が1歩こちらに近付いたのを見たウィルは、私を背に庇うと「俺らに何か用?」と問いかけた。
男性は怯えたような目で私達を見ると「お前らいったい何なんだ!」と喚き出した。
「いやいや、そっちこそ何なんだよ」
「1人の少女を攫うだけの簡単な任務のはずだったのに、仲間は次々に意識を失うし、神聖魔法も効かないし何なんだ!魔女か?お前魔女なのか!?」
「失礼な奴だな、マリーはどこからどう見ても天使だろうが」
「ちょっ!ウィル、今ふざけてる場合じゃないですよ」
そんな事を言っていると、男性が短剣を取り出し、こちらに襲い掛かろうとしたのだが、突然白い大きな狼が男性の首に噛みつき、気付けば男性は意識を失っていた。




