49話 変化
ウィルが午後の授業時間を費やして作業した結果、ブレスレットは無事完成した。
完成はしたのだが、位置情報の精度が上がったなんてもんじゃない代物になってしまっていたので、正直かなり驚いた。
まずウィルが私の位置を知ろうとすると私に分かるようになった、これに関してはヴィンス先生が「いくら同意があっても覗き見は駄目ですから」と言い、私が「覗き見?」と分かっていなかったので、ウィルが「実際見た方が早いよ」と言ってブレスレットを交換してくれた。
ウィルのブレスレットを借りて魔力を使うと、脳裏にブレスレットの位置と周辺の映像が浮かんだ。
しかもこれ相手が動くと勝手に追っていくので、位置情報付き自動追尾監視カメラである、古代魔法の技術の高さがヤバ過ぎて若干引いてしまった。
「映像はマリアンヌさんの方に決定権がありますので、見られたくない時は拒否して下さい」
「分かりました」
「しかし1回で完成させちゃいましたね、流石ウィリアム君」
「先生の説明が分かりやすかったので」
「なら良かったです、では私は帰りますので」
「はい、ありがとうございました」
ヴィンス先生が去った後、私も読み終わった本を片付けてウィルと一緒に図書館を後にした。
帰る途中、中庭に面した通路を歩いていると、中庭のベンチにアルベール殿下が1人でいるのが見えた。
私が「アルベール殿下だわ」と言うとウィルが「あいつなんで1人なんだ?ごめんマリー、ちょっとアルの所寄っていい?」と聞いてきたので了承した。
私達は通路から中庭へ移動すると、アルベール殿下に近寄りウィルが「アル」と声をかけた。
「ウィル、マリアンヌ嬢も一緒か」
「お前なんで1人なの?学園内とはいえ王子が不用心すぎるぞ」
「さっきまでバージルがいたんだが帰らせた」
「何でまた」
「なぁウィル、エレナ嬢は何かあるのか?」
突然のエレナ様に関する質問にウィルは黙ると、私を手招きして近くへ呼び「ちょっと場所変えるよ」と言って転移した。
ウィルが私とアルベール殿下を連れて転移した先は、見知らぬ部屋だったのだが、部屋を見たアルベール殿下が「なんだお前の部屋じゃないか」と言ったので私は居た堪れなくなった。
「ここウィルの部屋なんですか?」
「うん、寮の俺の部屋」
「それ、私いたら駄目なやつですよね?」
「そうだね、でも今はいて欲しいかな」
ウィルの発言に私が「なぜですか?」と聞くと「俺は防音魔法使えないから」と返ってきたので、私は1人で帰る事を諦めた。
私達は椅子に座り、私が防音魔法を使うとアルベール殿下の視線を感じたが、特に何か聞かれることは無かった。
ウィルが「それで、何かあったの?」と聞くとアルベール殿下は「父上からキャシーとエレナ嬢を必要以上に親しくさせるなと言われた」と話し出した。
「陛下か、理由は聞いたのか?」
「聞いたが、その、彼女が異世界人で、不審な動きをし始めたからだと言われた」
「不審な動きって?」
「学園で認識阻害を使用し、その間接触された生徒が精神を病んだと聞いた」
「それじゃあアレか、アルやキャサリン様に何かされる前に距離を取れって事?」
「そういう事だ」
「ちなみにどうやって精神病ませたか分かってんの?」
「いや、方法が分からないから今はとにかく距離を取れと言われた」
ウィルは「そうか」と言うと黙り、私は陛下が、アルベール殿下に包み隠さず情報を教えている事に内心驚いていた。
特に異世界人という情報は国家機密だと思うし、王太子でもないのに教え過ぎでは?と思うと同時に、以前カイン様とアルヴィン様が、陛下はカイン様よりアルベール殿下を可愛がっていると話していたのを思い出した。
暫くすると沈黙に耐えかねたのか、アルベール殿下がウィルに「お前何を知ってるんだ?」と質問した。
「何って、さっきアルが話した内容は既に知ってたよ」
「何で教えてくれないんだ」
「教えてどうするんだよ、さっき1人でいたのだって、どうせお前が馬鹿正直にエレナ様と距離を置こう、とかキャサリン様に言って喧嘩になったんじゃないの?」
「何で分かるんだよ」
「顔にそう書いてんだよ」
「えっ、アルベール殿下キャシーと喧嘩しちゃったんですか?」
「あぁ、ウィルの言った通りだ、キャシーに話したらエレナ嬢はそんな事しない、何かの間違いだって言って聞かなくてな」
「そりゃそうだろ、それで、お前はこれからどうするの?」
「わからん…」
アルベール殿下はそう言うと下を向いて黙ってしまった。
ウィルはため息を吐いた後「たぶんキャサリン様を説得するのは難しいだろうな」と言った。
「なぜですか?」
「アルの言う事よりエレナ様を信じたからだよ、思ってた以上の信頼関係だよね」
「そういえばそうですね」
「アルに出来る事があるとするなら、まず危険を承知で今まで通りに過ごす、でもこれは陛下が許さないだろうな」
「そうですね、既に忠告されてますし」
「後はキャサリン様が折れるまで待つ」
「待つだけですか?」
「うん」
「やはり待つしかないのか…?」
「待つしかないよ、厳しい事言うけど、キャサリン様が他国の要人に心開きすぎなのも原因だからな」
「分かってる」
その後アルベール殿下は「時間を取らせて悪かったな」と言うと部屋から出て行った。
「ねぇウィル」
「何?」
「なぜカイン様に相談するように言わなかったの?」
「言っても同じだと思ったからさ」
「同じですか?」
「うん、アルから聞いた事はカイン様に報告するけど、現状エレナ様を断罪する程の証拠は無いし、キャサリン様自身がエレナ様を信じちゃってるんじゃ、俺らに出来る事は無いからね」
「そうですか」
「ところでマリー」
「はい?」
私がそう返事をすると、ウィルは笑顔で「俺の部屋に俺と2人っきりってどんな気分?」と聞いてきた。
ウィルに聞かれたことで変に意識してしまった私は、立ち上がって「か、帰ります!」と言ったのだが、ウィルは私の手を取ると「帰っちゃうの?」と首を傾げてきた。
「それをすれば私が断らないと分かっててしてますよね」
「断ってもいいんだよ」
私が「断れません…」と言うとウィルに「マリーのそういう俺に激甘なところ大好きだよ」と言いながら抱き締められた。
誤字報告ありがとうございます、助かります。




