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4話 そして王子のフリをする

※ウィリアム視点※


俺は今、ガルディアス公爵家の馬車で城から程近い場所にあるガルディアス公爵の屋敷に向かっている。

理由は先日行われるはずだったマリアンヌ・ガルディアス公爵令嬢とのお茶会のやり直しだ。

しかし、本来の俺、ウィリアム・クレメントに公爵令嬢とお茶会する予定なんて無い。


事の発端は半年前


「ウィル!何も聞かずに俺を助けてくれ!」

「は?嫌だけど」

「何でだよ!!」

「理由が言えない第2王子様関連の問題とか、厄介事の臭いしかしないからだよ」

「ぐっ…じゃあ、理由を話すから協力してくれ」

「内容による」


そんな感じでアルから聞き出した理由というのが、数日前、この国の第1王妃ヘレナ・リーベル・トワイライト妃殿下の兄にあたるパトリック・リーベル公爵が、6歳になる自分の娘をアルの婚約者にしようと陛下にゴリ押ししてたらしい。

ちなみに、何でそんな話があった事を知っているのかを問いただすと、陛下の執務室で隠れて遊んでたら聞いてしまったと…こいつ、さてはまた王子教育さぼりやがったな、このヤンチャ王子め。


「父上が公爵と部屋を出た後、父上の護衛で部屋に一緒に居たバーナードに見つかってめっちゃ叱られたけどな」

「当たり前だ、だけどアルの婚約者が決まるだけなら俺何もする事なくない?」

「まだ続きがあるんだよ」


その続きというのが、リーベル公爵の申し出に宰相のガルディアス公爵が待ったをかけたらしい。

それはそうだろう、第1王妃の実家だから発言権がただでさえ大きいのに、そこの令嬢が第2王子の婚約者になったらパワーバランスが崩れてしまう。

色々な政治的駆け引きの末出された条件が、アルと歳の近い伯爵以上の令嬢とのお茶会だ。

色々精査され20名に絞られた彼女たちと、週1ペースで顔合わせをし、全員とお茶会の後、アルが誰が良いかを決めるらしい。

ここまで聞いて俺は嫌な予感がした。


「おいアル、お前の頼みってまさか…」

「俺の代わりに俺のフリして茶会に出てくれ、頼む!」

「絶対嫌だ!断る!」

「そんな事言わずに頼まれてくれ!絶対悪い様にはしないし、もしウィルが何かしたい時は俺の立場と権力全部使って手伝うから!」

「…そこまで必死なのはカイン様の為か?」

「仕方ないだろ、リーベル公爵のせいで今ですら兄様が苦労してるのに、これ以上なんて無理だ」


カイン様とは第1王子カイン・リーベル・トワイライト殿下の事で、陛下と第1王妃の子供になるので、リーベル公爵派の貴族が群がったり、リーベル公爵関係のシワ寄せが来やすい立場になっている。

ちなみにアルは第2王妃シンシア・クレメント・トワイライト妃殿下の子供なので異母兄弟だ。


「何で俺なんだよ」

「だってお前変装の魔法で俺そっくりになれるだろ?」


そうなのだ、自分で言うのもアレだが、俺の母親とアルの母親は姉妹なので、母方に似ている俺達の顔は今の所凄く似ている。

以前ふざけて、教えてもらったばかりの変装魔法で、髪と瞳の色を変えて入れ替わったら、魔法師団長のエリック様とうちの父親以外誰にもバレなかった。


「それに、俺はまだ兄様やウィルみたいに上手く王子を演じれないから、下手に言質を取られて兄様に迷惑をかける様な事はしたくないんだ、何ならリーベル公爵令嬢の日だけでも良いから代わって欲しい」

「はぁ〜…分かったやるよ」

「本当か!」

「あぁ、ただし条件付きだ、まず1つ、令嬢は全員俺が対応する、報告はするから誰と何を話したかは全部覚えろ、後日話しかけられて知らないとかは絶対無しだ」

「分かった」

「そして2つめ、全員との茶会が終わったら、陛下と宰相と俺の父さんに入れ替わりを告白して、カイン様の婚約者が決まるまで自分も婚約者を決めるつもりはないと言え」

「なぁ、それって…」

「間違いなく叱られるけど、この3人に言えばいい感じに終わらせてくれるだろう」

「分かった、それでいこう」


そんな事情で俺はウィリアム・クレメントではなくアルベール・クレメント・トワイライトとしてお茶会に参加する事になった。

それからの俺は週一でアルと入れ替わり、ご令嬢との顔合わせお茶会をこなして、アルに報告し元に戻るという事をしていった。

ご令嬢といえど20名ともなれば色んなタイプが居て、プライドの高い娘に箱入り過ぎて心配になる娘、喋り出すと止まらない娘に、アルと同じこの顔にやられて上の空、なんて娘も居た、中には権力目当てが透けて見える野心的なお嬢さんも居た。

10人目に問題のリーベル公爵令嬢が居たんだけど、父親がアレとは思えない程素直な良い娘で、こんな形でなければアルの好きそうな娘だと思った。

その後の令嬢達も特に問題なく終わっていき、余裕が出てきた為、1人くらい俺好みの令嬢が居たりしないかなぁなんて考えが出てきた。


(地位や権力に左右されずに俺を好きになってくれる、美人系に成長しそうな子居ないかなぁ…ってそもそもアルのフリをしてるのに、俺だと分かる位俺が好きな娘居たら奇跡か運命だな。)


そんなバカな事を考えてると、20人目のガルディアス公爵令嬢が宰相と一緒に到着した。

一瞬驚きのあまり王子仕様の外面を落としかけた、は?宰相何考えてんの?今までのご令嬢も皆外見可愛らしかったけれど、この娘レベル違い過ぎない?黄色強めの輝かしい金髪、宰相と同じ深い青色の瞳…だけどなんかよく見たらキラキラしてるし何ソレ、目は大きいし、顔立ちはこの歳で美人路線を確定している…正直、かなり好みである。

しかも、さっきからすっごい顔ガン見されてるんだけど、え?何?アルの顔好きなの??俺も顔一緒だから俺見てくれないかな?


「殿下、お待たせしました」


宰相が話しかけてくれたおかげで意識が現実に戻って来た、思考回路がちょっとヤバかったぞ俺、仕事しろ仕事。


「私も先程来た所だから大丈夫だよ、それにしても可愛らしいお嬢さんですね」

「そうでしょう!妻に似て可愛いんですよ、本当は何処にもやりたくないんですが、殿下でしたら我慢しますよ」


おおぅ、俺、ロナルド宰相ってクールなイメージだったんだけど、娘溺愛してんだな…あとアルなら我慢って事は他は…?いやいや、今は仕事仕事。

宰相には微笑で返事をしておき、俺はあえて子供扱いして彼女に声を掛けた。


「初めまして、小さなレディ」


すると俺をガン見していた彼女は綺麗な所作で挨拶してくれた。


「お初にお目にかかります、ガルディアス公爵の娘マリアンヌと申します…ずっとお会いしたかったです、ウィリアム・クレメント様」

「…っえ?」


え?俺??確かに今俺の名前が呼ばれたけれど、俺は今アルのはずで、魔法がとけてバレたのかと思ったけれど、魔法はかかったままだった。

そもそも俺と彼女は間違いなく初対面だ、会いたかったってどういう意味だ、期待して良いのだろうか。

とにかく話を聞こうと思ったら、彼女が意識を無くすのが見えたので、気付けば倒れる前に抱きとめていた。


その後彼女は宰相が慌てて家に連れて帰った為、容体が気になり過ぎた俺は、アルに頼んで翌日少しだけ入れ替わらせてもらい、宰相の執務室を訪ねた。

宰相にお茶会やり直しの約束を取り付け、俺はアルに彼女に正体がバレた事と、やり直しのお茶会も俺が行き、事情を説明した上で謝罪と告白してくると伝えた。


「別にいいけど、俺の婚約者候補なのにウィルが一目惚れするなんてな」

「なんだよ、俺のしたい事を手伝ってくれるんだろ」

「約束だからな、ちゃんと手伝うから安心しろ」

「予定狂わせてしまって悪いな」

「叱られるのは変わらないんだから今更だろ、頑張れよ」


それから数日後、宰相から彼女の体調を考えてお茶会場所を公爵邸にする事と、彼女の母親も同席する事の許可をお願いされたから了承しといたぞ、とアルに言われた。


そんなここ半年の出来事を振り返っていたら、馬車が停止し扉が開いた。


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