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48話 古代魔法


移動しながら私が「前に来た時もそうでしたけど、第2図書館って全然人が居ないですよね」と言うと、ヴィンス先生が「ここは資料や専門書メインですからね、余程熱心な生徒か講師しか来ませんよ、借りて帰る人の方が多いですし」と教えてくれた。


閲覧席に着くと、ウィルを真ん中に両サイドに私と先生が座った。

ヴィンス先生が「ウィリアム君相手に古代魔法の危険性については今更なので省きます、何故使えるようになりたいのか聞かせて下さい」と言うと、ウィルは「分かりました」と言って話始めた。


「最初は、マリーが今着けているブレスレットを改良する為に調べていただけなんですけど、アルヴィン様に会って気が変わったんです」

「アルヴィンですか?」

「はい、今までは精霊とか信じてなかったので、現状でもマリーを守りきる自信があったんですけど、アルヴィン様みたいな人が現れたらマリーを守りきれないので」

「それで古代魔法を覚えたいと、でもアルヴィンはかなり例外ですよ?」

「俺の父親と兄も例外みたいなものなので、あんなのが3人も居たら流石に危機感を覚えます」


ウィルが「それに、ヴィンス先生にも俺ちょっと勝てる気がしませんので」と言うとヴィンス先生は少し黙った。


「それは流石に買い被り過ぎですよ」

「いえ、間違いありません」

「⋯そうですか」


ヴィンス先生は暫く考えた後、ウィルの作ったブレスレットを見せて欲しいと言ったので、私とウィルはブレスレットを外し、先生に渡した。

先生が机の上に魔法陣を出し、その上にブレスレットを置くと、ブレスレットの上に幾つかの魔法陣が浮かび上がった。

先生はそれを見て「へぇ、自力でここまで作ったんですか」と呟いた。


「ちなみにマリアンヌさん、貴女これがどういうものか分かってて着けてるんですか?」

「はい、私の位置が分かるんですよね」

「そうですね、精度がまだまだですけど、これも古代魔法です、他には?」

「えっと、何か足されてるっていうのは知ってます」

「…ウィリアム君、同意無しは感心しませんよ」

「失敗してるのでまだ言う必要はないかと思いまして」

「まぁ確かに、今回は失敗してるので目を瞑りましょう」


私は気になったので「成功してたらどうなってたのですか?」とウィルに質問したら、気まずそうに「接触感知も付く予定だったんだ」と言った。


「接触感知…私が誰かに触ったり触られたら分かるって事ですか?」

「うん、そう…」

「そうですか、それなら構いませんよ」

「えっ!いいの?」

「何でウィルが驚くんですか」

「いや、流石に嫌がるかなって」

「私知られて困る事はないですし、それにウィルは私の行動を制限したりはしないのでしょう?」


私の問いにウィルは「うん」と言った後、小声で「今のところは」と言っていたけれど、小声の方は聞かなかった事にした。

するとヴィンス先生が「分かりました、ウィリアム君は放置しておくと逆に危ない気がするので教えましょう、今日のような空き時間になりますが構いませんか?」と言った。


「はい!ありがとうございます」

「とりあえず今日はこの失敗してるのを消して、位置情報の精度を上げてみますか?どの位出来るのかも知りたいので」

「分かりました、よろしくお願いします」


そうしてヴィンス先生はウィルに手順を教えると、私に「マリアンヌさんはどうしますか?」と聞いてきた。


「どうと言いますと?」

「先程の本を読んでも構いませんし、ウィリアム君の作業を見ててもいいですし、何か質問があればお答えもしますがどうしますか?」

「あ、では古代魔法って使いこなせるとどの位の事が出来るんですか?」

「アルヴィンの真似事みたいな事は出来ますよ、魔力量次第ですけど」

「それ危険じゃないですか?」

「だから前にも言ったんです、古代魔法が現代にあると危険だと」

「ではなぜウィルには教えてくれるのですか?」

「ウィリアム君このままだと自力で覚えそうなので、知らない所で何かされるより、ちゃんと教えて見ていた方がいいかなと思ったので」

「先生、ウィルをよろしくお願いします」

「はい、私がいる間は危ない事はさせませんので安心して下さい」


その後私は、ウィルが作業をしている隣で勧めてもらった本を読んでいたのだが、エレボスと魔王の関係性については一切載っていなかった。

ヴィンス先生の魔王についての発言の根拠がどこにあるのか少し不思議に思った私は、先生に直接聞いてみた。


「先生、どの本を読んでも魔王とエレボスの関係性が書かれてないのはなぜですか?」

「当時の精霊の寵愛者だったキース殿下が消してしまったんです」

「えっ、今の校舎を使っていた王子殿下ですか?」

「はい、その方です」

「なんでそんな事を…」

「もし、ですけど、エレボスと繋がって魔王になる可能性がある人間がいたら、マリアンヌさんはどうしますか?」

「魔王にさせなければいいのではないですか?」

「おや、アルヴィンと同じ事を言うのですね」


アルヴィン様と発想が同じと聞いて私が嫌な顔をすると、ヴィンス先生は笑って「マリアンヌさんも優しいという事です」と言った。


「優しい、ですか?」

「えぇ、普通はそんな危険人物始末しようとしますから、でも、そういう可能性がある事すら知られていなければ始末される事はない」


ヴィンス先生の言葉に「当時って魔王と戦争中ですよね、新たな魔王候補を王子が隠す理由ってなんですか?」と聞いたのは作業をしながら話を聞いていたウィルだ。


「とても大切な人だったらしいですよ」

「…なら仕方ないですね」

「仕方ないですか?」

「俺は大切な人が無事なら他の事は気にしない派なので」

「そうですか」


ヴィンス先生は普段面布でほとんど表情が分からないが、この時は嬉しそうに笑っている気がした。


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