41話 図書館での遭遇
思考誘導事件の翌日、今日は午後に受ける選択科目が無いので私は第2図書館で本を探していた。
この学園の図書館は第3まであって、校舎内にある第1図書館は入門書から中級レベルの様々な分野の本が置いてあり、私が今いるこの第2図書館は言語や歴史、経営や法律など座学メインの学部棟の側に建っている建物なので、研究資料や難しい専門書がメインで置いてある。
ちなみに第3は剣術や魔法、魔道具など、実技メインの学部棟の近くにあるので図鑑や魔法関連の技術書が多くなっているらしい。
暫く図書館の中をウロウロと探していたら目的の神話の本を見つけたので、それを取ろうとしたが、あと少しの所で届かない、諦めて台を探してこようかと思ったその時、背後から誰かがその本を取った。
振り向いて本を取った人物を見上げると、アルヴィン様だったので驚いた。
私が思わず大声で「アルヴィン様!?」と言うと「いくら他に人が居ないといっても声がでかいと思うぞ、ほら、これが取りたかったんだろ」と言って本を手渡してくれた。
「す、すみません、ありがとうございます、あの、アルヴィン様は何故ここに?」
「ん~、暇つぶし?」
「暇つぶし…でもこんな所に居て大丈夫なんですか?その、王家の影の方々とか」
「大丈夫、大丈夫、今の俺が見えるとしたら、マリアンヌとヴィンスとあの指輪を着けてるカインくらいだから」
相変わらず何でもありだなと思いつつ、もうアルヴィン様に関して心配するのはやめる事にした。
私が本を持って閲覧席に座ると、アルヴィン様も隣に座ってきたので「私に何か?」と聞くと「その本だけが目的じゃないんだろう」と言われてしまった。
この人どこまで知っているんだろうと思ったが、アルヴィン様相手に隠すだけ無駄だと判断して、収納魔法からゲーム情報をまとめてあるノートを出した。
「私の前世の情報と現実ではやはり違う所が出てきたので、1度まとめ直そうと思っていたのです」
「それは興味深いな、俺にも教えてくれないか」
「元々そのつもりだったのではないですか?」
私の問いにアルヴィン様は「どうかな」と笑うだけだったので、私は「まぁいいですけど、ちなみにアルヴィン様って異世界言語である日本語も読めたりするんですか?」と別の質問をしてみた。
するとアルヴィン様は私のノートを少し見て「初めて見る文字だが書いてある内容は分かるぞ」と言った。
「流石ですね、では書きながら説明します、まず私とアリスでは前世の記憶に差があります、おそらくですがエレナ様ともあると思います」
「こちらでの転生や召喚はあちらの時間と関係ないからな、昔の転生者の方がマリアンヌより未来を生きていた、なんて事はよくある」
「そうなんですね」
「それで、マリアンヌはこの世界のどの辺りまでを前世で見たんだ?」
「私が知っているのは1章から4章までです、5章を見る前に事故にあったので」
私が前世の死因を語ると、何故かアルヴィン様に「そうか」と言って頭を撫でられてしまった。
「アルヴィン様、私一応前世では成人済みでしたので大丈夫ですよ」
「へぇ、いくつだったんだ?」
「女性に歳を尋ねるのは如何なものかと思いますが」
「別にいいじゃないか、前世の話だろ」
「…はぁ、24です」
「結婚は?」
「してませんよ、おかげで転生者となった今、前世にあまり未練がないので良かったと思いますけど」
アルヴィン様は「それもそうだな」と言うと「話を逸らして悪かった、それじゃあ今が、マリアンヌの知ってる話のどの辺りなのかを教えてくれ」と話の続きを促した。
「今は2章の序盤ですね、この2章に出てくるのは、1章の登場人物であるアルベール殿下、思考誘導の被害者のサイモン様、魔法学のエリック先生の息子であるマーク・シモンズ様とウォード公爵令息のネイサン様の4人に、カイン様、セス様、言語学のルーク先生と、私の友人リリの婚約者であるディーンの4人を足した計8人、それと物語のヒロインであるクリスですわ」
「マリアンヌは出ないのか?」
「出ますけど少々複雑でして、私本来ならクリスが好きになる相手の婚約者として登場した挙句、クリスの邪魔をして15歳で断罪されるはずなんです」
「今と全然違うじゃないか」
「そうなんです」
私はアルヴィン様に、私がヒロインの黄昏の裏側編について説明し、私はおそらくそちらに沿うように行動している事を伝えた。
「マリアンヌの方はウィリアム以外の選択肢はないのか?」
「私は知らないのでアリスから聞いた話ですけど、どうも3章開始のデビュタントで何か起きるらしい、という事くらいしか知りませんわ」
「デビュタントねぇ、という事は3章はマリアンヌが15歳という事か、誰が出るんだ?」
「本来ならここで私と入れ替わるようにエレナ様が新ヒロインとして登場し、先程言った8人にアルヴィン様とクリスのお兄様のバージル様、ティルステア聖国から新たに留学してくる第4聖人のノア様、それと…」
「ん?どうした?」
「あの、アルヴィン様、精霊王のエア様って実在するんですか?」
「え、あぁうん居るけど、何?あいつも出てくるの?」
「はい、エア様を含めた4人が追加されます」
「それはまた凄いね、エアなんて神の代行者だよ、何だって人前に…あ、まさか俺か?」
「お察しの通り、エア様と会うにはアルヴィン様と会うのが条件です」
アルヴィン様は「なるほどねぇ、一応筋は通ってるわけか」と言うと少し考え込み「ちなみに4章は誰が出るんだ?」と聞いてきた。
「えっと、4章は魔王の封印が解けて、ティルステア聖国の聖地のお城が魔王城になる所から始まりまして」
「マリアンヌちょっと待て、魔王?」
「はい、魔王です」
「名前は?」
「ヴィンセント様ですけど、それが何か?」
「いや、何でもない、続けてくれ」
「分かりました、色々あって魔王と交渉の場が設けられる事になるんですけど、そこに海の向こうの大陸の皇帝も混ざってくるので、追加されるのは魔王ヴィンセント様と竜のヴェルネル様、グランディア帝国皇帝レオナルド陛下とその従者フェリクス様、後は暗殺者のクロードの5人ですね」
「登場人物がいきなり物騒だな」
「内容もそこそこ物騒ですよ」
「ちなみにそれが起こるのはいつだ?」
「クリスが卒業間近の設定だったのでおそらく18歳の時かと日付までは流石に分かりませんわ」
「7年後か、分かったありがとう」
私が「他に聞きたい事はありますか?」と聞くと、アルヴィン様は「そうだな、マリアンヌは前世と今で何が違うと感じているのか知りたい」と言われたので、少し考えてから話した。
「そうですね、まずはカイン様とアルベール殿下にアリスとキャシーという婚約者がいる事、そして私がウィルの婚約者である事、次にウィルがアルベール殿下からカイン様の側近に変わった事と、エレナ様が既に聖女として学園に居る事、あとはアルヴィン様のお人柄とかでしょうか」
「俺はそんなに違うのか?」
「そうですね、他の方はそうでもないんですけれど、アルヴィン様はもう別人な気がします」
「じゃあ別人なんじゃないか?」
「はい?」
「前世の記憶の俺と今の俺が別人だと思うんだろう」
「そうですね」
「祝福持ちの勘は?」
「…ほぼ当たる、え!?じゃあまさか」
「それは多分俺じゃない」
情報をまとめるつもりが、新事実が出てきてしまった。




