34話 リリアンの事情
午後の授業時間を全て料理セミナーに費やした私達は、ファビオ先生に予定表を貰うと次に作りたいものを聞かれ、私は和食を教えて欲しいと言ったのだが、知らない料理に興味を持ったリリとクリスも一緒にすると言い出した。
「いいわよぉ、じゃあ貴女達はセットで教えてあげるわね、メニューは私が決めてもいいかしら?」
「はい、お願いします」
「じゃあ用意しておくから、また次回この時間にいらっしゃい」
そうして私達は調理実習室を後にしようとしたのだが、言い忘れていた事を思い出した私はセス様に話しかけた。
「セス様すみません」
「はい、何でしょう?」
「私これからリリの話を聞く約束をしたので、今日の生徒会に参加出来ないのですが大丈夫でしょうか?」
「あぁ、昨日説明し忘れてましたね、今の生徒会の仕事は自由参加なので大丈夫ですよ、必要な時は事前にお知らせしますし、でも今日はウィルさんが勘違いして貴女を探さないよう、伝えておきますね」
「すみません、お手数おかけします」
「いえ、お気になさらないで下さい」
セス様と話した後、私とリリとクリスの3人は放課後の食堂で話をする事にした。
放課後の食堂はお茶を楽しみながら会話をしているご令嬢や、仲のいい婚約者同士が寮に帰るまでの時間を過ごしたりしている為、それなりに人がいて騒がしく、話を聞かれにくいと思ったからだ。
それでも私は念の為、2人に黙って防音魔法を使ってみた、本当に願うだけで出来てしまったので精霊さんの仕事の早さには驚きと感謝しかない。
席に着くとリリは「2人に聞いて欲しい事なんだけど」と話し始めた。
「そうね、まずは私の家庭事情から話そうかしら、私の家今ちょっと複雑でね、貴女達が今日見た私の婚約者とは8歳の時に婚約したのだけれど、その翌年母が亡くなって、それから3か月程経った頃、父がいきなり継母と私の1つ下になる異母妹を家に連れてきたの」
「…思った以上に凄い話ね」
「そうかしら、貴族社会ならたまにある事でしょ、あ、クリス大丈夫?」
「だ、大丈夫よ!」
「なら続けるわね、私の母は父の不貞を知ってたみたいで、私が6歳になる頃から認識阻害魔法を使えるよう教えだしたの、1年程かけて使えるようになったら、父と婚約者の前では絶対魔法を使うよう言いつけられたわ」
「リリちゃん認識阻害魔法って何?」
「そうね、そこに居るのに目立たなくなる魔法かしら、ちなみにマリーとクリスは除外してるから私が普通に見えてるはずよ」
「あれ?それだとリリちゃんってもしかして凄い魔法が使える凄い人?でも魔法の授業の時目立ってたのはマリーちゃんとパトリック様だったよね」
「あぁ、それね、実は出来ないフリしてたらエリック先生に「目立ちたくないなら出来るくせに出来ないフリは止めろ」って叱られちゃった」
そしてリリは魔法学の授業で出来ないフリをしない代わりに、放置してもらう事になったらしい、しかも私とパトリック様が授業免除された暁には、こっそりリリも免除してくれるそうだ。
「話がそれちゃったわね、まぁそんな訳で私の家族と婚約者は、私を地味で居るか居ないか分からない女と認識しているの、で、ここからが大事なんだけど、私ディーン様に婚約破棄されようと思ってるの」
「ん?婚約破棄するんじゃなくてされるの?」
「そうよマリー、我が家は彼に婿養子に来て欲しいんですもの、私が何を言っても父が許さないわ、だから彼から言い出してもらわなくては駄目なのよ」
「でもそれってディーンがリリ以外と婚約したいと思わないと無理じゃない?」
「そこで私の代わりに異母妹に頑張ってもらおうと思うのよ」
リリが言うには、ジュリアという名のリリの異母妹はリリを目の敵にしているらしく、何かと絡むし、リリの持ち物は何でも欲しがり、酷いと勝手に部屋に入り取っていくらしい、父親も異母妹の方が可愛いらしく特に何も言わず、継母もそれが当たり前のように見ているらしい。
「実は彼女ディーン様がタイプみたいでね、以前父にディーン様の婚約者を自分に変えて欲しいと強請っているのを聞いた事があるの、ただその時はディーン様はもう学園に通われてたし、こっちの都合で相手を変えるわけにもいかないから流れたんだけど、父も満更でもない感じだったから、ディーン様から言い出せば通ると思うのよね」
「なるほどね、それで?私達に何か手伝える事はあるの?」
「出来ればジュリアが入学してくる来年までに、ディーン様の女遊びをやめさせたいのだけれど、何か良い案ないかしら」
「え~、リリちゃん流石にそれは難しくない?」
「私も自分で言っておきながらそう思ってるわ、でもジュリアは浮気を容認出来るような子じゃないから、何とかしたいのよね」
「ねぇリリ、その件ちょっとカイン様達に話してみても良いかしら?」
貴族間の婚約者問題なら、後々何かあるかもしれないし、今のうちにカイン様に相談しておけば上手く収めてくれる気がした私は、リリにその事を伝えると、リリは「自分で話すわ、だから時間を頂ける様お願いしてくれるかしら」と言った。
私が了承した事でリリの話はとりあえず終わり、話題はクリスの事に移った。
「それじゃあ私の問題はカイン殿下の返答待ちね、そういえばクリスは明日からどうするの」
「どうするのって何を?」
「もう、サイモン様の事よ!今日は居なかったから私達一緒に話したり出来たけど、明日登校してきちゃったら昨日に逆戻りなのよ」
「うん…そうだよね、私サイモンにちゃんと言うわ、そうじゃないと選択科目も決めれないし」
「まだ決めてなかったの!?」
「ち、違うのマリーちゃん、本当は言語学を受けたいんだけど、サイモンが同じものを受講しようってうるさくて」
クリスの発言に「それならサイモン様が居ない今日のうちに受講申請しちゃいましょう!言語学のルーク先生ならまだ学部棟に居るはずよ!」とリリが言って、そのままクリスを学部棟の方へ連れて行ってしまった。
去り際に2人共「また明日ね」と言っていたので私は1人残される形になったのだが、2人と入れ違いにウィルがやってきた。
「ウィル、どうしたの?」
「生徒会が早めに終わったから迎えに来たんだけど、まだ話してるみたいだったから、話が終わるまで待ってたんだ」
「声をかけて下さっても良かったのに」
「女性の話を邪魔しちゃ悪いでしょ」
ウィルは「少し向こうで話さない?」と言うと私を連れて人の少ない方の席へ移動した。




