33話 料理セミナー
私とリリとクリスが調理実習室に到着すると、そこには数人の生徒が居たのだが、その中に知り合いを見つけたので声をかけてみた。
「セス様?」
「え?あぁマリアンヌ様奇遇ですね、そちらのお二方は初めましてですね、カイン殿下の執事をしておりますトレヴァーノ子爵家のセスです、お見知り置きを」
セス様はリリとクリスと挨拶を交わすと「マリアンヌ様の用事とはこちらの事だったんですね、そういえばウィルさんとは会いましたか?」と言われたので、先程の出来事を話した。
「それはまた救いようのない屑ですね」
「昔はもう少しまともな方でしたのよ、ただ顔は良いし、そこそこ何でも出来てしまう人だから、そこに我が家の後ろ盾までついてしまって、あんな感じに」
「それでもねぇ~、料理を馬鹿にするのはいただけないわぁ」
「「「え?」」」
気が付いたら私達の会話に、オネェ言葉のガタイの良い男性が混ざっていたのだが、その男性を見てセス様が「あ、先生いらしてたんですね」と言ったので、どうやらこの方が料理セミナーの特別講師らしいというのが分かった。
「んもぅセスちゃんったら、いつも1人のくせに今日は可愛い娘3人も連れてどうしたの?」
「先生、その言い方はいらぬ誤解を受けるのでやめて下さい」
「冗談よぉ、それで貴女達3人は受講希望者?」
その問いに私達は、自己紹介と共に受講したい旨を伝えると「やる気のある子は大歓迎よぉ~」と即了承してくれた。
その時料理経験も聞かれたので、私は未経験、リリとクリスはある程度は出来ると答えていた。
「今日は特に希望の無い人は簡単なお菓子を作る予定だから、貴女達はそれを作るといいわよぉ」
「希望すれば違うものを作っても良いのですか?」
「リリアンちゃんはある程度作れるから気になるわよねぇ、勿論いいわよぉ~、もし珍しい食材を使いたければ私が次までに用意してあげるし、作り方が不安なら教えてもあげられるわ、一応この辺りの国の料理なら何でも作れるから安心して聞いてちょうだい」
「ちなみにお米とかってあるんでしょうか?」
「え、やだマリアンヌちゃんったら、お米なんてよく知ってるわね」
「あるんですか!?」
「勿論あるわよぉ、でもよくあんな島国の食材知ってたわねぇ」
つい和食恋しさに駄目元で聞いてしまったので、何て言い訳しようか考えていると、セス様が「先生、彼女はウィルさんの婚約者ですから」と言い出した、え?何でそこでウィルなの?
「やだぁ、私の甥っ子の婚約者だったのぉ?ごめんなさいね、それなら知ってても納得だわぁ」
「あの、ウィルは先生の甥になるんですか?」
「あら、私自己紹介忘れてたかしら、私はファビオ・コーディル、バーナード兄さんの弟よ」
衝撃の事実を聞いたところで、開始のベルが鳴ってしまった為それ以上は聞けず、ファビオ先生には「今日貴女達が作るのはカップケーキよぉ、材料を量ってふるって混ぜて焼くだけ、簡単でしょう」と言われ、3人で作る事となった、マリアンヌ人生初の料理開始である。
しかし、こちらでは確かに人生初なのだが、私には前世がある為、レシピがあればそれなりに作れる程度の技量はある、おまけに調理器具が、どう見ても転生者が開発に関与しているとしか思えない程、見覚えのある物ばかりだったので、カップケーキくらいなら何の問題もなかった。
後はカップに入れた生地を焼くだけとなったので、私は先程から目の前で手際よくサンドイッチを作っているセス様に声をかけた。
「セス様は元々料理がお好きなのですか?」
「今は好きですけど、最初は仕方なくですよ」
「何か切っ掛けがあったんですか?」
「カイン様が全然食べないんです」
「はい?」
「あの人目を離すとずっと仕事してますし、しかもお城では「何が入ってるか分からないでしょ」とか言って必要最低限しか食べないので、まぁ実際よく入ってますので食べろとも言えず、見かねたアリス様と私で食事の改善をしてるんです、私達の作ったものなら完食して下さいますので、そんな訳で先生の授業のある日は軽食や夜食を作ってるんですよ」
今サラッと話していたけど、カイン様お城の食事にちょいちょい毒物混入されてるの?アルヴィン様もそうだけど、いったい誰から命狙われてるの?怖いんですけど。
話し終わったセス様は、出来上がったサンドイッチを収納魔法でしまうと、また別の料理に取り掛かり始めた、この人何品作るつもりなんだろうと思っていると、クリスに話しかけられた。
「ねぇ、マリーちゃんはトッピングどうする?」
「あ、えぇ、そうね、私はウィルにもあげたいから、今回は無しにしておくわ」
「そういえば今日助けてくれた人ってマリーちゃんの婚約者だよね、実は私入学式の時も2人を見かけて、物語のお姫様みたいだなぁって思ったから、マリーちゃんと仲良くなりたかったの」
「えぇっ!?えっと、それは、ありがとう?で、いいのかしら?」
予想外の告白に私が混乱していると、リリも笑いながら「確かに、私の婚約者はあんなだからクリスの憧れる気持ち分かるわ」と混ざってきた。
しかもクリスは、入学式の時にウィルが私にキスした所と、私を見間違えるわけない発言をバッチリ見聞きしていたらしく、私は恥ずかしくて居た堪れなくなってしまった。
「あらまぁ、マリー貴女愛されてるのね」
「うぅ、そうね、否定はしないわ」
「私もマリーちゃんみたいに素敵な王子様と出会いたいなぁ」
クリスのその発言に私は、ヒロインが何言ってんのかしらと思いつつ、これ以上弄られるのは困るので無理やり話を変える事にした。
「それで、2人は出来たカップケーキ誰かに渡すの?」
「私はお兄様にあげるよ」
「あら、サイモン様にはあげないのね」
「今のサイモンにはあげたくないかな、入学してから邪魔ばっかりしてくるし」
「ねぇクリス、サイモン様と婚約者とかになるつもりがないなら、嫌な事は嫌と伝えて距離を取った方がいいと思うわよ」
「リリちゃん」
「私から見ると、サイモン様って凄くクリスが好きみたいだし、このままだと貴女、素敵な方と出会う前に、サイモン様に縛られて誰とも出会えなくなると思うわ」
「私もリリの意見には同意するわ、同性の私にすらあんなに威嚇するんですもの、異性とか近寄ったらどうするつもりかしら」
「マリーちゃんまで、やっぱりそうなんだ」
クリスは「ちょっと考えてみるね」と言った後、自分用のカップケーキにクリームやフルーツを盛り始めた。
「リリは誰かに渡すの?」
「そうね、パトリック様にでも渡そうかしら」
「まぁ、パトリック様と何かあったの?」
「何もないわよ、でも公爵家の方が手作りのお菓子なんて受け取ってくれるかが問題ね」
「パトリック様なら大丈夫じゃない?」
「それもそうね」
そんな話をしていたらあっという間に時間が過ぎていった。




